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番外編36『主様誘拐事件』中編
その日の夜――。
『こんなに美味しいパン久しぶりに食べた…もぐもぐっ。』
『ふふ、良かったわね。』
《早く帰りたいな……。ママとパパに会いたい。》
(売られても尚、両親のことを思ってる…健気な子達だな……。)
『麻里衣お姉ちゃんは食べないの?』
『私は大丈夫よ。リリちゃん達で食べていいからね。』
『でも…。』
『私は大人だから、多少の空腹くらい我慢出来るわ。でも貴方達は子供だからお腹が空いたら安心して眠れないわ。』
私は子供達の頭を撫でる。
『分かった…。』
『ラムリ、貴方も食べなさい。』
『主様が口にしていないのに僕が食べることなんて出来ません。』
『ラムリ…。いざとなったら頼りになるのは貴方の運動神経よ。貴方がちゃんと動けないと私も困るの。だからほら、口開けて。』
『っ…。』
僕は渋々パンを口にする。
『いい子、ラムリ。』
(ムーにみんなに伝えるようにしたからきっともう助けに来る。それまで時間を稼がなきゃ。この子達を守る為に。)
ご飯を食べ終えた後、子供達は眠りにつく。
交渉して渡された毛布を子供達にかける。
『…おやすみなさい。』
(夜のうちに誰かが来たら安心して眠りにもつけないわ…。)
『ラムリ、貴方も寝てて大丈夫だからね。』
『主様はなんで…いつも自分を犠牲にするんですか。』
『ラムリ……?』
『いつも、僕達や百合菜様を守る為に自分を犠牲にしてるじゃないですか。』
『……。』
『その瞳の力を隠してた時も、夏、旅行に行った時も、いつも僕達に何か遠慮して…っ。』
《僕達は主様を守りたいのに…。》
『ラムリ……。それはね、私が百合菜の姉であり、みんなの主様だからよ。姉は妹を守るのが役目。そして主は時に執事を守るのが勤め。その為なら私はどれだけでも身体を張れるわ。』
『主様…。』
『ふふっ。この子達を守るためなら…私はこの瞳を捧げるわ。惜しくもないもの。』
『っ……。』
『ほら、目を閉じて、おやすみ。ラムリ。』
数時間後――。
森の中。
『ここが、人身売買の貴族がいる…。』
『でっけぇ屋敷だな…。』
『ここに主様が……。』
『やっぱり見張りは着いてるな。よし、最初の作戦を実行しよう。』
ハナマルとユーハンはフードを被り見張りに近付く。
『何者だ、お前達。』
『今日入ったばかりの奴を俺達に売ってくれよ。』
『は?お前達貴族か?』
『どうやら瞳に美しい宝石を宿す瞳の女性と、悪魔執事を捕らえたと聞いていますよ。』
『上に確認を取る、ここで待っていろ。』
牢屋にて。
『お前らが売られるのも時間の問題だ。その子供達はまとめて買い手が着いた。良かったな、ここから出られるぞ。最悪な形でな。』
『そんなことさせないわ。』
『お前は直々我々が買ってやる。瞳を取り出す前に可愛がってやるからな。』
『っ…。』
バタバタ…!ガチャ!
『ボス!門の前に悪魔執事とその女を買いたいという貴族が!』
『は?そんな話は来てないが…。』
(!みんなだ、みんなが来てくれたんだ!)
慌てた様子で部下が入ってくる。
『ボス!大変です!』
『今度は何だ!』
『貴族と名乗るその不振人物により護衛の40名が再起不能です!』
『なっ!何故だ!チッ。その2人の正体を暴け!』
ガッシャーンっ!ジャキンッ!ジャキンッ!
外で剣の飛び交う音がする。
『ぎゃぁぁぁ!!』
俺達はフードを取る。
『あ、悪魔執事です!!』
『はぁ、ハナマルさん。作戦通りになんで実行できないんですか?』
『主様が捕えられてるって思ったら身体が勝手に動いたんだよ。ユーハンだって声のほとんど再起不能にしてんじゃん。1人くらいは喋れる状態にして情報を聞くはずなのに。』
『この人身売買のボスから話を聞ければ構いませんから。』
隠れている執事達。
『やっぱり正面突破ですか。やれやれ。では、次の作戦に移行しましょう。こうなることを想定した作戦ですから。』
『くそ、大事な商品を取られたら溜まったもんじゃない。』
『ボス、どうしますか。』
『悪魔執事を制圧する。応援を呼べ。』
『は、はい!』
男達は部屋から出ていく。
『今のうちにここから出なきゃね。足も縛れば良かったのに馬鹿なヤツらね。』
『みんな、僕達の仲間が来てくれたからもう大丈夫だよ。』
『ここから出られるの?』
『えぇ。でもその前にはこの縛られてるのを解かないとね。』
私は周りに使えそうなものがないか探す。
『ガラス片……。!ラムリ、これ持てる?』
『え?は、はい。』
『まず私のを切ってくれる?』
『は、はい!』
ガラス片をラムリに持たせ、縄を切る。
パラッ…。
『ありがとう、みんなのも今切るからね。』
数分後。
『縄はこれで解けたけど…。問題はどうやって牢屋から出るか…。』
私は牢屋の隙間から手を出して鍵を確認する。
『南京錠なのね…。なにか針金みたいなのがあれば……。』
『お姉ちゃん……これ、使えないかな?』
リリちゃんはヘアピンを渡す。
『ヘアピン…?』
『ママとパパから貰ったものだけどもう要らない。』
『リリちゃん……。ありがとう。使わせてもらうわね。』
『うん。』
ガチャガチャ…ッ。ガシャンッ!
ギィィ…。
『開いた……。』
『リリお姉ちゃん、僕たち出られるの?』
『うん、出られるよ。お姉ちゃん達のおかげでね。』
『みんな、私達からはぐれちゃダメよ。ラムリはこの子達をお願い。私はこの子達を連れていくから。』
『はい!』
フラッ…。
『っ!』
私その場に座り込む。
『主様!\麻里衣お姉ちゃん!』
『だ、大丈夫よ。少し立ちくらみしただけだから。』
(何も食べてない上に睡眠不足じゃ仕方ないわね…でも、ここからこの子達を出す為には仕方ない…。あと少しの辛抱だから…っ。)
私達は牢屋から出て外を目指した。
次回後編に続く!
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