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tk「あ、ちょッッ……あ”ぁもうッッ…」
たくが、出て行った山田を追いかけて行った。
教室には,俺が突っ立っていて、その前には拳を握りしめているこむぎ。
なにか、あったんやろか。
二人とは、関西勢として、距離が近かった。
だから、二人の会話はよく聞こえていたし、喧嘩する日なんて、到底なかった。
…一体、何が起きたんだろう。
ki「…こむ?何したん?」
km「……うっさいわ、お前に関係あらへんやろ」
ki「関係ない…言われてもなぁ ~…」
目の前のこむは、本気で膨れていて、何も言う気はないようだった。
これじゃあ理由がわからん…。
たくが一応山田追いかけってったけど…、あの二人、大丈夫やろか…??
ki「………お前らが喧嘩するなんて珍しいな」
km「…悪いんは俺かもしれんけど。
…山田も山田、深く追及するのが悪いんよッッ…」
ki「いや、あの ~…原因を教えていただきたいんですけど…」
km「…俺の家のことを、深く追及したから」
ki「え…?」
km「俺の家、…その、あんま良くないねん。
だから…山田にちょっと言われただけで、カッと来ちゃったんよ。
…なんか、胸がモヤモヤすんねん」
ki「モヤモヤ?」
km「…おん、なんでかわからんけど…」
ki「……こむ、モヤモヤしたら、なんでモヤモヤしたんか、ちゃんと考えへんと。
どうモヤモヤするんか言葉っていう形にするんよ。
そうやないと、こむがなにに不満なんか何を取り除けばええんか…わからんやろ?
これは…俺の意見やけど」
km「……」
ki「モヤモヤしたままでおったら、きっとどこかでガタが来る。
こむのモヤモヤに山田が関係するんやったら、ちゃんと言って欲しい。
……その、この空気、慣れてへんから」
km「……なんか、巻き込んでもうてごめんな」
こむが気まずそうにいう。
俺も、この空気はすごく苦痛なんだ。
あんなに楽しくて、みんな、笑っていて…
幸せな空間なのに。
いつか、それを壊す時がある。
例えば…今みたいな状況とかな。
そういう世界に、俺たちはおる。
そういう世界におるから、色々と忙しいねん。
仲間だとしても、友達だとしても、その関係が崩れてしまうことなんて簡単なことだから。
やから、自分が何考えて行動すればええんか、
相手のことを考えて行動すればええんか、困ってまう時だってある。
ちょっと頭に来ただけで、相手のことを考えられなくなって、
自然に心を傷つけてしまう時だってある。
それが、人間っちゅうもんやから。
km「え…?」
ki「こむは慰め上手やし、元気やし、脳筋やし…w
そういうピュアさにみんな救われとるんやで。
俺自身、自分で何をすれば良いのか戸惑ってた時だってあった。
相当不安で、悲しくて、辛かった。
…でも,仲間がいればもう大丈夫ッッ!
自分が何もできんくて不安な時やって、そんなん仲間が居れば簡単やんw
たとえ、こむがなにがあったとしても、みんなついとるんやから…
km「……おん、そやな」
ki「…大丈夫大丈夫 。ほら、山田が好きな料理でも作ってプレゼントしよ、な?」
km「…おん」
俺らは二人で、家庭科室へ向かった。
○○
tk「はぁッッ…は、あッ…山、田ッッ…まて、よッッ!!」
ym「ッッッッ………くっそ、なんで追いかけてくんねんッッ ~!」
tk「はぁッッ……!?
お、前がッッ…逃げる、から、だろッッ…!!」
足が痛い。息が上がる。
山田が運動神経いいから、普段運動しない俺とは差がつけられてしまう。
山田には、体力だってある。
俺は、運動面ではあいつに勝てるなんて思ったことはない。
勉強だったら、多分勝てると思うけど…。
いや、そんなこと今ではどうでも良い。
ようやく追いつき、山田の腕を取る。
山田の動きがピタッと止まった。
ym「ッッなんやねんゴミドリ!!お前には関係ないやんか!!」
tk「いや、関係ないとかそういう話じゃないだろッ…しょうがないだろ…」
ym「ッッッ………」
tk「はぁ……
なんでこんなことがあったか取り敢えず聞くから、全部ちゃんと答えろよ」
ym「…お前の質問に答える義務がどこにあるん」
tk「お前なぁ……
こっちだって必死にやってんだよ、俺だって走りたくなかったし」
なにを言っても言い返してくる山田に少し腹が立つ。
まぁこいつは元々聞いてくれるとは思ってなかったし………。
tk「…あと、少しでもルールとか破ったりするとめんどくさいし。
はるてぃーがうるさそう。」
ym「…ルール…?」
tk「ほら、あれ。前はるてぃーが『ゲーム実況部三つのルール!』
…とか言って、なんか作ってたじゃん。」
ym「…あぁ…あれか」
前,はるてぃーが謎に作っていたゲーム実況部三つのルール。
一つ目は、他の部活に迷惑をかけないこと。
やるとしても、部活のメンバーだけ、ってはるてぃーが決めてた。
…まぁ、それも良くないんだろうけどね。
二つ目は、全身全霊でたまアリを目指してゲーム実況すること。
これはたまアリ目指してるんだし、まあ当たり前だよねっていうルール。
前のゆーまの件があってから作られた、三つ目の約束事。
だから、俺と山田も下手に喧嘩できない、ちょっと厄介なルール。
つまり今は、ルールを破るほどの大喧嘩だっていうこと。
二人は仲がいいから、余計大喧嘩に見えてしまうんだろう。
ym「そもそも、ルールってなんのためにあるん」
tk「…みんなが正しい、って思うものや状態に近づけるためにルールは生まれたり変更されたりする、
って俺は考えてる。
色々な選択には、色んな考えが理由があるってこと。」
ym「…むずいわ。
服装とか習慣とかなんでも、そのルールを守りたいって人と、違う意見の人がおるわけやん」
tk「多様性ってそういうこと。
違う意見を持った人たちが、お互いの価値観を否定しないで共存するんだよ」
ym「…………!」
tk「お前がよく言うみんなって言葉は、パッとみれば単純なものに思えるけど、
よく見たら一人一人考えを持つ人間の集合体ってことだ。」
ym「…………好きなように生きるって、簡単やないんやな」
tk「…まあ、そうだな。
自分がどうやって生きたい、とかこういう人生をたのしみたい、って思う人もいるけど
それは簡単じゃない。」
ym「…何悟ってんねん気持ち悪いわ」
tk「はぁッッ!?お前が聞くから答えたんだろッッ…って…」
ym「ぅ………」
tk「え、なんでお前泣いてんの…??」
目の前の山田は、涙を流していた。
いや、俺が変なこと言ったわけじゃないと思うんだけど…。
とりあえず、周りに人がいなくて良かった。
人がいないので、近くにあった2-E教室に入った。
がらんとしていて、誰もいなかったので本当は嫌だけど山田を席に座らせ、ハンカチを渡した。
ym「ッいらんわ、そんなもん…」
tk「…なんでだよ、こっちは善で渡してるんだろ。
本当は渡したくもないけどな」
ym「……お前なんかに寄り添われなくても、こっちはどうにかできんねん」
tk「はぁ…大喧嘩になってたって言うのにか?」
ym「ッッ……山田、ただ自分が気になったことを聞いただけやねん」
tk「…?」
ym「ただ、ちょっと気になったから、
…こむぎが嫌がるとか思わんかってん。」
tk「い、やいやいや……こっちは状況すら分からないんだからさ…」
ym「…昔の、事で色々あってん」
tk「……ふ ~ん…」
山田が、唇を尖らせて俺に向かって言う。
昔のことって言っても、色々あるんだから何が何だかわからない。
tk「…とりあえずさ、お前。自分が悪いって思ってんの?」
ym「…まぁ、せやな、」
tk「だったら、謝りに行けばいいじゃん」
ym「…山田が謝るとか、此処に存在するとでも思うか?」
tk「謝らなかったら、ただ俺らの関係が崩壊するだけ。
いいの?ずっとの親友でしょ、相棒なんでしょ。
早く解決してほしいし、こっち的にもな」
ym「…謝り方が、分からへん」
tk「はぁ…??」
tk「は……?!」
ym「…少し家のことを話したら、「お前はええな」って「認められて、才能があってええな」って、
こむぎが言い始めて…。
ほんで、山田がちょっと放心状態やって…
それで、つい言うてもうてん。」
tk「…」
tk「…え?それだけ…??」
ym「…おん。だから、何でこれで怒らせてもうたんか分からん。
山田、無意識に口から出てて、この言葉が悪い言葉なんか、瞬時に理解できへんかった」
tk「………」
何が何だかわからない。
とりあえず、こむぎにとっては嬉しくない言葉を山田が言ってしまった、と言うこと…。
でも、才能があっていいな、認められていいな、ってどう言うことだ?
こむぎは、少なくともあまり悩む方ではない気がする。
前はるてぃーに「嫌なことがあったら必ず相談するように」って言ってから、
みんな相談しているはずだから…
あまり抱え込むことは無いはずなんだけど。
…でも,そうだよな。
前の、ゆーまやきゅーのように。
仲間だったら話してほしい。みんなそう思っているはず。
だけど、簡単には自分の心を開かせないんだ。
俺はスマホを開いた。
そっから、はるてぃーのLINEを開く。
俺は、『こむぎと山田大喧嘩してるんだけど、どうすればいい?』
そう送った。
返信はすぐに帰ってきた。
『え?まじで?あの二人が喧嘩することあるの?』
『うん、今絶賛喧嘩中。結構やばいかも』
『まじで ~??ドッキリとかじゃ無いよな…??』
『ドッキリじゃ無い。今目の前に山田がいて、多分けいのところにこむぎがいる。』
『え、ガチ喧嘩じゃん……』
『最初っからそう言ってるだろ。…んで、どうしたらいいと思う?』
『う ~ん……まずはちゃんと話し合うことが大事だと思うけど。
自分の気持ちをちゃんとつたえて、仲直りするやり方が一番正しいな。』
.……話し合う、かぁ…。
とは言いつつも、あの二人は口を聞けないぐらいの喧嘩をしているから…、
普通に無理な気がしてならないんだけど。
『口が聞けない状態だったら?』
『えッッ、口も聞けないぐらい喧嘩してんの!?』
『…まぁ、そんな感じ』
『えぇ ~……うたに聞いてみるわ』
『おっけ』
『なんかプレゼントしたら?だってさ』
『あ ~、プレゼント……。それだったら結構いいかもしれない』
『だろ?』
『いや、うたから聞いたんだからお前じゃ無いだろ…』
『そ ~だけどさぁ ~。まぁいいや、多分明日には来れるから。
今日のうちに仲直りしとけよ。
てことで、俺はうたの看病に戻りま ~す』
『うん、あんがと。』
プレゼント…か。
tk「山田、こむぎになんかプレゼントして、謝ってみたら?」
ym「え……」
tk「なんで怒らせたのか分かんないんだろ?
だったらプレゼントでもして、話せる状況にしてちゃんと一回話し合ってみたら?」
ym「………ゴミドリの意見は聞きたく無いけど、そうできたらそうするわ……」
tk「…ほんっと一言余計だよなお前…」
…こんな状況が続くのも嫌だし、早く仲直りして欲しい…
なんてな。
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神様ぁぁぁ