山賊たちの死体の後片付けも一通り済み、ひと段落した。
村人たちからは皆疲れた様子が伺える。
村長からこの村に滞在する許可はとってある為、オレはルイーズさんの家にお邪魔することにした。
「ルイーズさんすみません。お邪魔して―――」
オレがそう云うと、
「ははは。いや気にしないでくれ―――」
「村人を救ってくれたお礼もしたいし。」
ルイーズさんはとてもいい人だ。
世界の人が皆こんな人ならいいのにと思った。
そして、オレたちはルイーズさんの家に向かおうとしたその時、地鳴りのような音が辺りに響いた。
「なんだこの音は、大地が震えている。」
「ススム…これはまさか地龍が目覚めたのかもしれない。」
ルイーズさんは真剣な表情でオレに言ってくる。
「地龍―――?」
進はルイーズに聞き返す。
ここ数日、魔物という存在を見てきたが、流石に龍は初めてだった為、聞いてみた。
「そう―――」
「この周辺に生息している魔物の一種で、固い外皮に覆われて周囲の物喰らい尽くす。」
「体格もデカいから、かなり危険な存在なんだ。」
ルイーズさんはそう説明してくれた。
まだこの世界に来て間もないからあまりピンと来ていないが、生物であることには間違いないようだ。
であれば、どうにかなるだろう―――
「山賊の次は地龍ですか・・・なんでこんな立て続けに―――」
「地龍は基本的にいつも眠っているのだが、何年か周期で腹を空かせて来ることがある。」
「だが、その空腹の周期はまだのハズ…」
「外敵に襲われそうになったときや殺気を感じた時なんかは起きるのだが、地龍相手にそんな殺気を向けたりする奴はこの森に はいないぞ。」
とルイーズさんは言った。
その話が本当の場合、オレの方で少し思い当たる節があった。
「もしかして、オレが山賊たちの気を村人から反らすために使った挑発のスキルが森の奥の地龍にも有効だったということはありませんか?」
「なるほど。地龍の外敵察知能力はかなり高い。その可能性は十分にあると思うよ。」
「いずれにせよ村人たちに危険な目に遭わせるわけにはいきませんので、ルイーズさんには村人の避難をお願いできますか?」
「ススムはどうするつもりだ?まさか地龍と戦おうなんて思ってないよな?」
「もちろん地龍と戦おうと思っていますが―――」
「いけませんか?」
進はキョトンとした顔で答えた。
そんな大事だとは微塵も思ってない。
というよりも魔物であるならば、自分が駆除できないとは思っていない。
相当の自信家―――
それが天童 進という男。
「地龍は山賊なんかとはわけが違うぞ。」
「戦えば生きて戻れるかわからない。」
ルイーズは必死に止める。
「でも元はと言えば、地龍を引き寄せたのはオレのスキルが原因なかもしれないわけですし、オレが戦うのが筋かと思います―――」
進は人一倍責任感が強い。
自分が原因だと分かれば、その尻ぬぐいは自分の手でと決めている。
「だったら、オレにも手伝わせてくれ。」
ルイーズはそう提案する。
村の恩人をそう易々と見捨てる訳にはいかないからだ。
「ルイーズさん…ありがとうございます。」
「では、一緒に戦いましょう―――」
「ただ村人の避難を第一でお願いします。」
「任せろ!」
こうしてオレとルイーズさんの地龍討伐作戦が始まった。