テラーノベル
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ルイーズさんは地龍の接近を村人全員に周知し、村人を村長の家に避難させた。
「おそらく地龍は普段眠っているところから1時間程度でこの村に来るだろう―――」
「そして来るなら自分たちが通ってきたこの村の入り口に現れるはずだ。」
風が少し出てきた。
雨が降っていないだけマシと見るべきか。
「どうする?森の中で戦う方がいいか?」
ルイーズさんはオレに尋ねた。
「村の家などを破壊されるのは避けたいですよね―――」
「森の中で討伐をすることにしましょう。」
村まで招き入れる必要もないし、被害は少ないに越したことはない。
「わかった―――」
「ならばまず今の地龍の居場所を知らないといけないな。」
「それならオレの気配察知のスキルを使用すれば、地龍の居場所を感知することができると思います。」
「凄いな―――」
「君はそんなことまでできるのか。」
ルイーズさんは改めて、進に感心する。
ここでオレは気配察知のスキルに集中した。
「北西の方角にでかい気配がありますね。」
「こいつが地龍だと思います。」
「よしわかった―――」
「その方角に行ってみよう。」
「ただ地龍と戦うに当たってなにか勝算はあるのか?」
「具体的な勝算はないですね―――」
「その地龍がオレの想像以上だったら、やられるかもしれません。」
「だからと云って闘わない理由にはならない―――」
「このまま何もしなければ、村が壊されてしまいます。」
「地龍はとてつもなく硬い。」
「この鉄の剣が貫くことができない程に―――」
「だが、気を反らして村から遠ざけることはできるかもしれない。」
昔、一度闘ったことでもあるのだろう―――
ルイーズさんの手は震えていた。
「そうですね。」
「最悪討伐とまでいかなくとも、撃退をすれば我々の勝利ですね」
こうしてオレとルイーズさんは、地龍の元へと行く為、村を出て走り出した。
「ススム・・・一つ頼みがあるんだが―――」
「頼み?」
「あの子・・・マリー・・・、母親が殺された少女がいるだろ?」
「はい―――」
「それが?」
「もしマリーがお前に付いていきたいって言ったら、マリーをお前の旅に連れてってくれないか?」
いきなりの頼み事で進は少し驚いた。
オレもルイーズさんから見たら子どもなハズなのにそんなことを頼むとは・・・。
「それはまたなぜ?」
つい理由を尋ねてしまった。
「お前は強い―――」
「それも俺以上に―――」
「あの子は元々父親が幼いころに病で亡くなっている。」
「さらに今回の山賊の襲撃で母親が亡くなった。」
「あの子の親の代わりとまではいかないだろうが、気の許せる相手くらいは作ってやりたい。」
「さらに多分今回のことであの子自身強くなりたいと思うかもしれない。」
「それを手伝って欲しいんだ―――」
「なんでオレなんですか?」
「ルイーズさんだって強いじゃないですか。」
正直、天才のオレにとって、少女一人の面倒くらい余裕だとは思っているが、いきなり見ず知らずのオレなんかよりもルイーズさんの方がいいに決まっている。
「俺が教えられるのはせいぜい剣術くらいだ。」
「だが、君には何かとてつもなく大きなものを感じる―――」
「そう単純な強さだけじゃなく。」
「これはオレの直感も入っているが―――」
「そして、その何かとてつもない大きなものはマリー自身を大きく成長させてくれるんじゃないかと思う。」
「もちろん。」
「お前さんさえ良ければの話で、マリー自身がお前さんに付いて行きたいと言ったらの話だが―――」
ルイーズさんはオレが他の人と違うことに気付いているのか―――
まぁ、確かに未央を探す旅がどれくらいの長旅になるか分からない。
仲間は欲しいと思ってはいた。
だが・・・。
あんな同じ位の歳の女の子か―――
危険もたくさんあるだろう―――
村に残って平穏に暮らした方がいいとは思うが―――
「オレの旅はどれくらい危険があるかわかりませんよ?」
「それにいつもオレ自身がマリーを守り切れるか保証もできないですし―――」
「まぁそこはあの子の意思の強さによるかな。」
「ススム自身があの子と向き合って感じてくれ。」
別にオレに守ってもらうつもりって訳ではなく、あくまで成長の一助になってくれということか。
であれば、助けられた恩もあるし、いいか―――
「はい。まぁわかりました。」
進はルイーズの頼みを了承した。
そんなやり取りをしていると目的である地龍の姿が見えてきた。
地龍は全長3m程度あり、外皮は鉱石のようなものに覆われているのが分かった。
「あれが地龍か―――」
まるで、太古の恐竜―――
トリケラトプスみたいな造形だ。
静けさの中に力強さを持つような―――
進は地龍を鑑定をしてみた。
名前:なし
種族:アースドラゴン
性別:不明
Lv.32
クラス:リトルアースドラゴン
◆パラメータ◆
体力:250
筋力:124
魔力:156
物理抵抗力:320
魔力抵抗力:176
精神力:110
器用さ:43
素早さ:39
◆装備◆
武器:なし
防具:なし
◆アクティブスキル◆
《黄土魔法Lv.3》《硬質化Lv.3》《魔力操作Lv.3》《龍闘気Lv.2》
◆パッシブスキル◆
《体力自動回復Lv.1》
◆称号◆
なし
中々のステータスだな―――
この世界に来てから見た魔物の中で一番強い。
特に物理抵抗力が異常に高い上、硬質化で物理攻撃が半減、体力を削っても自動で回復まで持っている。
この世界に来て初めて見える強敵との出会いに進は、恐怖とともに嬉しさも感じていた。
「ルイーズさん―――」
「アレ、倒してしまっていいんですよね?」
進は自然と笑みを浮かべていた。
異世界に来てから、初めて真剣勝負が出来るかもしれないと思った。
「勝てなさそうか?」
「やってみないことには分かりませんが―――」
「苦戦はするかもしれないです。」
「まずはオレが行きますんで、ルイーズさんはここで待機していてください。」
「分かった。ヤバそうなら加勢に入るぞ。」
そう言ってオレは地龍に奇襲を掛けた。
山賊達から奪った長剣で地龍を斬ってみる―――
「ブオオオォォーーーっ!!」
地龍がこちらに気付いた。
まずは縦に一閃決めてから、次にジグザグに斬り込んでいく。
ここまで大きい生物を斬るのは初めてだが、進は丁寧に素早く実行した。
「硬いな―――」
地龍の外皮に傷は付かない―――
逆にこちらの剣が折れてしまう―――
当たり前だ。
こんなオンボロの剣でまともに斬れる訳がない。
地龍が何をしているんだという目で見てきた。
地龍の尻尾がオレの胴体目掛けて振り下ろされた。
それを素手で受け止めようとしたが地龍の力に思わず、10メートル以上吹っ飛ばされた。
「ッ―――!?」
「ススムッーーー!?」
ルイーズさんが大きな声を上げる。
思ったより力は強かったが問題ない―――
綺麗に受け身を取ったので致命傷は無い。
ただ、今ので内臓が少し傷つけられた。
だが、すぐに白魔法で治療する為、問題ではない。
冷静に進は処理していく。
地龍が吹き飛ばされたオレの方に追撃をしようと走ってきた。
その背後からルイーズさんが現れ、剣を振り下ろした。
「うぉぉぉ!!!無双三段切り!」
地龍の表皮に傷が付いて地龍が痛がっているのが分かる。
ルイーズさんの剣術スキルはレベル5相当の熟練者だ。
その一撃ならいくら地龍でもダメージとして残る。
地龍の表皮の一部が削られた。
「ススム―――、大丈夫か?」
ルイーズさんはオレの方に駆け寄ってくる。
「今ので地龍に少しダメージが入りました。」
「けど奴は自動で体力を回復するスキルを持っています。」
「奴に回復する隙を与えてはいけません」
だが現状オレの武器はこの様だ―――
魔法ならどうだ?
そう思い進は、白魔法で攻めることにした。
「ライトボール10連弾!」
ススムの手の先と周囲に光球を10個生み出し、それを地龍目掛けて放った。
一発一発が岩を砕くくらいの威力なので、流石の地龍もダメージを相当負った。
「グァァァァ!!!!」
ダメージを受けた地龍は怒り、こちらと同様に魔法を使ってきた。
「それが黄土魔法ってやつか。」
地龍の周りに岩石が浮かぶ、そしてその岩石が時速150km程度のスピードで大量にオレとルイーズさんの方に向かってきた。
「ルイーズさん避けてッ!」
「くっ―――」
なんとか動体視力で躱しながらいくが、流石に何発かはもらってしまう。
ルイーズさんの方も剣でガードはしているが、何発か食らっている。
「はぁはぁ…」
「ルイーズさんまだいけそうですか?」
「俺はまだいけるぞ。」
進は息切れ一つしていない。
ルイーズさんを回復しようとしたが、地龍はその隙を与えてはくれない。
まさか第二段か―――
すぐに黄土魔法の第二波がやってこようとした。
どうする?
オレは高速演算のスキルを使用し、この状況を変えるため幾多のシミュレーションを脳内で行った。
オレの残りの魔力ももうそんなにない。
ライトボール10連はもう撃てないか。
「賭けに出るしかないか―――」
オレは残りの力を振り絞り、地龍の元に走り出した。
「ススム!」
ルイーズさんは驚いたようにこちらを見て叫んだ。
地龍の黄土魔法の第二波がやってきた。
「この一撃に全てを賭けるッ!」
岩石弾を数発受けながら、地龍の懐に入る。
「貴様は強かったが―――」
「オレの勝ちだッ!!」
最初にルイーズさんが地龍の鉱石の外皮を切り裂いた箇所に手を当てる。
「貫けッ!」
「光の剣ッ!!」
オレの手から白魔法の光の剣が出現し、地龍の体内を貫いた。
光を一点に集中させることで鋭利な刃を創り出す。
白魔法の応用。
誰かに教えてもらったわけではないが、天才 天童 進は自分で編み出した。
「グァァァァ!!!!」
また地龍の叫びが森全体に響いた。
「うぉぉぉ!!」
地龍の体内を貫いた光の剣を地龍の上に引き上げ、地龍を一刀両断した。
ドンっ!!!!
地龍が倒れた音がした。
「ススムやったな!」
ルイーズさんが駆け寄ってきてそうオレに言った。
進達は地龍の討伐に成功した。
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