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(白銀の流星と呼ばれた、クレイジーな雅輝の後ろに、俺がつくわけないだろ! わざわざいらないプレッシャーをかけようとしやがって)
思いっきり口元を引き攣らせた橋本は、わざとらしく満面の笑みを頬に滲ませながら、宮本に話しかける。
「雅輝くん、なにを言ってるのかなぁ? このメンツでいちば~ん早く走れるくせに、そんなことを言うなんて。帰ったらお仕置きだぞ♡」
「お仕置き……陽さんからお仕置きされる。むぅ……」
優しく注意を促した橋本のセリフに反応した宮本が、その場でフリーズした。次第に喜びに満ちた表情で崩れていく宮本の面持ちに、橋本がヤバみを感じた瞬間、榊が場を引き締めるような一本締めをした。
「さ、さぁそろそろ、みんなでレースをしないと、待ってるお客さんの迷惑につながっちゃいますよ!」
この場に流れる空気を瞬時に悟った榊の采配に、橋本は心の中で拍手を送った。
「そうだそうだ、早いとこはじめるぞ!」
橋本はだらしない宮本の顔を引き締めるべく、背中を強く叩いてから、颯爽と自分が乗るゴーカートに向かった。背中の痛みに顔を歪ませた宮本が、小走りで橋本の横に並ぶ。
「陽さん、俺の走りを見ててくださいね」
「練習ではずっと、俺のあとを追いかけてたくせに。そんな大口叩いて大丈夫なのか?」
「上手な陽さんの運転をずっと眺めることができるこの瞬間だからこそ、幸せを感じていたかったんですよ。こんな機会、滅多にないでしょ?」
「おまえ、そんな理由であんな走りをしていたのか……」
宮本らしい返答に、橋本までも幸せを感じてしまった。
「だけど今度は俺の運転を、陽さんに見てもらいたいなって」
宮本は甘さを感じさせるような声色で告げながら、橋本のてのひらをぎゅっと掴んだ。掴まれた衝撃をそのままに、橋本は小さく微笑む。
「おまえから目を逸らすわけがないだろ。ちゃんと見ていてやるよ」
「お仕置きも約束ですからね!」
橋本を掴んだてのひらがぱっと放された途端に、隣にいた宮本が逃げるように去って行く。
「雅輝のヤツ、俺に拒否権を発動させないように逃げたな。どうしてお仕置き込みなんだよ……」
苦笑したままヘルメットを被って、ゴーカートに乗った橋本。自分よりも後ろに控えている宮本の顔がだらしないことになっているのは、容易に想像できたのだった。