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その年の12月。
透と亜由美の結婚式からちょうど1年後の同じ日に、吾郎と莉沙の結婚式が執り行われていた。
「わあ、莉沙ちゃん綺麗!」
式の前に皆で控え室を訪れ、莉沙の美しいウェディングドレス姿にうっとりする。
「吾郎もイケてるぞ。馬子にも衣装、凱旋門にもタキシード!」
「やめんかーい!」
真顔で透に突っ込む吾郎に、皆で、あはは!と笑い合った。
「いやー、なんかアートプラネッツにとってもめでたい日だな」
洋平の言葉に大河も頷く。
「そうだな。俺達みんなが幸せになれたんだから。誰一人残らずな」
「うん!まさに大団円だね」
透がそう言うと、亜由美も口を開く。
「マダムプラネッツにとってもめでたい日よ。ようやくメンバーが4人揃ったんだもん」
「そうよね。しかも個性豊かで、グループメッセージがとっても楽しいし」
そう言う泉に、瞳子と亜由美も、うんうんと頷く。
「これから家族も増えるし、いつまでもみんなで楽しくやっていこうね!」
透が明るく皆を見渡し、誰もが笑顔で頷き合った。
厳かな挙式のあとは、大階段でのフラワーシャワー。
幸せそうな吾郎と莉沙を、ビデオカメラ片手に撮影する透は、もう片方の手は亜由美と繋いで離さない。
「亜由美!フラフラどっか行かないの。転んだらどうするの?」
「大丈夫だもーん」
「大丈夫じゃないから言ってるの!ママになるのに、子どもみたいなこと言わないで。ほら、ちゃんと手を繋ぐ!」
「もう!心配性なパパでしゅねー?赤ちゃん」
「ママが子どもなんだろ?ねえー、赤ちゃん」
ビデオの画面はブレブレで、こっ恥ずかしいセリフも拾っている。
大河は苦笑いすると透の手からビデオカメラを取り上げ、吾郎達を撮影し始めた。
「瞳子、ちゃんと俺のそばにいろよ?」
「はい、分かりました」
「あ!動くなよ?階段なんだから、足を踏み外したら大変だ」
「大丈夫です。ゆっくり歩きますから」
「ダメだ!お腹が大きくて足元見えないだろ?俺の腕にちゃんと掴まってろ」
「はーい」
「そんなんじゃダメだ。もっとしっかり、ピタッとくっついてろ!」
同じくブレブレの画面と恥ずかしい会話になり、今度は洋平がカメラを大河から取り上げた。
「泉、ちゃんと横にいるか?」
「大丈夫、いるわよ」
「海斗は?平気か?」
「大丈夫だってば。ちゃんと抱っこしてます」
「おい、階段気をつけろよ?海斗抱いたまま足を踏み外すなよ」
「そんなことしません」
「油断するな!しっかり俺と腕を組んでるんだ」
「えー、海斗抱いたまま腕組めない」
「なにー?それなら俺が海斗ごと泉を抱くから」
結局夫婦3組とも、こっ恥ずかしいセリフがビデオにしっかり残ることとなった。
「ね、瞳子さん。赤ちゃんの性別、ほんとに聞いてないんですか?」
吾郎と莉沙がトオルを抱いて大階段で記念撮影している間、階段の下で亜由美は瞳子の大きなお腹に目をやって尋ねる。
「うん、聞いてないよ。先生はバッチリ分かったっておっしゃってたけどね」
「えー、私だったら我慢出来ない。分かったらすぐに教えてください!って、毎回エコーの時に言ってるんです」
「そうなんだ。泉さんの時は?性別、聞いたんですか?」
ん?と、海斗を抱いた泉が振り返る。
「ああ、生まれる前のこと?それがね、聞く前に見えちゃった。あはは!」
なるほどー!と、亜由美と瞳子は頷く。
「男の子ならそういうこともあるって聞きますもんね。じゃあ瞳子さんの赤ちゃんは、女の子かな?」
亜由美は人差し指を口元に当てて、じっと瞳子のお腹を見つめる。
「お腹もまあるい感じだし、やっぱり女の子じゃないですかね?」
「女の子なら瞳子ちゃんに似て、とびきり美人になるわよねー」
亜由美と泉の会話を聞きながら、瞳子は少し苦笑いする。
「ん?どうかしたんですか?瞳子さん」
「うん、それがね。これは単なる私の勘なんだけど…。なんとなく男の子のような気がするの」
「ええ?!どうして?」
「だって、想像つくんだもん。大河さんそっくりの男の子が、むむっ!て眉間にしわを寄せて産まれてくるのが」
そう言うと、亜由美も泉も笑い出す。
「確かに!今頭の中で、まさにその姿が想像出来ちゃった!」
「ほんとほんと!これはもう間違いないわね」
「でも瞳子さんそっくりの女の子も見てみたいなー」
「あら、いずれ女の子も産まれてくるわよ。2人目か3人目に。ね?瞳子ちゃん」
真顔で泉に聞かれて、瞳子は顔を赤くする。
「そ、そうです、かね?はい」
「大河さん、ああ見えて子煩悩なパパだろうなー。瞳子ちゃん、もう4人作っちゃえば?」
「あ!泉さん、それナイス!4人でベビープラネッツ!」
「上手い!亜由美ちゃん」
あははー!と笑う亜由美と泉に、瞳子は、ええー?!とおののく。
だがすぐあとに、それもいいな、と呟いて微笑んだ。
「おーい!マダムプラネッツー!そろそろ披露宴会場に行くよー」
透に呼ばれて、はーい!と3人で返事をする。
歩き出したその先には、それぞれの旦那様が優しく手を伸ばして待っていた。
透と亜由美。
洋平と泉。
そして大河と瞳子。
それぞれが腕を組み、吾郎と莉沙のもとへと歩いて行く。
みんなの幸せは自分の幸せ。
自分の幸せはみんなの幸せ。
この仲間なら、そう思える。
誰一人残らず、必ずみんなで幸せになろう。
大丈夫、きっとみんなで幸せになれる。
そう信じて、誰もが皆、笑顔を輝かせていた。
その先に広がる、明るい未来のように…
(完)