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おかしい。
今日、この時間に帰ってくるはずの仲間が帰ってこない。
待っても待っても時間が過ぎるばかりだ。
「…ぺいんとさん、まさかトラゾーさんに何かあったんじゃ…」
不安げなしにがみくんに首を振る。
「あいつがそんなヘマするとは思えねぇけど…ただ、相手もかなり頭の回る奴だからな…」
時々送られていた暗号化された手紙。
はたから見れば、友人に向かって送られた仕事は順調だという内容に見える。
主人はとても良くしてくれる、支給品も揃っていて働きやすい。
ここでならやっていけそうだ。
あの男は完全な黒だ、証拠も揃えた。
今日、帰る。
予め色々言葉を取り決めていた俺らは、その内容に不確かな推測が確証に変わった。
「…あの野郎、トラゾーに何かしてたら許さねぇ」
「今すぐ行きましょう。じゃないと…」
「ぺいんと、しにがみくん」
黙っていたクロノアさんが口を開いた。
「今回は俺だけで行かせてくれないかな」
静かなその声に、完全にブチ切れてることが窺えた。
「でも…クロノアさんにまで何かあったら…」
心配な声を上げるしにがみくんに笑いかけるクロノアさん。
「大丈夫だよ。…それに、2人にはあんま見せたくないことすると思うから」
「え?」
「どういう…?」
隠密向きな動きをするクロノアさんはあまり派手な殺り方はしない。
尋問も手短に終わらせて、早々に捕虜は消してしまうから。
そもそも捕まえた奴らに対して何の情もないクロノアさんは殺すことに躊躇いがない。
だから普段は言葉巧みに情報を引き出し、必要なくなれば脳天を撃ち抜いて殺す。
トラゾーにクソみたいなことをしようとしていた変態野郎にもどういう殺り方をしたのかまでは俺は知らない。
見せたくない、とその時も言っていた。
「…とにかく、今すぐ向かう。もし何かあったら連絡入れるね」
そう言って早足に部屋を出て行った。
「…クロノアさん、ガチギレでしたね」
いつもの穏やかで優しげな瞳には殺意しかない険のある色しかしていなかった。
「そもそもトラゾーを行かせること最後まで反対してたもんな…」
トラゾーが説得し頼み込んで、クロノアさんが折れたのだが。
「胸騒ぎがする…」
「無事でいてくださいよ…トラゾーさん…」