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ゆる作ウィーク/6日目

あんな奴でも愛してる

「うるせぇんだよ!」

夫は反抗的な息子に暴言を吐く。

「親父、もうオレは十七だ。もうガキとは違ぇんだよ!」

息子もたまらず言い返す。


─────こんな毎日、本当にうんざりだった。


ある日、息子から

「ごめん…親父が…親父が…!」

と、焦った様子で電話がかかってきた。私は夫に連絡を入れたが繋がらなかった。

詳しく、と息子に聞くと

「親父から急に学校へ連絡があった。部活やってたオレに先生は『帰りなさい。』って言ったんだ。それで何があったのかを聞くと、仕事場で事故にあったらしいんだ。」

震えた声色で細々と説明した。私は受話器を落としてしまった。夫と出会ってかれこれ30年になる。ショックで何も考えられない。貴方がいない生活など考えられなかった。

夫の元に急いでいくとピーッピーッという脈を想像させるリズムが聴こえてきた。

「和夫…!!!」

夫は目を開けない。苦しそうだ。全身血だらけで痛々しい。こんな姿は息子に見せられない。

「陽一、病室には来ないで」

「なんでだよ!!親父が……死ぬかも知んねぇんだぞ!」

「そんなっ…こと……」

分かってたまるか。

次の瞬間、脈がどんどん遅くなって危険な状態になった。近くにいた医者は首を横に振った。骨に鉄球が貫通したらしい。

「陽一、お願い…あの人の醜い姿なんて見せられないの!!」

息子は声を震わせて

「あんな奴でも!愛してたんだよ!!!親父がいない生活、人生なんて考えらんねぇよ!!!」

と、言い次の瞬間病室の扉が開いた。そこに立っていたのは紛れもない部活動の格好の息子だった。

「なんで死んじまうんだよ!!親父!!!目ぇ開けろよ!!いつもみたいに殴ってくれよ!!!親父………!!」

いくら叫ぼうとも夫に反応は無い。

「うわー!!!くっそー!!!!なんで、なんでっ!!!父さん!!もう、反抗しない!!父さんがいるだけで毎日、幸せ!!!オレのこと考えてあの時、お弁当作ってくれてありがとう!!!親父…!!生きよう?母さんとオレとさ……!!」

「……陽一、和夫!起きて!!!陽一が来てくれたのよ!!!愛してるって!愛してる…って!」

だが、その声も虚しく、いきなりピーーーーという抑揚も感じられない音が病室で響いた。

「あ、あ”あ”……と、うさん…?」

堪えきれない涙が出てくる。生理的な感情ではない。心から悲しくて悔しかったのだ。

「かず…お”……」


これを機に、息子は一切反抗しなくなった。若くして父親を無くしてさぞ、寂しかったことだろう。

「……母さん」

「ん、なぁに?陽一」

「いってきます!」

「んふふ、いってらっしゃい…!」

この幸せを噛み締めて生きていくことを私は決めて、今日も一枚の写真に

「愛してる…和夫のことを私たちは愛してる。」

と、話しかけ棚の上に置くのだった。

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