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「ほら、有夏。マンネリは嫌だって言うじゃない。俺あれから色々試してるんだけど、気付いてた?」
「はぁ?」
「この前は立ちバックしたよね。意外と初めてだったでしょ。気持ち良かった?」
「いくせ……?」
有夏が呻く。
そんなのイイに決まってると、涙をためた瞳は幾ヶ瀬を見ていた。
「趣向って……またヘンなイクセさんのやつすんのかよ。有夏のコトこんなにしといて、それから言うなんて幾ヶ瀬きたない」
「ごめんごめん。変なじゃなくて、ルネッサンス末期のイタリアの男娼専門の娼館ね? アレの続きもいいよね。でも俺、気付いたんだ」
「だからなに?」
「世界史も地理も分からない有夏に、いきなりルネッサンス期イタリアの話しても理解できるわけないって」
「いくせ? お前、有夏のこと軽くバカにしてんじゃ?」
アハハ、と幾ヶ瀬は笑って受け流す。
「じゃん! 今回は教師と生徒のラブロマンスなんて考えてみました。どうだろうか」
「どうだろうかって、お前がどうだろうかだよ。なんでそんなにテンション高ぇの?」
幾ヶ瀬の胸に顔を埋めたまま、有夏。精一杯の悪態をつく。
だが、無意識だろう。
その腰が求めるように揺れていることに、幾ヶ瀬は気付いていた。
「俺が教師で、勉強が全然出来ない有夏の為に補習をしてるって設定で。教科は何がいい?」
「設定!? 何だコイツ……何なんだ、このヘンタイは」
「まぁまぁ。教科は何? 選ばせてあげるよ?」
「何でもいいよ。てか設定って……ホンモノかよ」
この瞬間、呆れが性欲を上回ったか。
幾ヶ瀬を見る有夏の目が、憐れむように細められた。
ホンモノのヘンタイが現れたよ、と小さく呟いている。
「ホントに何でもいいよ。てか、どうでもいいわ」
「そう仰らずに!」
「キッモ」
「まぁまぁ、そう仰らずに!」
「そういやお前、算数が上手だったな」
「うん? 数学かな。あと、上手とは言わないと思うな」
「高校んとき、よく勉強みてくれたよな。幾ヶ瀬、イガイと教えるの上手いかもよ?」
「ありがとう。あの頃は教えるのが上手いなんて思ったことないけどね。有夏がちっとも成績に反映させてくれなかったから」
「……ゴメン」
「まぁいいよ」
言いながら幾ヶ瀬の手が動いた。
有夏の後ろの入口を指の腹でこすったのだ。
「ずるいっ! そこさわったら……んっ」
切なげに喘ぐ有夏に軽くキスして、直ぐに指を離す。
「続き、してほしい?」
「……きたねぇ、幾ヶ瀬」
幾ヶ瀬の唇が歪む。
「おねだりしてよ。先生、シテって」
「せんせ……やっぱヤだ!」
一回の拒絶など、むしろ可愛いものだ。
有夏を胸に抱きしめたまま、幾ヶ瀬はその耳に囁く。
「はい。ここは教室ね。ちなみに放課後。ああ、ヤらしっ……。小テストが全然出来なかった有夏の為に俺が補習をしてるとこ。ああ、設定がすでにヤらしっ!」
「いくせーー?」
「さて、胡桃沢くん。1枚のコインを7回投げるとき、2回以上表が出る確率を求めよ。分かる?」
「は? コイン? え……なに?」
幾ヶ瀬、有夏の顔の真ん前で指をクイクイと動かす。
「先生。ほら、有夏。センセイだって。カモン! センセイ、カモン!」