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【能力者名】栗毛色あるは
【能力名】 わたしのR
《友好型》
【能力】 自殺衝動を吸い取る能力
【以下、細菌達の記録】
「もうやだカタツムリになりたい……。」
自らの頭上に紫色の雨を降らせながら梅雨曇蓮司ちゃんは言った。
私、栗毛色あるはは蓮司ちゃんのバケツ一杯分の自殺衝動を 《わたしのR》で吸い取りながら彼女の話を聞いていた。
「もうやだー….。こないだの悪鬼退治で全然いいとこなかったし 全校生徒に下着姿晒すし…..まじで
じゃんねの野郎ゆ•る•せ•ねぇッ…….!!」
泣いたり怒ったり忙しい奴だな、と私は
思った。
窓を見ると蓮司ちゃんと同じように悪鬼退治で出落ちし全校生徒に下着姿を晒した嘘月村真ちゃんが能力《ライアーダンサー》で1000人に増やした
自分と鬼ごっこをしてた。
いいよな、人生楽しそうで。
「あるはちゃん。話したらちょっと楽になったかも。ありがと。」
自殺衝動が消え、頭の紫色の雨がなくなった
蓮司ちゃんはそう言って教室へ戻っていった。
【細菌達の補足】
梅雨曇蓮司ちゃんはその後調子に乗った黒小場じゃんねをコテンパンにわからせるイベント雑草狩りを
開きタイマンでじゃんねをボコボコに
してわからせた。
その後米津高校の女子達の間ではやらかした男子 (主に黒小場じゃんね)を女子の能力者達でボッコボコにするイベント雑草狩りが定期的に開かれるようになった。
【補足説明終わり】
今度は一年生の独絵転々が私の前に現れた。
こないだ悪鬼退治の英雄として持て囃されている転々が一体私に どんな相談があるのだろうか?
独絵転々は椅子に座った。
「もうおしまいアルーッ!!!じゃんねにお姉ちゃんがチャイニーズ•マカロンさんってVtuberと餡まんが好きって聞いたアル…..。だからがんばって手作りでコスプレして餡まんも手作りで丁寧にこしあんにしてお姉ちゃんに渡したら三日ぐらい口聞いてもらえなくなったアルー!!!なんでぇぇぇ !!??」
そう言って転々は机に突っ伏してギャン泣きした。
私はこの子のこともお姉さんのこともまるで
知らないけどこの子はもしかしたらものすごいアホなのかもしれない。
私は転々のコップ一杯分くらいの自殺衝動を吸いながらメロンパンを齧った。
「話したらなんか楽になったアル。ありがとネ……。」
ものすごくションボリした顔でお礼を言い転々は去っていった。
私は一人っ子だから分かんないけどああいう
妹がいたらきっと可愛いんだろうな。
欲しいとは思わないけど。
そうやっていつも通り私は私の席の前に並ぶ生徒達の自殺衝動を次々吸っていった。
そして自殺衝動とメロンパンでパンパンになったおなかで眠たい午後の授業を受けた。
私にとってはこれが日常なのだ。
死にたいやつらのどうでもいい愚痴を聞くのも、おなかの中が死にたい気持ちでいっぱいなのも、私にとってはごくありふれた日常なのだった。
放課後、私は屋上にやってきた。米津高校の
屋上には鍵がかかってない。
雑すぎるだろ色々と…..。クソ田舎の高校だからしゃーないか。
私は時々、こうして屋上に足を運ぶ。
別に今自殺したいわけじゃない。
ちょっと外の空気を吸いたかっただけだ。
(そう言えば、そろそろ父親の命日だっけな……。)
ふと、そんなことを考えていた。
父親が自殺した理由を、私は知らない。
知っていれば何か変わっただろうか?
もしあの時《わたしのR》があれば父親は
自殺しなかったのだろうか?
その答えを私が知ることはない。
「シリアーッス!!!シリアスブレイカー参上!!!!
シリアス展開は私が破壊するッッ!!!!….って
あるはじゃないか?どうしたんだそんなシリアスな顔をして!!??」
私のヒーローシリアスブレイカー様が
空を飛んでやってきた。
すごいなぁシリアスブレイカー様は。
私がどうしようもない時にいつも駆けつけてくれるんだもの。
「あっ、あるは!!??何故泣くんだ!!!??どこか具合でも悪いのかッ!!!??」
シリアスブレイカー様はそう言ってオロオロした。
「いえ、違うんです。あはは….ダメですね私。」
私はハンカチで涙を拭いた。
私はシリアスブレイカー様にいつか聞いて
みたいことがあった。
「シリアスブレイカー様ってどうしてヒーローやってるんですか?」
シリアスブレイカー様は即答した。
「シリアス展開を破壊するためだ!!!シリアス展開は親の仇みたいなものだ!!!親だけじゃない!!!妹と幼馴染みとメイドと先生と先輩と後輩とエトセトラエトセトラの仇だッ!!!だから
私はシリアス展開を破壊するッッ!!!!」
「なんだそりゃ。」
私はそう言って笑った。
シリアスブレイカー様、貴方はバカだ。
そこが好き。
私は今まで誰にも話さなかった腹の中を話すことにした。
シリアスブレイカー様になら話せるような気がした。
「私、お父さん自殺したんです。ちっちゃい時。そんでお母さんが自殺しようとして止めたくて能力が発動したんです。メチャキツでした。その時の《わたしのR》は制御不能型で四六時中ずっと誰かの自殺衝動を吸ってたから。」
「シリアス…..。」
シリアスブレイカー様は真面目な顔で私の話を聴いていた。
「今はある程度能力をコントロールできるようになったんですけど正直クッソしんどいです。自殺衝動吸っても吸ってもきりがないし私、人と話すのとか相槌の仕方とか全然分かんないから カウンセラーとか向いてないです。正直今だって消えてしまいたい…..!!!!」
あれ、私こんなこと言いたかったんじゃないのになぁ。
私ほんと、しゃべるの下手だなぁ。
シリアスブレイカー様は叫んだ。
「《ブリキノダンス》!!!!」
そう言ってシリアスブレイカー様は翼の生えた鋼鉄の身体に変身し、私の身体を掴んで
空を飛んだ。
「えっ!!??ちょっ!!!シリアスブレイカー様!!!??」
「他に話したいことはあるかぁぁぁあるはぁぁぁ!!!!!」
猛スピードで空を飛びながらシリアスブレイカー様が言った。
今なら腹の中を全部ぶちまけれる気がした。
「こんなクソ能力いらなかった!!!!!!!!!!
もっとましな能力が欲しかった!!!!!!!!
私だって姉ヶ崎みたいな可愛い顔に生まれたかった!!!!!!!!
おっぱいもEカップくらい欲しかった!!!!!
死にたいし消えてしまいたいけど私が死んだら困る人がいるから死ねない!!!!!!!!
どうしたらいいか分かんない!!!!!!!!」
「シリアーッス!!!!!シリアスシリアスシリアス…..シリアーッス!!!!」
シリアスブレイカー様は猛スピードで飛びながら時々旋回した。めちゃくちゃ怖いんですけど!!!???落ちたら死んじゃうんですけどっっっ!!!???
この人やっぱりバカなんじゃないか!!???
もういいや。全部言いたいこと言ってから
死のう。
「好きですッッ!!!!!」
「シリアスッッ!!!!????」
シリアスブレイカー様がびっくりして私を放してしまった。
「えっ!!???きゃぁあああああ!!!!!!!???」
嘘でしょ私こんなギャグみたいな死に方
すんの!!???
さすがに嫌なんですけど!!!????
「《エンヴィーキャットウォーク》。」
ふわっと私の身体が宙に浮かぶような感覚がした。
私は気づくと米津高校の知り合いの女子
猫又嫉妬にお姫様だっこされていた。
猫又ちゃんは私を抱き抱えてふわりと着地
した。
「びっっくりしたよーー。気分転換に路地裏歩いてたら空からあるはちゃんが落ちてくのが見えたんだもん…..!!!よかった、無事で!!!」
そう言って猫又ちゃんは私を抱き締めた。
なんかすごくいい匂いがした。
「へ、あ、あざす…….?」
私は動揺して変な口調になった。
「あるはーッ!!!??大丈夫か!!!!???すまないッッ
ほんっとうにすまないッッ!!!!!」
シリアスブレイカー様がジャンピング土下座をした。
初めて見た。ジャンピング土下座する人。
「……あー、私はお散歩の途中だから….。
またね、あるはちゃん。」
猫又ちゃんはそう言ってビュンッとものすごいスピードでどこかへと消えてしまった。
やっぱり猫又ちゃんめちゃくちゃ強いんじゃないかな….。
「あるは、さっきの話なんだが!!???」
「ハッハイ!!!???」
声が裏返った。しにたい。
「もし勘違いだったらシリアスに申し訳ないがさっきのは….その……。」
シリアスブレイカー様の全身が真っ赤になっていた。
「あ……えと…..やっぱり迷惑でしたよね…..。」
終わった……。
「俺も好きだッッ!!!付き合ってください!!!!」
終わってなかった!!!!!
これ走馬灯とか夢じゃないよね!!!???
死ぬ間際に見る夢とかじゃないよね!!!???
「シリアス?なんでほっぺをつねってるんだ
??」
シリアスブレイカー様が困惑した顔で
私を見た。
ほっぺも痛かったしこれ現実なんだ…..。
いいのかな?私、こんな幸せで。
「わ、私からも…..よろしくお願いします。」
こうして、私とシリアスブレイカー様は
付き合うことになった。
その日は心臓がバクバクと煩くてよく眠れなかった。
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)