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俺は、久しぶりに夢を見た。夢を見るほど、深く眠った。
それは、俺が生まれた日の夢だった。
その夢は、ただ永遠とも言えるほどに広がる静寂の中に響く重い鉄の音と、吹雪き続けるその場所で俺は生まれた。
視界はまだボヤケていて、辺り一面白銀だという事しか分からなかった。
一番初めに思った事は何だったか…。
そうだ、思い出した。
「俺、生まれたんだ…」
ただそれだけだった。
喜びやら、驚きやら、そんなものは何一つ無かった。
今の俺よりも、感情が薄く、正直全てがどうでも良いような気さえしていた。
少し時間が経って、よく見えるようになると、目の前に人が、いや、ドールが立っていた。
そのドールは、鎧をきて、鉄の剣を持っていた。
そのドールは、俺と同じぐらいだから、2m超えの身長で、無表情のまま俺を見下ろしていた。
鋭く光る剣には、少しばかりの“赤”がこびりついていた。
ーービチャッ
そんな音を立てて剣についていた“赤”は白銀の雪に染み込んで広げ、鋭い鉄の剣は鞘に収められた。
「お前、ドールだろ?名前は?」
そのドールは座り込んでいた俺に手を差し伸べながら尋ねてきた。
その声はどこか機械的だったが、底知れない優しさと強さがあった。
俺はその優しそうな手を取った。
見た目ほど冷たくなくて、どこまでも温かくて優しい手だった。
俺はグッと引っ張り上げられ、フワフワした白銀の雪の上に立った。
「ありがとう。俺は、主炎だ。その筈…」
ドールの血のような赤い瞳を見つめ、俺は名乗った。
「xa、そうか…。俺は主炎帝。この国の現役ドールであり、ロシア帝国様のドールだ。よろしくな、我が弟よ」
その話し方にはどこか皇族のような威厳も、俺の兄としての優しさも含まれているような気がした。
その時、吹雪いていた雪がさらに強くなった。
いくらコートを着ていようがさすがに寒いと思ってしまうほど、目も開けられないほどに。