テラーノベル
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『嗚呼、川はこんなにも気持ちいい』
私はいつものように入水をしていた。
入水といっても自殺ではない。
一人で自殺なんて古いのだから。
これはただ単に川を流れているだけなのだ。
そう、まだ自殺はしない。
私には心中すると心から決めた人がいるのだから。
「おい、また自殺か?懲りないな、お前も」
「太宰」
『ありがとうございます。乱歩さん。』
「何がだ?」
『濡れた体を乾かしてくれたり、服を貸してくれたり…』
「別に気にするな」
『気にしますよ、』
「じゃあお菓子でも買ってきてよ。それでいいでしょ。」
『分かりました!』
これが私の想い人。
名は、江戸川乱歩。26歳だ。
絵に描いたような綺麗な翡翠の瞳。
うまれつき頭が良いうえに天才のさらに上の頭脳を持ち合わせている。
いつかこの人と心中したいものだ。
「ご苦労〜」
『ラムネも買ってきました!』
「お、今日はなかなか気が利くじゃないか〜」
『ふふ、』
「笑い方気持ち悪い」
『酷いです〜』
『……乱歩さんは自殺しようとは思わないんですか?』
「僕はお前のような自殺志願者じゃないんだ。社長もいるし、楽しいうちは自殺しようとは思わない。」
『そうですか、』
乱歩さんはまたそう、社長と口に出す。
私は?
私といても楽しくないんですか?
「逆になんでお前は自殺したがるんだ?」
『ん〜考えたこともないですね』
「お前はいつも明るく振舞っているが、僕には余裕が無さそうにみえる。」
『…』
『乱歩さんは、余裕が無いのは良くないとお考えで?』
「そうじゃあない。だが、決して余裕があるのがいいわけでも、悪い訳でもない。」
「ただ、生き急ぐな。」
『……分かりました!』
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