ー2限目ー
「おはよう
「あっ、おはよう
「おはよう」そんな言葉から始まる朝。
いつものように靴箱で靴を履き替えて
教室へ向かう。
途中、職員室があるから私は廊下を歩きながら
少し視線をずらして座っている先生を眺める。
いつも先生はこの時間、座ってパソコンと睨めっこしている
そんな先生の名前は「花京院 莉沙」
かきょういん…すんごい苗字。
だけど名前の通り華があってすらっとした
美人さん
私はいつもこの人に視線を奪われる
別に同性が好きとかではないのだが…
「あっ穂乃果!おはよう!
「あ、蓮だ!おはようっ!
穂乃果、それは私の名前
蓮は私の彼氏。中高一貫校だから中1から3年間
ずっと付き合っている。
「最近冷え込んできたね〜
「ねーっ さむいさむいぃっ
「カイロいる?
「えっ!あるの!?いるっ!
そう言って差し出されたカイロを握って暖まる
「手、冷たいね
「でしょーっ
「いやいや!wそこ威張れないってww
「えへへぇ
はたから見たら順風満帆ですごく
幸せそうなカップルだよね
「あっ…
そこにちょうど立ち上がった先生が前を通る
「あ、おはよーっ
と先生は微笑んで言った
「「おはようございまーすっ
2人揃って挨拶を交わす
「そうだ穂乃果ちゃん、
今日の部活忘れないでねー
「あぁ、頑張りますw
「え?どうしたの?w
横で困り顔の蓮と目が合う
「え、ねーね聞いて!w
穂乃果ちゃんさぁ先週部活あるの忘れて図書館で勉強してたのよw
「えぇーっ!?w ドジにも程があるって!w
「もーっ!先生何で言っちゃうのぉーっ!
「んふ、可愛かったからねぇ〜
理由になってない…笑
「ごめんねぇー
あさイチから超絶可愛い顔で言ってくる
全然許しますとも!!!むしろ広めてくだされ!
「むっ…いいですけどぉ
「あぁ、いいのね笑
まぁまぁ、早く教室行きなされぇー
朝テスト楽しみにしてるよw
「うわ!やばいやってない僕!!!
「蓮こそドジでは…?
「うわぁぁっブーメラン飛ばしたぁぁっ!
「ふふ、まぁ頑張るがよいっ!
そんな可愛い声をしながら武将みたいな口調を
言うとはまた反則なことをする
しかもこれがまた可愛すぎる。
ほっそい腕を腰に当ててちょっと得意げにする
美人はこれ程尊いのか…
先生の授業がない日は長くて、他の授業中は
考え事をしたり絵を描いて気を紛らわす。
今日は数学で当たって大変だったなー
なんて事を考えながら忘れずに部活に行く。
からからっ…
茶道部の部屋を開けるともう花京院先生と茶道の先生が居た。
「おぉーっちゃんと来たね!
「どこで褒めてるんですかっ!
「だって、ね?先週の事が物語ってるよね笑
「むむ、何も言えない…
「ふぁ〜っ
稽古おわったぁーっ
「穂乃果ちゃんお疲れ様っ、隣座る?
もちろん座らせていただきますとも
「行きますっ!
小走りで先生の隣に座る
先生はいつも畳じゃないところで机や椅子が置かれているスペースに座って部活を見ている。
「…で?どう?調子。
「調子はどう?」
先生のその一言で雰囲気が一気に変わる。
「…今日は悪めですね、笑
私の「調子」すなわち今日の気分。鬱の具合だ
私がまだ中3の時、夏にずっと長袖を着ていて
心配した先生が面談を取り付けてくれた。
最初は黙り通してたけど先生の綺麗な瞳が
真っ直ぐ私を見て観念して話した。
中1の終わり頃に私が崩壊したこと、
中2の6月から腕を切っていること、
私の全てを話した。
先生はずっと泣きそうな顔で寄り添ってくれた。
そして1つだけ約束をした。
もう腕を切らない って
もう自分を傷付けないって…
「何があっても私は穂乃果ちゃんの味方だからね
そう言って手を握ってくれた
あの場面が顔を見るたびに頭の中で再生される
そう、私はずっと猫を被っていたんだ
ずっとずっと、取れない仮面を付けていたんだ
先生はその仮面を叩き割って助けてくれたんだ
ずっと皆んなに背を向けていた私を真っ直ぐ、
曇りない眼で見てくれたんだ
それで?私は?
そう、私は とうとう惚れてしまったんだ
ずっと出会った頃から好いていた、だけどそれは今とはまた違う感情。
推しに近い感情。
発展させてはいけなかったんだ、本当は
踏み込むべきではなかったんだ
でも、私はただ先生の横に居たいと純粋に
そう思ってしまうんだ。
無情な世界だ
このタイトルなどない世界に神様はいますか?
誰かこのどうしようもない私を救ってくれますか
私のこの感情をいっそのこと、吹き飛ばして
叶わない夢を見させないで
どうせ叶わないならいっそ、私をどこか遠くに。
コメント
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え、おもしろ……すきすぎなんやけど