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数日後。
医師から許可が下り、愁斗は一般病室へ戻ることになった。
病室のドアが開く。
窓から差し込む陽の光が、やけにまぶしく感じた。
「戻ってこれた……。」
思わず小さくつぶやく。
その日の放課後。
病室の扉がノックされた。
『失礼しまーす。』
聞き慣れた声。
愁斗は思わず顔を上げる。
「……来た。」
『約束しただろ?』
ひでは笑いながら紙袋を掲げた。
『売店でプリン買ってきた。』
「子ども扱い。」
『病人扱い。』
「同じじゃん。」
『違いますー。』
思わず愁斗が吹き出す。
「……ふふっ。」
『おっ!』
ひでが目を丸くする。
『今の笑った!』
「笑ってない。」
『いや、笑った。』
「気のせい。」
『絶対笑った。』
愁斗は少し照れくさそうに顔を背けた。
でも、その頬はほんのり赤くなっていた。
その日から。
ひでは毎日のように病院へ来た。
学校であったこと。
生徒会の愚痴。
友達の面白い話。
くだらない話ばかり。
でも、その時間だけは愁斗も自然に笑えるようになっていた。
『今日は施設どうだったかな。』
「さっき先生から電話あった。」
『みんな元気?』
「うん。」
「一番下の子がね。」
「『しゅう兄まだー?』って。」
『会いたいんだな。』
「……うん。」
少し寂しそうに笑う。
『退院したら、一番に会いに行かないとな。』
「そうだね。」
夕方。
ひでが帰ろうと立ち上がる。
『じゃあまた明日。』
「……うん。」
『あ。』
「?」
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『一つお願い。』
「なに?』
『今度、本気で笑って。』
「……え?」
『今の笑顔も好きだけど。』
『もっと心から笑った愁斗を見てみたい。』
病室が静かになる。
愁斗は少し俯いた。
「……難しい。」
『なんで?』
「忘れちゃった。」
『え?』
「心から笑うの。」
その一言に、ひでは返す言葉を失う。
愁斗は窓の外を見ながら続けた。
「施設では笑うよ。」
「下の子たちを安心させたいから。」
「学校でも笑う。」
「心配かけたくないから。」
「でも。」
「本当に楽しくて笑ったのって……。」
少し考える。
「いつだったかな。」
ひでは静かに立ち上がる。
そして愁斗の前まで歩く。
『じゃあさ。』
「?」
『一緒に思い出そう。』
『本当の笑顔。』
愁斗は少し驚いたようにひでを見る。
その表情は優しかった。
押しつけでもなく、
同情でもない。
本気でそう思っている顔だった。
愁斗は小さく笑う。
「……変な人。」
『よく言われる。』
「ふふ。」
『また笑った。』
「だから違うって。」
二人の笑い声が病室に響く。
その日初めて、
愁斗は「明日が来るのが少し楽しみ」だと思えた。
けれど。
翌日の診察で、その穏やかな時間は少しだけ揺らぐことになる。
「愁斗くん。」
主治医は検査結果を見つめながら静かに言った。
「一昨日の血液の数値。」
「思っていたより回復が遅いですね。」
その言葉に、
愁斗の笑顔は、静かに消えた。
コメント
3件

続き待ってます 良くなりますように
読了したわ!「笑顔の練習」第11話、めっちゃ沁みた…。 愁斗が「心から笑うのを忘れちゃった」って呟くところ、グッときたな。ひで君が「一緒に思い出そう」って押しつけがましくなく言えるのが、本当に優しい関係だと思う。最後の医者の「回復が遅い」で愁斗の笑顔が消える描写、余韻と切なさがすごい。続きが気になりすぎる🔥