テラーノベル
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スタートーー!
満月が、星見山の空高く昇っていた。
白く澄んだ月明かりが、古びた天文台のドームを照らし出している。
地下室では、美月、蒼真、黒崎レオン、そして怪盗ファントムが静かに向かい合っていた。
誰も動かない。
聞こえるのは、古い時計の秒針だけだった。
コチ、コチ、コチ……。
黒崎が口を開く。
「君の芝居もここまでだ、ファントム。」
「手帳とカメラを渡せ。」
ファントムは肩をすくめ、穏やかな笑みを浮かべた。
「残念ですが、お断りします。」
「約束がありますので。」
「約束?」
「十五年前に交わされた、小さな約束です。」
⸻
白いカード
黒崎は静かに手を上げた。
「奪え。」
その合図と同時に、黒い服の男たちが一斉に飛び出す。
しかし、その瞬間。
ファントムは一枚の白いカードを空へ放った。
カードは月明かりを受けて輝き、床へ落ちる。
パァン!
まばゆい閃光が地下室を包んだ。
「うわっ!」
男たちは思わず目を覆う。
「今です!」
ファントムが叫ぶ。
蒼真はすぐに美月の手を取り、地下通路へ走り出した。
「こっち!」
二人は狭い石の通路を駆け抜ける。
背後では怒号が響き、黒崎の部下たちが追ってくる。
⸻
地下迷宮
地下通路はまるで迷路のようだった。
古いレンガの壁には、小さな星形の印が刻まれている。
「右だ!」
蒼真が指差す。
「どうして分かるの?」
「乾板の星図だ!」
「この印は道しるべなんだ!」
美月は頷き、息を切らしながら走る。
やがて、小さな木の扉へたどり着いた。
押してみる。
しかし、びくともしない。
「鍵がいる……。」
美月は首から下げた星形のペンダントを見つめる。
「まさか……。」
ペンダントを鍵穴へ近づけると、淡く青い光が浮かび上がった。
カチッ。
扉がゆっくりと開く。
⸻
星の部屋
そこは小さな円形の部屋だった。
天井はガラス張りになっており、満月と無数の星が見える。
部屋の中央には、一台の古い映写機。
横にはフィルムを差し込む装置がある。
蒼真が息をのむ。
「これが……。」
美月はファントムから届いたフィルムを取り出した。
「入れてみよう。」
慎重にセットする。
映写機が静かに回り始めた。
カタ、カタ、カタ……。
壁いっぱいに映像が映し出される。
それは夜空ではなかった。
若き日の神崎蒼介と倉橋俊介。
二人が笑いながら子どもたちへカメラを教えている映像だった。
「これは……!」
映像の最後で神崎がカメラへ向かって話し始める。
「未来の誰かへ。」
「もし君がこの映像を見ているなら。」
「写真は宝物を写すためのものじゃない。」
「人の笑顔や、希望を残すためのものなんだ。」
美月の目に涙が浮かぶ。
⸻
ファントムの告白
その頃、地下通路。
ファントムは一人で黒崎たちを足止めしていた。
ワイヤーが舞い、煙幕が広がる。
黒崎が低く笑う。
「そこまでして守る価値があるのか?」
ファントムは静かに答えた。
「あります。」
「私は子どもの頃、神崎先生に助けられました。」
「写真を撮る楽しさも。」
「星を見上げる意味も。」
「全部、あの人から教わった。」
黒崎の表情が変わる。
「だから君は……。」
「ええ。」
「この記録だけは、誰にも渡しません。」
⸻
天文台包囲
突然、外からサイレンが鳴り響いた。
赤色灯が窓を照らす。
警察車両が何台も天文台を包囲している。
黒崎は舌打ちした。
「警察か……。」
しかしファントムは首を横に振る。
「違います。」
その瞬間。
山の反対側からヘリコプターの音が近づいてきた。
黒い機体。
側面には見慣れない紋章。
蒼真は窓から見上げ、顔色を変える。
「……まずい。」
「警察じゃない。」
「黒崎の増援だ!」
ヘリコプターからロープが降ろされ、黒い装備の男たちが次々と降下してくる。
美月は思わず息をのんだ。
「こんなに……。」
天文台は完全に包囲されてしまった。
⸻
月光の約束
ファントムは地下室へ戻り、美月へ小さな箱を手渡す。
「これは?」
「神崎先生から預かっていたものです。」
箱の中には、一枚の古い写真。
幼い少年が、神崎蒼介と並んで笑っている。
少年の帽子には、小さな星のバッジ。
美月は写真とファントムを見比べる。
「この子……。」
ファントムは静かに微笑んだ。
「私です。」
「先生は言いました。」
『いつか、本当に大切なものを守れる人になりなさい。』
「だから私は怪盗になりました。」
「盗むためではなく、守るために。」
⸻
ラストシーン
その時だった。
ドォン!
地下室の天井が激しく揺れる。
黒崎の部下が爆薬で入口を破壊し始めたのだ。
「時間切れだ。」
黒崎の声が響く。
「すべて奪え!」
石壁に亀裂が走る。
砂ぼこりが舞い上がる。
ファントムは美月と蒼真を見つめ、静かに言った。
「ここから先は、私を信じてください。」
彼は帽子を軽く持ち上げる。
満月の光が、その横顔を優しく照らした。
そして――。
ズガァァン!!
地下室の扉が吹き飛び、物語は新たな局面へ突入する。
⸻
――第五章 終――
次回・第六章「月光の追跡」
崩壊を始めた天文台からの決死の脱出劇。怪盗ファントム、美月、蒼真は地下通路を駆け抜けるが、黒崎レオン一味が執拗に追い詰める。そして満月の光が照らす山頂で、「ルミナス・スター」と「星の記憶」に隠された本当の秘密が少しずつ明らかになっていく――。
コメント
3件
みぅです🤍🥀 第5章、めっちゃ良かった……! 満月の天文台、地下迷宮、星の部屋の映写機……どのシーンも映像が浮かぶみたいに美しくて、一気に引き込まれたよ。 特にファントムが「守るための怪盗」だったって告白、胸が熱くなった。神崎先生の言葉『人の笑顔や希望を残すためのもの』、そのままファントムの生き方になってるんだね。 最後のヘリ増援、また次が気になるー!次回も楽しみにしてる🌙
#デジタルイラスト
る あ 。 @低浮
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る あ 。 @低浮
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紫蘭
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