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4人がそれぞれのゴーカートに乗り込み、準備ができたことが傍からわかると、場内に響き渡るような放送が耳に聞こえてきた。
「これからおこなわれるレース第三回目は、男性4人組のお客様になります! 二周する間に見られるであろう、火花散る友達同士のやり取りをお楽しみください!!」
その放送で、場内にいる客からの視線を一斉に浴びることになった4人は、自然と緊張感が増していった。
(――間違いなく雅輝の走りに、ここにいる全員が魅了されるんだろうな)
橋本が微妙な気持ちに陥ってる間に、目に映る信号が赤から青に点灯し、大きな破裂音がした。先頭にいる榊が勢いよくスタートすると、それを追いかける和臣が、榊のすぐ後ろをついていく。
少しだけ離れた位置からふたりを追いかけた橋本の背後に、宮本の気配がなかった。
(俺と同じように遠くから前の車の動きを見て、走行ラインを決めようとしているのかもしれない)
目の前に左回りのコーナーが迫った。ブレーキングして適度にスピードを落とし、最短距離で攻めるべく、前の車と同様にイン側のラインを走行する。
イン側を綺麗に攻めたゴーカート三台を、一番後方にいた宮本は外から抜かした。それもあっという間にアウト側からサクッと抜かされた出来事について、橋本は驚きを隠せない。
「雅輝っ!?」
ブレーキでスピードを落としているコーナーだからこそ、抜かされること自体不思議じゃなかった。自分たちは減速しているのに対して、宮本の運転するゴーカートはアクセル全開でコーナーを駆け抜けていったので、なにがいったいどうなっているのかわからなくなる。
先頭にいた榊と宮本の距離が、あからさまに離れていった。
「まったく。相変わらずどんな車でも自分のものにして、ポテンシャルを引き出しちまうんだから、すげぇとしか言えない」
ぽつりと独り言を呟いた橋本だったが、もう一台意外な運転をするヤツを目にする。
圧倒的なドライビングテクニックを使い、ブレーキもそこそこに、アクセルワークでコーナーを次々と突破していく宮本に追いつこうと、榊が必死に追いかける姿だった。
尋常じゃない速さの宮本に引き寄せられるように、人が変わったような走りを見せる。いつもの冷静沈着な榊は、そこにいなかった。
(なんていうか、和臣くんを追いかけてる恭介を表している感じと言うべきか)
クレイジーな走行を華麗に魅せる宮本、頑張ってなりふり構わずに走る榊に、追いつかないことがわかっていながらも努力を惜しまずに追いつこうと、必死に榊の背中を追いかける和臣、それぞれの走りを冷静に分析しつつ走る橋本の4人のレースは、順位を変えずに幕を閉じたのだった。