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瀬名 紫陽花
鬼宮です‼️🫧🪄
スタジオの空気は独特だった。白い背景。
眩しい照明。
静かに並ぶ機材。
紫陽花はその中央に立ちながら、自分の手が震えていることに気づいていた。
新人モデルとして初めての単独撮影。
何度も練習したはずなのに、いざ本番になると頭が真っ白になる。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
穏やかな声が聞こえた。
カメラを肩に掛けた玲奈が近づいてくる。
今日の担当写真家だった。
「緊張してません」
反射的に答える。
玲奈は一瞬だけ黙り、
「嘘だね」
と言った。
図星だった。
紫陽花は思わず視線を逸らす。
玲奈は小さく笑う。
「初めて?」
「はい」
「なら仕方ないか」
そう言うと、玲奈はカメラを脇に置いた。
「じゃあ、おまじないしよう」
「おまじない?」
紫陽花は眉をひそめる。
玲奈は悪戯っぽく微笑んだ。
「効くんだよ、これ」
「絶対嘘ですよね」
「さあ?」
その曖昧な返事に呆れていると、玲奈が少しだけ距離を詰めてくる。
近い。
思わず身構える。
玲奈は首元の辺りを見つめながら、
「大丈夫」
とだけ言った。
その声は不思議なくらい落ち着いていた。
「失敗してもいい」
「……」
「上手くできなくてもいい」
玲奈は優しく笑う。
「私がちゃんと撮るから」
その言葉に、紫陽花の肩から少し力が抜けた。
初対面のはずなのに。
なぜか信じてみようと思えた。
撮影が始まる。
最初はぎこちなかった。
視線も定まらない。
ポーズも不自然だった。
それでも玲奈は急かさない。
「いいよ」
「そのまま」
「少しだけ顔を上げてみようか」
一つひとつ丁寧に導いてくれる。
気づけば紫陽花は、カメラを怖いと思わなくなっていた。
カシャ。
シャッターが鳴る。
玲奈がモニターを確認し、満足そうに頷いた。
「ほら」
画面を見せられる。
そこには知らない自分がいた。
少し不安そうで。
少し頼りなくて。
けれど確かに美しかった。
「これが……私?」
「うん」
玲奈は迷いなく答える。
「私には最初からこう見えてた」
胸が少しだけ熱くなった。
撮影が終わる頃には、夕日が窓を染めていた。
機材を片付ける玲奈が、小さな箱を差し出す。
「初撮影記念」
中には黒いチョーカーが入っていた。
シンプルなデザイン。
けれど不思議と目を引く。
「私に?」
「うん」
玲奈は笑う。
「似合うと思うから」
紫陽花は少し迷いながら首に着けた。
鏡の中の自分は、少しだけ自信を持って見えた。
「似合う?」
そう尋ねると、
玲奈はすぐに答えた。
「すごく」
その一言が嬉しくて。
紫陽花はそっとチョーカーに触れる。
また撮ってほしい。
またこの人に会いたい。
そんな気持ちが胸の奥で静かに芽生えていた。
コメント
1件
え〜!!めっちゃいい話やん…😭💕 モデル初心者の紫陽花ちゃんが、写真家の玲奈さんに「大丈夫」って何度も言ってもらえるの、心に沁みる…。おまじないとかチョーカーのエピソードも、距離感が絶妙でドキドキしたよ! まだ第1話なのに、このあとの2人の関係が気になりすぎる…🌸 また読みたい!お疲れ様、祈りと呪いさん✨