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最高の旦那様

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最高の旦那様

119 - 第119話 旦那様は推測する。私は疑問を提示する。5

2025年09月08日

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 コンスタンティンが扉の向こうへ消えたのを確認した私たちは、揃ってカップを傾ける。

 見ているだけでも消耗させられる輩を相手にしていたのだから当然だ。


「神殿での問題がこれだけとは思えませんが、一端の排除は叶ったのかしら?」


「ええ、一番の問題点は改善されましたのぅ。次の問題は過度の男尊女卑思想ですが、この点は女王陛下の即位と最愛様の御活躍によって、大幅に改善されることでしょう」


「あら、丸投げなのかしら?」


「ほっほっほっ。幾ら年寄りとはいえ、そんな失礼はいたしませぬよ。我ら神殿住まいの基本理念は、相応の振る舞いをすべし、ですからのぅ」


 あら、そんな理念なんだ。

 どうとでも取れる理念だよね。

 理性的な人にしか通用しない感じ。

 ……前提として、理性的であるべし! っていうのがあるのかも。


「大神官様には、威厳を持って行動されるべきかと」


「大神官たる我に、そんな物言いとはのぅ。うぬこそ、相応の振る舞いができておらぬのではないか?」


「大神官様もできておりませんよね?」


「その点には、マテーウスに同意いたします。こういった限られた場でならまだしも、公式の場における大神官様の振る舞いは、あまりにもお優しい……」


 マテーウスの言葉にカールハインツも同意した。

 ここぞというときには威厳を見せてくれるけれど、私の前ではからかい上手のお爺ちゃんって感じだものね。

 民の前では、現人神《あらびとがみ》を気取るくらいでいいのかも。

 純粋無垢なだけの民ではないのだから。


「公式の場でこそ、慈悲深い大神官様を演じておるのじゃがのぅ」


「やり過ぎかと」


「控えてもいいのでは?」


 方向性はいいが、やり過ぎらしい。

 何事も加減は難しいよね。


「……最愛様? 人事であらせられるようですが、大神官よりもよほど、最愛様の方に威厳がなくてはなりませんぞ」


「そうですわね。既にお優しい最愛様と噂が広がっておりますもの……侮る者も出てきましょう」


「神殿では徹底させましょう!」


「はい。武・文官ともに、最愛様への崇拝は徹底させます」


 崇拝……崇拝は夫の専売特許だと思っていたんだけどなぁ。


 お揃いですよ?

 嬉しくないのですか。


 お揃いと言われると嬉しい気もする。

 けれどやはり虎の威を借る狐感は拭いきれない。


「王家も勿論徹底させますわ。王より上がいると。王が間違っても咎められる存在があると」


「他の最愛……最愛様方との差別化もお任せくださいませ」


「……最愛の差別化って可能なの?」


「本来であれば難しゅうございましょう。ですが時空制御師の最愛様は別格です。文句は言わせません」


 何故かヴァレンティーンが胸を張る。

 他の最愛とやり合った経験があるのかもしれない。


「そもそも最愛とは、力ある方方が己の大切な方を害されないように与える称号とされております。ゆえに、与える側……最愛様の場合は時空制御師様が、お近くにおられないほどその力を発揮するものなのです」


 マテーウスが説明をしてくれる。

 力のある方方の中には、神殿とかかわる人も多くいそうだ。


「ですが最近では、力のある方がお側にいるというのに、我儘を貫き通そうとする者が増えてまいりました」


「……王族周りでもおりますね」


「参考までに名前を聞いてもいい?」


 ローザリンデとフュルヒテゴットが見つめ合っている。

 教えたくないのだろうか。


「知らないと万が一の回避もできないかと」


「ですのぅ……現在この世界で認められている最愛様は、十人。過去に最愛様絡みで世界が滅びかけるほどの戦争が起こりました関係で、最高でも十二人しか最愛様は存在できぬのですわい」


「最愛様の誕生は世界の果てまでも周知されますの。知らぬ者はいない。それが最愛様なのですわ……アリッサ様は異世界におられましたので、例外ですわね。今は周知されておりますので、御安心くださいませ」


「現在の最愛様は以下の通りになります」


 またしてもマテーウスが説明を買って出てくれる。

 神殿文官の管轄なのかもね。


 時空制御師の最愛。

 女性。アリッサ。

 最高位。

 私のことです、ええ。


 光《ライト》制御師の最愛。

 ヒルデブレヒト・プリンツェンツィング。

 男性。プリンツェンツィング公爵家末っ子。

 王都在住。

 一番の問題児。


魔《デビル》制御師の最愛。

 エルメントルート・リッベントロップ。

 女性。リッベントロップ侯爵家三女。

 王都在住。

 ヒルデブレヒトの恋人気取り。問題児その二。


 火《ファイヤー》制御師の最愛。

 フランツィスカ。

 女性。元ハンマーシュミット伯爵家長女。

 地方在住。

 苦労人の不憫属性。


 水《ウォーター》制御師の最愛。

 メルヒオール・ハルツェンブッシュ。

 男性。ハルツェンブッシュ子爵家末っ子。

 王都在住。

 聖水(神殿未認可、効果皆無)販売人。問題児その三。


 土《アース》制御師の最愛。

 ジルヴェスター。

 男性。平民。

 他国在住。

 農民たちから敬愛されている。


 風《ウインド》制御師の最愛。

 ヘルミーナ。

 女性。平民。

 他国在住。

 女海賊として有名。


 雷《サンダー》制御師の最愛。

 イルメントラウト・ハイデンライヒ。

 女性。ハイデンライヒ公爵家次女。

 他国在住。

 歴戦の猛者。


 氷《アイス》制御師の最愛。

ヴェンデリン・ピュットリンゲン。

 男性。ピュットリンゲン男爵家嫡男。

 他国在住。

 氷菓子を楽しんでいる者。


 無《ナイン》制御師の最愛。

 カミル。

 男性。平民。

 他国在住。

 歴史に耽溺している研究者。


 闇制御師の最愛と聖制御師の最愛は、現在存在しない。


 ……この国って最愛の生息率が高くない?

そして問題児も多過ぎ。


「……問題の起こしすぎで、称号が剥奪されることはあるのかしら?」


「文献では確認できましたがのぅ。滅多にあることではないようですじゃ」


「偽聖水販売人とか、神殿でどうにかできる気がするけれど?」


「手順を踏んで牢に入れても、何時の間にか出てしまうのですよ。困ったものです」


「制御師さんたちに物申すことは?」


 可能ですよ、私なら。

 やりましょうか?


「そうなの。うーん。迷うなぁ……」


「最愛様? どうかなさいましたかのぅ」


「ええ、夫が他の制御師さんに、物申すことができるって……」


「か、可能であれば是非お願い申し上げとうございます!」


「次期王としても、御助力を賜れれば、有り難とうございます!」


 フュルヒテゴットとローザリンデの食いつきが凄かった。

 酷い迷惑を被っているのだろう。


「どんな処分がいいのかしら?」


「称号の剥奪をお願いしたいのですが……難しいですかのぅ」


 簡単ですよ。

 私の方が上位ですので。


 さらっと言ってのける夫が格好良い。

 惚れ直してしまいそう!


 何時でも惚れ直してくださいね。


「こほん! 簡単だそうです。完全な上位関係ができているみたいなので。あとはそう……迷惑の度合いが酷ければ、より言いやすいのではないでしょうか」


 ええ、そうですね。

 ……確認しましたけれど、三人ともがそれぞれ直接ではありませんが殺人を犯しています。

 他にも多くの犯罪に手を染めていますから、剥奪は容易です。

 自分が全能者にでもなったつもりなのでしょうか。

 間抜けさ加減は、私が見ても不愉快です。


「本当に酷いのです! 死者まで出ております! 犯罪者として一応裁かれるのですが、今までは納得のいく罰が与えられなかったのですよ」


 大切な人が悪いことをしたら、贖わせるのが、真実の愛なんじゃないかなぁ……。

 夫ならきっと一緒に贖ってくれると思う。

 勿論夫が罪を犯したら、一緒に背負う心づもりもあるし。


「まとめた書類はありますか? あとは主人が断罪を申し渡すなら、私もその場にいたいのですが叶いますか?」


「書類はすぐに持たせますぞ、マテーウス!」


「はい。少々お待ちくださいませ」


 頭を下げたマテーウスはキビキビとした足取りで部屋を出て行く。


「断罪の場には……万が一を考えると御遠慮申し上げたいのですが……」


 私も同じですよ、麻莉彩。


「はぁ。主人にも反対されました。では、断罪の前に会うことは? 隠れてでもいいです。できれば素の彼らが知りたいですね」


 最後の一線で、救える慈悲を与えられるのか、見極めたいのだ。


「……フュルヒテゴット様、ローザリンデ様、如何いたしましょう」


「そこまで最愛様が望まれるのであれば、護衛を万全にした上で、場を整えましょうかのぅ」


「そうですわね。私も同席いたしますわ。最愛様の断罪であれば王族は必要でしょう」


 許可は下りた。

 称号剥奪は決定だろう。

 その後の生活は、高位の者による庇護がなければ叶うまい。

 やり過ぎているのであれば、生家は彼らを切り捨てるであろうから。


 許可が下りたので、私はベールを上げて穏やかに微笑んだ。


 フュルヒテゴットが目を見開き、カールハインツは剣を手放してしまいそうになって慌てている。


 そんなサービスは不必要ですよ!

 これ以上、人を誑さないでくださいね!


 夫のお小言にも、同じ微笑で流しておいた。

 


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