「こんな曲聞くなんてめずらしいな」
俺の片方のイヤホンを外して聞いてきた。
確かに自分でも恋愛ソングを聞くのはめずらしいと思う。
「なんか最近ハマってんだよね」
「なに、恋でもしてんの?笑」
「別に。歌詞が刺さるなーって」
「ずいぶん遅い春ですね」
「うるせぇよ」
恋愛ソングを聞くとどうにもお前に当てはめちゃって。
伝えられない惨めさと報われない悲しさで、失恋ソングが余計に染みた。
「図星だな」
「どうでしょうね」
「どんなやつなの」
「優しさなんて欠片もないやつだよ」
「え、そいつのどこがいいの」
ほら、恋愛ソングって片思いか失恋が多いじゃん。
1曲聞くと関連して次々と流れてくるから、
それを一つ一つ思い出と妄想に当てながら聞き入った。
片思いと失恋の曲は思い出に浸り、結ばれる曲は妄想に浸る。
「いいとこなんてないよ。」
「なのに好きなん?」
「俺の事いじってくるし、嫌がられるし」
「うわ…」
「それでも目が離せないんだよね。そいつから。気付いたら目で追ってんの。」
「恋は盲目ってやつですか」
「そうですね」
2人して今流れている曲を聞き入る。
こいつは誰と重ねて聞いているんだろうか。
その人が俺だったらいいのになんて期待は捨てて、目を閉じた。
「確かに、恋愛ソングもいいな。共感するところたくさんあるわ」
「ってことは勇斗も恋してんの?この曲めちゃめちゃ片思いソングですけど」
「さぁな」
「俺も答えたんだから言えよ」
「別に、優しいやつだよ。」
「俺と正反対だな」
「な」
「おい」
曲が終わり、失恋ソングが流れた。
こんな時に限って流れてくるなんて、ほんと俺って持ってるわ。
勇斗にカマかける度失恋へのパーセンテージが着実に上がっていく。
「やっぱり染みるわ〜」
「なに、勇斗その恋失恋だったの?笑」
「それはわかんねぇけど、失恋の可能性あり」
「いっそのこと告ればいいじゃん」
「その勇気があればいいんだけどな。仁人は?」
「俺は失恋になりそうだわ」
「お前もかよ 」
2人して笑いあった後、何曲も聞き流した。
お互いの変な気まずさが混じりながらも歌詞一つ一つを受け止める。
人のこと言っておいて自分も勇気がないから毎回流れにまかせるしかなかった。
"今日の服いいね"とか"この写真の勇斗盛れてるわ"とか。
だから今日も流れにまかせることにした。
冗談半分本気半分。
もし振られたとしても軽く済むように。
「だったら俺ら付き合ってみる?」
なんてね。
「︎ 」
「え…?」
ひとつの曲が流れた。
それは妄想と合わせていた曲だった。
end.
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