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…
結局あの後何もなかった訳だが今俺はりょうちゃんの運転する車で何処かへと向かっている
「何処行ってんの?」
と聞いても
「着いてからのお楽しみだよ!」
と笑顔ではぐらかされた
助手席で揺られ景色をぼんやり見る
景色が都会の街並みからだんだんと緑が増えてきた
田舎に向かっているんだなって思った
…
そういやあの後 若井が急に正気を取り戻して終了したんだけど
なんで俺はあの時目を閉じたんだろう
突っぱねようと思えば出来たはずなのに
その日の晩は色々考えすぎて全然眠れなかった
ずっと考えてたけどやっぱり答えは出てこなかった
はぁ…
俺どうしたんだろ
おかしいな…
「元貴、今日はコンタクトなんだね」
りょうちゃんに声をかけられ我にかえる
そう、いつもの黒縁メガネじゃなくコンタクトだ
あー
だって
「デートって聞いたから…」
そう
なんかそうらしい
あの出来事があった次の日俺が大あくびしながらスタジオに入ると りょうちゃんと若井が待ち構えていた
昨日の今日ということもあり 俺は一瞬ドキッとしたが 2人は俺に手招きをすると一室へと向かった
狭い空間に 2人は仲良く並ぶと俺に向かって
「ごめん!」
と頭を深々と下げる
「元貴の事も考えないで本っ当にごめん!」
と、りょうちゃんが言う
「俺も暴走してごめん!」
と、若井が言うとりょうちゃんが
「…暴走?」
「え、いや…」
りょうちゃんが若井を睨んでいる
ああ、暴走…
暴走したって自覚あんのか
2人には色々言いたい事はあるけど…
「びっくりしたけどもういいよ」
俺がそう言うと 2人の表情がパッと明るくなる
面倒なことはもういい
そう、もうこれでいつも通りの俺たちに戻る
変わりなく…
「それでさ」
りょうちゃんが口を開く
「その…若井とも話したんだけど元貴にはどっちが好きか決めて欲しいなって思って」
え
「だからさ」
若井が言う
「俺たちがそれぞれプラン立てるからデートに付き合ってくんないかなー」
「なー」
りょうちゃんも口を揃える
突然の申し出で俺は言葉を詰まらせた
でもまあそれで2人が納得するなら
「まあいいよ」
2人はおおーっと言わんばかりに小さく拍手をする
まあ選ぶか選ばないかは自由だしって思ってた
「俺が元貴と行きたかった所はふれあい広場だよー」
1時間程のドライブを終え広い駐車場に車を停めるとりょうちゃんはそう言った
どうやらりょうちゃん流のデートプランは動物と触れ合えるとこって事みたいだ
なんともらしいプラン
「よいしょっと」
りょうちゃんは後部座席から大きなリュックを取り出し背負う
なにが入ってんだろう
俺は不思議な顔をしているとりょうちゃんはにっこり笑い
「内緒だよ」
と俺の手を握り歩く
りょうちゃんは優しい
笑顔を絶やさない
気遣いが凄い
そして俺の癒し
だから甘えたくなる
俺ってすげーわがままだから
だから一緒にいて本当に安心する
受付でチケットを購入し園に入ると色んな動物がいた
はいってすぐの所に柵越しにヤギがいるのがわかった
「ヤギさんにご飯あげれるってー」
とはしゃいでるりょうちゃんを見てつい俺も笑顔になってしまう
備えつけの自販機で人参を購入し柵の中に入ると腰を下ろし早速ヤギに差し出す
「うわぁ、可愛いぃ」
りょうちゃんはもぐもぐ食べているヤギに夢中だ
俺はそんな夢中になってるりょうちゃんに声を掛けた
「ねえ、りょうちゃん」
「なにー」
「なんで俺の事好きって思ってくれてんの?」
「んー」
なんで俺みたいな奴好きって言ってくれたのか気になってた
りょうちゃんは少し考えると
「好きに理由はないよ!元貴!」
と言って人参を差し出された
ヤギの後に羊やうさぎにエミュー、馬にゴーカートにもボートにも乗ってしかも歩きまくって(広すぎる!)遊び疲れた
こんなに屋外で体動かしたのは久々だった
いつも室内にこもり切りだもんな
「今日は付き合ってくれてありがとうね」
りょうちゃんはそう言ってくれたけど逆に俺がお礼を言いたいくらいだ
素直に楽しかったし面白かった
「俺こそありがとう」
俺の言葉にりょうちゃんはにっこり笑う
そうそうあの大荷物の正体はりょうちゃんのお手製の弁当達だった
レジャーシートに大きな水筒、紙コップにウエットティッシュに座布団…お弁当にはおにぎりや唐揚げ、卵焼きにブロッコリー、たこさんウィンナーと定番おかずが詰まっていた
レジャーシートを広げ美味しく頂いた訳だがそういう気遣いもさすがなんだよな
いっぱい遊んだせいで外が薄暗くなっていく
明日は絶対筋肉痛だろうな…
そんな事を考えつつ助手席に乗って揺られていると睡魔が襲ってくる
車の振動がなんとも心地いい…
助手席の元貴に目を見やるとシートにもたれ寝ていた
今日いっぱいはしゃいでたもんなあ…
しっかりしているようで幼いとこがいっぱいあって
本当に可愛いんだよなあ…
俺は脇道に逸れてだだっ広い道の駅の駐車場の端っこに車を停めると元貴を見る
「…俺にそんなに無防備でいいの?」
俺はいっぱい好きって言ったよ?
もう忘れちゃったのかなあ
…返事はあるわけがない
だってぐっすり眠っているから
「襲っちゃうよ…元貴?」
俺はシートベルトを外し身を乗り出すと元貴の瞼にキスをした
20241124