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「魔王と謎の少女」
魔王と抱き合っていると、ふと視線を感じた。その先に居たのは、長身で緑色のロングヘアの少女だ。頭のサイドにお団子を作り、黄色いリボンで結ばれている。服はメイド服を着ている。どうやらメイドの様だ。僕の視線に気付いたのか、こちらを睨みつけている。
魔王「?…どうした?勇者。」
僕の異変に気付いたのか、魔王が心配そうに顔を覗き込んでいる。八の字に眉を寄せた顔も、とても可愛らしい。
メイド「貴様…魔王様に何をしている!?」
その様子を見たメイドが、苛立ちながらダガーをこちらに振りかざしている。キィィンと鋭い金属音と尖った剣先に、思わず手汗が出てしまう。
魔王「ライラ!?いつの間に!?」
メイド「魔王様が中々お戻りにならないので…心配で来てみたら…」
メイド…もとい、ライラはチッと舌打ちしながらこちらを睨んでいる。すぐにでも攻撃したい所を、必死に我慢している様だ。怒りからか、ダガーを持つ手が震えている。
魔王「ま、待て!こいつは私の、こ、恋人なんだ!」
ライラ「恋人!?この人間が!?…魔王様、考え直して下さい!こいつは敵ですよ!?」
僕の腕に抱き着く魔王の姿を見て、ライラは驚きと怒りと焦燥に駆られながら、僕を指さした。
勇者「僕は真剣です!彼女と結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます!」
魔王「ライラ…許してくれ…やっぱりお前に嘘は言えないんだ…お前は私の、大切な部下だから…」
ライラ「魔王様…」
ライラは苦悶を抱きつつも、スゥッと一呼吸して
ライラ「分かりました…魔王様がそう仰るなら」
魔王「分かってくれてありがとう、ライラ」
ライラ「いえ、魔王様の願いなら、私が叶えます。どんな時でも、ずっと…」
ライラは胸に手をそっと重ね、複雑な面持ちで魔王を見た。苦しそうな、寂しそうな、そんな表情だった。その表情に、思わず胸が傷んだが、汗ばんだ手をギュッと握りしめ、魔王への決意を新たにした。
魔王「ライラなら、分かってくれると思ったんだ。なんせ、私の一番の側近だからな!」
ライラ「はい、魔王様の仰せのままに…人間は憎いですが、魔王様の為にお二人を守ります。」
魔王「頼んだぞ、ライラ!」
勇者「よろしく…その、ライラ、さん?」
ライラは僕の顔をキッと睨みながら
ライラ「軽々しく呼ばないで下さい。人間ごときが…」
魔王「まぁまぁ、いいじゃないか、名前くらい」
ライラ「仕方ありませんね…魔王様がそう仰るなら、呼ばせてあげます。」
勇者「ありがとう、ライラさん。これからよろしくね。」
ライラ「…はい、人間。」
魔王「人間じゃなくて勇者だろ?」
ライラ「はい、分かりました。」
ライラは冷たい目線をこちらへ向けてきた。どうやら心底人間を憎んでいる様だ。一体、何があったのだろう…と考えていたら、魔王が僕の裾を握って、手を引いている。どうやらここだと人目につく為、魔王の部屋へ案内する様だ。僕は魔王に導かれるまま、魔王の部屋へ向かうのだった。