テラーノベル
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『鳥の王様』を見つけて対トンボの協力、通訳を依頼する。
『美しヶ池』を出発した時は不可能とさえ思えた目的は、思いがけず上首尾に達成され、ご機嫌な顔を上下に並べた二匹、ナッキとサニーは合体したまま、大きな川を遡上中であった。
口の中に納まったサニーはナッキに言う。
「一時はどうなる事かと思ったけど、話の判る王様でよかったよね、ナッキ」
ナッキは泳ぎを続けながら答える。
「だね、サニーが召されかけた時は絶望したけど、協力を得られて一安心だよ! それにしても、まさか手土産まで準備するなんて言い出すとは…… ヘロンって常識あると言うか、気を使うタイプなんだなぁ~」
「うんうん、生真面目なんだね」
二匹が話しているのは、中洲の澱みから『美しヶ池』に戻ろうとした際、『鳥の王様』ことヘロンと交わしたやり取りについてである。
『メダカの王国』入りをナッキから認められたヘロンは、配下の水鳥たちに鳥の言葉で経緯を説明していたが、何故か大絶賛で受け入れられていたようである。
殆(ほとん)どの水鳥が、文字通り舞い踊って奇声を上げていたのだから、余程嬉しかったと見えた。
まあ、流れに乗っただけとは言え、受け入れ側であるナッキとしては、喜んでくれている事自体は好ましい事に他ならなかったのだが……
一頻り(ひとしきり)騒ぎ捲っていた鳥達が漸く(ようやく)落ち着きを見せた時、ナッキは笑顔を浮かべながらヘロンに告げたのだ。
一緒に『美しヶ池』に向かおう、仲間たちに紹介するよ、と。
当然喜び勇んで同道するかと思っていたヘロンからは意外な声が返された。
お先にお帰り下さい、と……
恭順の証に手土産を持って『ペジオの池』、もとい『美しヶ池』を訪れる、そう言い切ったのである。
そんなの要らないよ、一緒に行こうよ、いえいえ駄目です、こう言う事は大切ですから、そんな押し問答を数度繰り返した後、ヘロンの甲高い『クアァーッ!』と言う号令一下、一斉に四方へと飛び立ってしまった水鳥たちを見送ったナッキとサニーは、合体して馬鹿みたいに広くなった水路を経て、大きな川を遡上してきたのであった。
サニーはウキウキした声でナッキに言う。
「でもさ、ちょっと楽しみだよね? 手土産って何なんだろう? ねっ! ナッキ」
「そうだなぁ~、普通に考えれば、僕たち水の中の生き物が食べた事も無いようなご馳走、陸や空の絶品グルメとかなんじゃないかなぁ? そう言うのだったら皆、喜ぶでしょ? 違うかなぁ?」
サニーは益々ウキウキだ。
「うわあぁ! 楽しみだねぇ! ぼ、アタシ涎(よだれ)出て来ちゃったぁー! えへへへ♪」
「あははは、僕もだよぉ♪」
そう笑い合っている内に、二匹にとってお馴染みの場所、『美しヶ池』へと繋がる、小川に至る滝壺、ギンブナ達の言う所の『試練の滝』に戻りついたようである。
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