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“嫌い”
イギリス×フランス
(リクエスト)
「散らかってんねー」
部屋に入ってからの一言はそれだった
「最近は色々と忙しいのですよ。誰かさんとは違って」
うざいなぁ…
別に文句をつけたわけじゃないのにこの国…イギリスは随分と喧嘩を売るのが好きらしい
「そー…俺は暇じゃなくて計画派なんだけど」
「あらあら。誰も貴方とは言ってませんが?」
殴りたい
自慢げというか、見下してくるようにこっちを見ている
まぁこの程度の口喧嘩はいつもしている
なんでこんな仲の悪いクソ野ろ…国の家にいるかと言うと…
「新しい企画?」
国際会議。久々に会って突然の言葉に目を見開く
トップハットを被り、小柄な体型に見合わない
スーツを着こなしている。顔こそ少し幼いが、雰囲気が大人っぽい目の前の彼は表情を変えずに続ける
「ええ。貴方となんて嫌ですが一緒に考えません?」
嫌なら他のやつに頼めよ。こいつは俺の事をほんとに嫌いなんだな…
ま、暇だし
「いいよ。俺もお前とじゃ癪だけど~」
軽く言い返すと”ではまた”とだけ言って会議室から出ていった。
なんなんだよ…そもそもなんで俺なんだよ…
アメリカとかカナダとか…オーストラリアとかでいいじゃん…
イギリスは多量の植民地を持っていた
そのため今でも彼の話し相手は多い方だろう
多々の仕事のせいか最近はイギリスの姿を会議や仕事場などで見ることはずっと減ったが、それこそ互いに嫌い合ってるならいいと思っていた
しかし再開したと同時に急な誘い。
あいつ…ヨーロッパからもちょっと疎遠になってるし…また亜細亜の方行ってるし…
そのくせ……はぁ…
不思議な国だほんとに
「それでー?企画とかなんとか言ってたけど…」
「………紅茶入れてきますね。適当にくつろいでて下さい」
そう言ってよそよそと台所へ向かっていった
無視された…
やっぱ紅茶なんだなー
ていうか別にお茶出しなんていいのに
そんな改まった柄でもないだろう
前までは割と適当だったのに
距離感……変わった………、?
なんだか遠い…ような、
そんなことを考えていると戻ってきたイギリスが机の上にカップを置く
「どうも」
そうとだけ言って席に座って1口カップに口をつける
イギリスは向かいの席に座ると咳払いをしてから一言。
「話したいことがあるのですが」
は?
こいつからそんな言葉が…
一瞬戸惑う
じゃあ”企画”っていうのは?
まぁこの場合嘘なのだろうけど、信じ難くて呑み込むのに時間がかかる
でも動揺しているのを悟られるのはなんか嫌だ
精一杯返事の声を発した
「何?いきなり」
自然と表情が固くなる
一方のイギリスはというと相変わらずいつものすまし顔でこっちを見ている
こいつは何を考えているのかさっぱりだ
「そんなかしこまってする話でもありませんよ。ただ…」
そうしてふせた目がチラリとこちらを見た
身構える
何を言い出すのだろう
「……いえ。やっぱりなんでも。さっきの発言、忘れてください」
「……え、うん」
なんなんだ一体。話すのか話さないのかどっちなんだ
そんな大事な事なのだろうか…
いやでも、かしこまってする話でもないって…
こいつの場合それも嘘かも…それか、俺をただからかってんのかな
色んな憶測が頭を巡る
あれこれ考えているとなんだかボーッとしてきた
気分が悪いわけではない
ただ少し眠いような…………
イギリスはそんな様子の俺を見つめている
「ごめん。ちょっと寝不足かも」
そう言って席を立とうとした、その時
視界がぐらついた
意識が次第に遠くなっていくのを感じる
立ってこちらに近づいてきたイギリスはしゃがんで何か言っている
何…?聞こえな…い………………
「もし、私が貴方を…………」
そこまでしか聞き取れなかった
目が覚めると見知らぬ天井があった
窓からは雨の音が聞こえる
そうだ。イギリスの家で倒れたんだった
律儀にベットまで…ねぇ
どうせ呆れられるだろうな
そう思っていると部屋の扉が開いた
「起きましたか」
「はぁ…お礼言いたくないけど、一応ありがと。」
「素直なんですね。外に放ればよかった?」
こ、こいつ…
こんな奴でも感謝はしておかないと、さすがに非常識だ
しかし、次の言葉はそんな気持ちを一切に消し去った
「ま、眠くなるのは当然でしょう。私が薬を混ぜたんですし」
「………は?」
何を言ってるんだこのクソ野郎は
というか本当なのか
「お前さ…どういうつもりd」
言い終わる前に口を塞がれる
手袋の繊維が唇に触れる
スキンシップなどあまりしない彼の行動に身体がはねる
「さぁ。その小さい頭で考えればよろしいので?」
まじでムカつく
こういうところも大嫌いだ
昔からの仲だし腐れ縁だが、どうしても好きになれない
それなのに…
なのに…
なんで今…こんなに心臓がうるさいんだろ
「それから、その薬には後もう1つ効果があってですね」
!?
こいつ!こいつ…!こいつ!!
まじでムカつく!!
その笑顔がムカつく!すましてる感じがイラつく!!
ってその効果って…
じゃあ…今こうしてドキドキしてるの…
「気づいているでしょう?」
そう言い、前のめりに距離を詰めてくる
近い
今手を離されたらきっと口と口が触れ合うくらい
「話の続きをしましょうか
私が貴方に言いたかったこと…」
この状況で何を言い出すか
でも気になってしまう
好奇心は彼の次の声を欲している
“ピーンポーン”
ベルがなった
狙っているようなタイミングだった
「………」
イギリスは手を離すと無言で俺から離れる
「あ…」
その腕を…
無意識に掴んでいた
「っ…いや、話の続き…」
服の上からなのにイギリスに触れることなんて滅多にないためギクシャクしてしまう
そんな俺を見ながらイギリスはポツリと言った
「いいえ。また別の機会で」
掴んでいた手をそっと外し足早に玄関へと向かっていく
部屋の扉まできて止まった
「あぁ…それから」
振り返った顔はまたいつものすまし顔。
「薬のもう1つの効果…あれ、嘘ですから」
「……は??」
「貴方の情けない顔傑作でした」
クスクスと笑いながら部屋を出ていった
しばらくして体全身が熱くなる
またからかわれた。
…っ!!
やっぱり俺はあいつが”嫌い”だ