テラーノベル
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本編一応ラストです!
(NAOKO視点)
JISOOに教えてもらった場所は、海のよく見える所だった。
夜風が冷たく、波の音だけがやけに大きく響く。
その先に、見慣れた後ろ姿を見つけた。
「……コハル」
名前を呼ぶと、KOHARUの肩が、大きく跳ねる。
彼女はゆっくりとこちらを振り返ったけれど、
その瞳はすぐに足元へと落ちた。
「……ナオコ、おつかれさま」
気まずそうに、でも何事もなかったかのように。
その「壁」を作るような声に、胸が痛む。
「モモちゃんから、ここにいるって聞いて…ちゃんと話したい。」
そう言いながら、一歩近づく。
——その分だけ、距離を取られた。
はっきりとした拒絶に、喉が詰まる。
「昨日、変なこと言っちゃった?それとも…」
「ナオコは、何もしてないよ」
KOHARUの声は、冷たいくらいに静かだった。
でも、その指先はコートの裾を、白くなるほど強く握りしめている。
「……じゃあどうして。どうしてそんなに避けるの…嫌いにならないでよ…っ」
我慢していた感情が溢れ出し、視界がじわりと滲む。
その瞬間、KOHARUがパッと顔を上げた。
その瞳には、今まで見たこともないような、激しく、暗い熱が宿っていた。
「……ずるいよ、ナオコは」
「え……?」
「何も覚えてないくせに」
苦しげに歪む声。
「あんなに近くにいて……『好き』なんて、誰に言ってるかも分からない寝言まで吐いて……っ」
言葉を吐き切ったあと、KOHARUははっとしたように口元を押さえた。
寝言——。
その言葉が引き金だった。
(……待って)
朝、目覚めた時のあの妙な感覚。
唇に残っていた、羽が触れるような柔らかい痺れ。
「好きだよ」とこぼした自分の声と、それに応えるように離れていった、誰かの熱――。
「……夢、じゃなかったの……?」
思わず口から出てしまう。
その一言で、KOHARUの体がびくりと揺れた。
「……ごめん」
絞り出すような声。
コハルは視線を逸らしたまま、小さく笑った。
「……キモいよね。寝てる人にあんなことするとか」
「……ほんと、最低だよね」
自分を切りつけるみたいな声に、
胸がぎゅっと締め付けられる。
「……これ以上、空気壊したくないからさ」
KOHARUは小さく息を吐いた。
少しだけ間を置いて。
「私、消えるね」
そう言って、逃げるみたいに私の脇をすり抜けようとする。
私は彼女の腕を、咄嗟に掴んだ。
掴んだ腕から伝わる、彼女の激しい鼓動。
その痛いくらいの振動が、私の無神経さを物語ってる。
何も知らない顔して隣にいたくせに、
あんな期待させるような態度ばっかり取って。
なのに今さら——傷ついてるのは自分みたいな顔してる。
そんな自分に腹が立って、
それ以上に、KOHARUをここまで追い詰めたことが苦しくて。
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頭の中が、ぐちゃぐちゃになる。
「……ごめんね、コハル」
「ナオ、何も分かってなかった……」
その一言に、コハルの肩が揺れる。
「もうやめてよ…っ…私が全部悪いんだから、それでいいじゃん…」
「違う」
「違うよ…っ」
即座に、遮る。
「ナオは、嫌じゃなかった」
「夢だと思ってたから、少なからずびっくりはした。……けど」
言葉を探すように間が落ちる。
「あの時、ナオはすっごく幸せだった。あの温もりが離れてほしくなくて、必死に追いかけてたもん。」
逃げようとするKOHARUの前に回り込む。
正面から見たその顔は、まだどこか怯えたままだった。
「コハルが思ってるみたいなこと、ひとつも思ってない」
そう言いながら、手首からそっと指先へと滑らせて、そのまま強く握る。
大丈夫、って伝えるみたいに。
「それに、あの時の“好きだよ”も、誰かに向けて言ったわけじゃないんよ」
「……え?」
KOHARUが、弾かれたみたいに顔を上げる。
迷っていた視線が、ようやくまっすぐこちらを捉えた。
「あんなふうに触られて……離れてほしくないって、思って」
うまく言葉にできなくて、少しだけ言い淀む。
「胸の奥がぎゅーってなるような“好き”を、初めて知ったの。」
少しだけ、息が揺れる。
「だから、あの好きは特定の誰かに向けたっていうより……」
視線を外さずに、ゆっくりと言い切る。
「コハルが、ナオにそうさせたんだと思う」
KOHARUの指先が、びくりと震える。
握っていたはずの手に、今度は向こうから力が返ってきた。
「ナオコ、自分が何言ってるか分かってる?」
かすれた声。
「それ、期待していいってことになるよ」
視線は逸らされていないのに、まだどこか信じきれていない。
期待してしまいそうになる自分を、必死に抑え込んでるみたいに。
「……正直、この気持ちが何なのかもまだ分かってない。」
「でも、コハルのあの熱を知ってしまったからには、もう前と同じ顔して隣にはおれんよ」
「だから、コハル」
繋いでいた手を、自分の胸元へとそっと引き寄せて、
逃げられない声で囁く。
「中途半端に終わらせんといて。……コハルのこと、もっと好きにさせて?」
「…………っ」
「……ほんとに、ずるい……。そんなの、もう引き返せなくなるよ……」
「うん、いいよ。一緒にいよう」
言い切ったあと、私はそっと包み込むようにKOHARUを抱きしめた。
泣き笑いのような声が、胸元で響く。
昨夜から止まっていた二人の時間が、海の音に溶けるように、ようやく動き出した。
・・・
「……ここ覚えてる?」
少しだけ落ち着きを取り戻した頃。
NAOKOが、手を繋いだまま問いかけてきた。
KOHARUは視線を上げ、遠くに見える巨大なアリーナのシルエットと、目の前に広がる海沿いの道を見渡す。
「……そういえば、リハーサルが終わったあと二人でここ歩いたっけ?」
「そう。あの時も今日みたいに風が強くて……。お互い緊張してたのかしらんけど一言も話さんかったよね笑」
KOHARUが「そんなこともあったね」と小さく、でも愛おしそうに笑う。
あの日、一言も話せずに歩いたこの道で、今は一生かかっても話しきれないほどの想いが溢れている。
「……コハル」
「ん?」
「もうナオが寝てる時に襲ったりしちゃだめだからね?」
少しだけ拗ねたような、意地悪なNAOKOの言葉。
一瞬、KOHARUは虚を突かれたように目を見開いたけれど、すぐにいつもの太陽みたいな笑顔を浮かべた。
「はい…と言いたい所だけど、ナオコが可愛すぎるからなぁ。無理かも笑」
「……え。」
「冗談。でも、これから覚悟しといてね?ナオコを本気で落とすから」
そう言って、繋いだ手にぐいっと力を込める。
横浜の冷たい夜風も、今の二人には心地いい。
「楽しみにしとく」
並んで歩き出す二人の影が、月の光に照らされて、どこまでも長く重なっていた。
最後までお付き合いありがとうございました!
ナオコハの物語はここで終わろうと思ったんですけど、流石にイチャイチャが無いのはどうなのかと思ったので、見たい方がいたら書こうと思います。
いいね、コメント等お待ちしております(*^^*)
コメント
4件
まっじで満足感やばいです。 この小説見るために生きてると言っても過言ではない!!!!!!! イチャイチャシーンもみたいです!!
みたいです!!!!