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第14話【花畑の夜明けと、宿りし超魔力】
ハウメア湖を包んでいた夜の帳が、ゆっくりと白んでいく。
朝靄の中にきらめく花畑の真ん中で、アイラナはレミエルの逞しい腕に抱かれたまま、深い幸福感の中で目を覚ました。
「ん……、っ……」
身じろぎをすると、一晩中彼女を片時も離さず抱きしめ、甘やかし続けてくれたレミエルが、愛おしそうに目を細めてアイラナの額にキスをした。
薄紫色の瞳の流し目が、朝の光を浴びてひどく優しい。
「おはよう、僕の可愛いアイラナ。……本当に、一晩中ずっと可愛かったよ」
「――っ、朝からまたそんなことを……!」
昨夜、あれほど涙を流して本心をぶつけ合い、身体も心も、そしてお互いの膨大な「魔力」のすべてを狂おしいほどに交わし合ったのだ。
思い出して再び顔を真っ赤にするアイラナだったが、ふと、自身の身体の奥底から湧き上がる
『異変』
に気づき、動きを止めた。
(……な、に、これ……?)
おかしい。
魔皇帝であるアイラナの体内には、普段なら冷徹な暗黒魔力が満ちているはずだ。
それなのに今、その中心で――。
アイラナの魔力と、レミエルから注ぎ込まれた純白の神聖魔力が、まるで一つの生命の渦を巻くように優しく、けれど凄まじい密度で結合を始めていた。
魔族の最高位である魔皇帝は、強い愛情を伴う完璧な魔力の交錯によって、純粋な
『魔力交配』
で子を成すことができる特殊な生態を持つ。
(まさか……あの、一晩中、レミエルが限界まで私を満たし続けたせいで……っ)
ドクン、と体内から、まだ極小ながらも、恐ろしいほどのポテンシャルを秘めた
《新しい命の鼓動(超魔力)》
がはっきりと伝わってくる。
「……赤ちゃん、出来ちゃった……?」
「え?」
ぽつりと呟いたアイラナの言葉に、さすがの元最強大天使も固まった。
アイラナは自身のまだ平らなお腹に震える手を当て、羞恥と、信じられないほどの愛おしさと、そしてこれから始まる大混乱(2日目の会議)への恐怖で、レッドダイヤモンドの瞳を限界まで見開いた。
「レミエル、お前……っ、一晩中加減をせずに私を甘やかすから……! 私の体内で、お前との子が、成形され始めてしまっているぞ……!」
「あはは……え? 本当に……?」
いつも余裕たっぷりで鬼畜ドSなレミエルが、人生で初めて、完全に声を裏返して狼狽した。
だが、すぐにアイラナのお腹へとそっと手を伸ばし、そこに宿る
「自分と彼女の魔力の結晶」
を感じ取ると、その美しい顔をこれ以上ないほどの狂喜と独占欲で歪ませた。
「……すごいや、本当に僕と君の赤ちゃんがここにいる。ゼウスへの神罰(人口100万人)をクリアした途端に、今度は僕たちの最高の
『1人』
ができちゃうなんてさ……。あーあ、どうしよう。嬉しすぎて、僕、頭がおかしくなりそうだよ」
「喜んでいる場合か! 今日は2日目の不可侵条約の会議があるのだぞ!? この、世界を揺るがすほどの『神魔の超魔力』を宿したまま、どうやって臣下たちの前に立てというのだ……っ!」
21
ぽんぽんず
激しく動揺して赤面するアイラナと、父親になる喜びと独占欲で目を輝かせるレミエル。
人間界と魔界の平和の条約を結ぶはずの2日目の会議は、別の意味で、歴史上最もスリリングで大波乱なものになろうとしていた。
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