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#シリアス
「これだけ人が多いとな。よし…はぐれないように繋いどこーぜ」
「……っ」
あまりにも自然な、義務感さえ感じさせない口調。
けれど、繋がれた手から伝わってくるのは、彼自身の高い体温と、力強い鼓動だった。
指先から熱が伝播し、脳がショートしそうになる。
「ぅ、うん。ありがとう」
結局、彼の手を振り払うことなんて、僕には到底できなかった。
「そろそろ、花火始まるな」
夜空を仰ぎ見ながら、天馬くんが呟く。
「よく見える場所があるんだけど。行く?」
「え……そんなところ、あるの?」
「ん。秘密の穴場ってやつ」
繋いだ手はそのままに、彼は僕を誘導してくれた。
辿り着いたのは、喧騒から少し離れた小さな丘の上。
そこには古びたベンチがひとつだけ置かれていて、視界を遮るもののない夜空が広がっていた。
「わぁ……」
感嘆の声が漏れた、まさにその時
────ドォンッ!!
お腹の底に響くような轟音と共に、漆黒のキャンバスに巨大な大輪が咲いた。
赤、青、金、緑。
極彩色の光が夜を塗り替え、重力に従ってしだれ落ち、そして儚く消えていく。
「……綺麗…」
僕は言葉を失い、空を見上げ続けた。
隣に座る天馬くんの横顔も、次々と変わる花火の光に照らされている。
真剣な瞳、少しだけ開いた唇。
その美しさに、心臓がまた大きく鳴った。
ふとした拍子に、ベンチの上で手が触れ合う。
「……っ」
どきりとして、反射的に手を引っ込めようとした時だった。
背後の茂みで、急に大きな物音が鳴り響いた。
「っ!?」
驚いた拍子にバランスを崩し、僕は反射的に目の前の支えを求めてしまった。
「わ、っ……!」
そのまま天馬くんにしがみつく形になり──
さらにはその勢いのまま。
どさっ。
ベンチの上に、彼を押し倒すような形で覆いかぶさってしまった。
「……っ!?!?」
数秒間、世界から音が消え、時が止まった。
近い。
視界のすべてが、天馬くんの瞳で埋め尽くされる。
互いの浴衣越しに伝わってくる、激しい体温と心音。
「ご、ごめ…っ!すぐ、どくから……!!」
しかし、その瞬間
ギュッ、と。
逃げようとする僕の手首が、彼の手によって掴まれた。
「……え」
天馬くんは仰向けのまま、僕をじっと見つめていた。
打ち上がる花火の極彩色が、彼の潤んだ瞳の中に万華鏡のように映り込んでいる。
そのまま彼は、困ったように、けれどひどく甘く笑った。
「……なぁ。なんかこの体勢…エロくね?」
「〜〜〜っっ!!? な、何言って……っ!!」
頭から火が出るかと思った。
「ははっ、水瀬顔真っ赤。花火より赤いんじゃね?」
茶化すような笑い声。
けれど、僕の手首を掴むその指先は
ひどく熱く、そして壊れ物を扱うように優しかった。
降り注ぐ光の破片と、止まない轟音の中。
繋がれた手首から伝わる彼の鼓動だけが、やけに鮮明に僕の心根を震わせていた。
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