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「とんでもないよ。私はいっぱい支えてもらったよ。メールもだけど、朋也さんが生きてくれてるっていう事実だけで、それだけで……幸せだった。感謝してもしきれないよ」
「恭香……。その言葉に感謝する」
朋也さんは、前に連れて行ってくれた水族館に車を止めた。
「また同じ場所で悪いな。あの時、恭香と見た魚達をもう一度見たくて」
「水族館なら何度来ても嬉しいよ。ありがとう」
久しぶりにまたワクワクした。
魚達を見られることももちろんだけれど、ここは、私にとっての大切な場所だったから。
ここで……
私は、朋也さんに告白してもらった。
思い出すと勝手に顔が赤くなる。
中に入ってすぐに、大水槽の魚達が私達を迎えてくれた。
2度目のお出迎えだ。
この水槽の前で朋也さんは告白してくれた。
それを魚達も覚えてくれているような気がした。
「そんなわけないか……」
つい、言葉がこぼれ、1人でクスッと笑った。
「何? どうかした?」
朋也さんに聞かれた。
「ううん、独り言。ねえ、次、行きましょ。あっちにも綺麗な魚いたよね。黄色とか青色とか……」
私は、子どもみたいにはしゃいでいる。
またこうして朋也さんと水族館に来れたことが、ただただ素直に嬉しい。
これ以上の幸せはない……と心から感じた。
「恭香。見てごらん」
「うわぁ、すごく綺麗だね。濃い青色だ。こっちは黄色……」
何度見ても新鮮な気持ちで見れる。
魚達の世界に興味津々だ。
いろいろ話しながら、たくさんの魚を時間をかけてゆっくり見て回った。
こんな贅沢な時間の使い方をしてもいいのだろうか?
朋也さんの日頃のストレス発散になればいいのだけれど……
「ねえ、疲れてない? 朋也さん」
「いや、全然。恭香は?」
「私も全然大丈夫。朋也さん、仕事疲れがあるのに、こんなにゆっくり私に付き合ってくれて……ごめんね」
「気にしなくていい。恭香も毎日頑張ってるんだ。俺は楽しいよ、すごく」
「私もすごく楽しい」
それから2人で水族館のレストランで食事もして、ソファに座って休憩したり、お話したり、黙ったり。
かけがえのない2人だけの時間に浸った。
周りの人達は、当たり前のように朋也さんを見ている。
きっと朋也さんの周りにはキラキラしたオーラが溢れているから、嫌でも目立ってしまっているんだ。
「ねぇ、見て。あの人とっても素敵。モデルさんみたいだね」
「うわぁ、ほんと。どこの雑誌のモデルだろう」
そんな会話が聞こえてきても、朋也さんはごく自然に振る舞ってくれている。
私は、そんな朋也さんに感謝している。
カッコ良いのに偉そうにしたり、自慢したりしない、穏やかで本当に優しい人。
最初の頃の強引さも、今となっては懐かしい思い出だ。
こんなに素敵な人が、この世にいる奇跡。
私は世界で1番の幸せものだ。
この人のそばにいられて本当に嬉しい。
付き合っているわけでもないし、これからのことはまだわからないけれど、なぜか不思議と不安はなかった。
水族館を満喫した後、朋也さんは私をどこかに連れ出した。
時間はもう夕方になっていた。
どこに行くのだろう?
車は、高速を走っている。
「寒くないか?」
「うん、大丈夫」
「もうすぐ着くから」
「……うん」
なんだかドキドキする。
行き先のわからないドキドキ感だ。
自然と、心臓が高鳴る……
そして、着いた場所に驚いた。
海だ――
とてもキラキラした綺麗な海。
水族館とはまた違った素敵な場所に、私は心から感動していた。