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渡辺が食べてないのは、老婆も分かっている。
目黒には、ちゃんとご飯を用意してくれるけれど、渡辺にはお粥。
渡辺ー俺も目黒と同じがいい。
老婆ー何言うか。そんな身体で食べれんけ、坊は粥じゃ。
渡辺ーえぇ〜。お婆ちゃん俺も!
老婆ーバカ言うでない、こん人は元気じゃけ、肉でん、魚でん食べれるけ。坊は、この前来たときより細うなっとる。粥じゃ。
目黒ー食べてくれないんです。
老婆ーあんさんも苦労するのぅ、こん坊は食べたがらんけ。
目黒ーお婆ちゃん言ってるよ?
渡辺ーふん!
老婆ー粥も出さんぞ。
渡辺ーん〜ん。
渡辺は粥を食べて眠ってしまった。
目黒は老婆と2人、お茶を飲んでいる。
目黒ー今度、仕事で父親の役をするんです。自分と一緒にいたら、俺は父親になれない。そう思っていると思います。
老婆ー初めから承知で一緒におるんじゃろ?
目黒ー俺はそんなの気にしないんですけど。
老婆ー坊はちと弱いのぅ。
目黒ーはい。
老婆ー父親になるんが1番の幸せじゃ、思うとるんやったら、今すぐ離れんさい。そうじゃないけ、一緒におるんじゃろ?
目黒ーそうです。
老婆ー坊はあんさんと一緒におるんが1番やて思わないけん。
すぐ気持ちが揺れとる。で食べん。
目黒ー当分、お粥ですね。
老婆ーそうじゃの。分かったか坊?
渡辺は、2人に背を向け起きて聞いていた。
ゆっくり起き上がり、海へ行きたいと言う。
3人でゆっくり散歩して海へ行く。
渡辺ーお婆ちゃん、また来る。
老婆ーもうちと、元気になってから来い。
渡辺ーん。
老婆ー粥じゃぞ、そん人に作ってもらえ?
渡辺ーん。
目黒ーまた来ます。
老婆ー粥に鮭とかワカメとか入れてやるとええ。
目黒ーはい。じゃあまた。
帰りの車の中で渡辺は言う。
渡辺ー父親という選択肢は最初からないのか?
目黒ーないね。
渡辺ー俺だけいればいいのか?
目黒ーそう思い続けて、もう5年目だから。
渡辺ーそうか。
渡辺は嬉しそうに笑った。
最初から目黒は揺るがない。
気持ちがジェットコースターみたいな自分とは違う。
そっと腿に手を置いた。