テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
79
#💛💜
愛日
1
ラウールと宇宙科学館の前で合流する。
🖤「急に来てもらって悪い」
🤍「いいんだよー。阿部ちゃんの一大事だもん、放っておけないよ」
それはSnowManみんなの共通認識だろうと思う。
一緒に科学館の中に入り、プラネタリウムの受付に向かった。
🖤「すみません」
「申し訳ございません、本日の上映は終了しております」
🖤「あ、そうじゃなくて」
「あら? 先ほどいらしてましたよね」
🖤「あ、はい」
「どうされました?」
🤍「あのー。僕たち、特務調査局っていうんですけど、ちょっとお話、聞いてもいいですか?」
「特務調査局、ですか? あっ、もしかして、あの噂……」
🤍「知ってるんですか?」
「プラネタリウムの関係者なら、多分知ってると思いますよ。うちではないですけど、上映中に変な声が聞こえた、とか、映像が歪んだ、とか」
🤍「ここのプラネタリウムでは、そういう現象は起きてない?」
「今のところは」
🖤「あの。中、ちょっと調べさせてもらってもいいですか? 見るだけで、傷つけたりはしないんで」
「もう上映もありませんから、いいですよ。どうぞ」
受付の女性は快く了承し、鍵を持ってプラネタリウムの入口の方に向かい、鍵を開けてくれた。中に通され、再びその場所に足を踏み入れた。
「では、終わったら声かけて下さいね」
🤍「ありがとうございます!」
出て行く女性を見送って、ラウールはルーペを取り出して辺りを見回す。座席の間も、機材の裏側も、天井のプロジェクターも、隅々まで見て回っている。
その間、目黒は阿部と一緒に来た時に座ったソファに腰かけた。
そして、右隣の阿部の席を見る。
あんなに楽しそうにしていたのに。笑顔ではしゃぐ阿部の姿が幻のように見える。そして次に見えたのは、不安そうな阿部。瞳を揺らし、こちらを見てきた阿部は怖がっていたように思う。今にも倒れてしまいそうだった。
ぎゅっと、拳を握り締める。
隣にいたのに、何も気づけなかった。それが、悔しくてたまらない。
🤍「めめ」
🖤「なにか分かった?」
🤍「ううん。異能の痕跡は見つけられなかったよ。阿部ちゃんが言ってたみたいに、電波みたいなものに乗ってたら見つけるのは難しいからね」
🖤「そうなんだ……」
🤍「さっきの受付のお姉さん、他のプラネタリウムで不思議な現象が起こったって言ってたからさ、そこに行ってみようよ。もっと話、聞けるかもしれないしさ」
🖤「……そうだな」
それから、実際に不思議な現象が起こったプラネタリウムの場所を教えてもらってそこに行き、話を聞いてみると、ここだけではなく他にも幾つか同じような現象が起きているという事が判明した。
二人で回るには時間が足りない為、深澤と阿部以外で手分けして話を聞きに行く事にする。
少しでも情報は多い方がいいから。
早く移動できる佐久間が一番多く回り、皆が事務所に戻ってきたのは21時半だった。
💜「おかえりー」
🩷「つっかれたー」
ソファに足を延ばして寝転がっている深澤と、その向かいにあるソファにダイブした佐久間。
💛「佐久間が一番、あちこち移動してたからな」
🩷「そうだよー」
💚「佐久間ごめん、無理させちゃって……」
🩷「無理だってー? ちっちっちっ。阿部ちゃん、佐久間さんの体力をなめてもらっちゃー困るよ。ぜーんぜん平気! ほらっ!」
ぴょんとソファから軽く降り立つと、その場でブレイクダンスをする佐久間。ぐるんぐるんと回り、最後は床に肘をついて寝転がりながら回り切った。
💙「おま、あぶねーだろ!」
🩷「ねー、ちょー元気!」
💜「佐久間ー。あとで反省文な」
🩷「えっ、なんで?!」
💚「ふはっ」
思わず声を漏らして笑う阿部に、皆の表情が和らぐ。
良かった。阿部もまだ元気だ、と。
💜「じゃー、聞いてきた話を教えてもらえる?」
そこから話し始めたが、被害内容はどこも同じようなものだった。映像が乱れる、ぼやける、ぐにゃぐにゃになる。ナレーションとは違う声が聞こえる、耳鳴りがした、ノイズが聴こえた。気付いたら何も見えなくなった、真っ暗になった。
それは、阿部の話と同じような現象ばかりだ。
そして共通することはまだある。
❤️「どれも、アンドロメダの神話の時に起こってるね」
🤍「あと、被害を訴えてるのは女性ばかりだったよ」
🧡「じゃあ、阿部ちゃんは何でなん?」
💚「それは俺も問い質したい」
聞きたい、や、知りたい、ではなく、問い質したいというところに、阿部の怒りのようなものが見えた気がした。
🧡「あとあれよな……なんやっけ」
🤍「アンドロメダの呪いでしょ」
🧡「そうそう、それそれ!」
🤍「アンドロメダの話の時に起こるから、そう言われてるんだって」
💚「呪いって……アンドロメダは生贄に捧げられたけど、結局はペルセウスに助けられてるのに」
🤍「うーん。だけど、被害は女性ばっかりだし、その話の時だし、アンドロメダは自分が生贄にされたのが嫌だったから、他の女性を身代わりにしようとしてる、みたいな」
💚「それどこ情報?」
❤️「割とみんな言ってたね」
💛「アンドロメダの呪いは、どのプラネタリウムでも聞いたわ」
つまり、怪奇現象はアンドロメダが自分の身代わりを捜す為のもので、それを各地のプラネタリウムで行っている、と。
💜「とにかく、今はそれ以上のことはなさそうか。阿部ちゃんは? 調べてみてどうだったの?」
💚「んー。夕星って、金星のことなんだよね。《宵の明星-よいのみょうじょう-》ともいうし、逢魔時と時間帯も一致してるから現れるなら夕方っていうのはほぼ確定でいいと思う」
💙「じゃあ、夕方だけ警戒してればいいってことか?」
💚「ただ、あの言い方が妙だなと思って」
🩷「言い方?」
🧡「妙?」
💚「逢魔時って、魔物や妖怪に出会う時間って意味なんだよね。なんで、宵じゃなくてわざわざ逢魔時って言ったんだろ……」
全員が、阿部の言葉に目をぱちくりさせる。
🩷「なんでそこが疑問なのかぜんっぜんわっかんないんだけど」
🧡「どこに引っかかる要素があるん?」
💙「意味わかんねー」
🖤「阿部ちゃん、やっぱ頭いいな」
💜「めめ、なんかその発言、違う気がする」
💛「中学から一緒だけど、俺もこういう阿部はわかんね」
🤍「僕はちょーっと分かるよ。ちょーっとね」
❤️「阿部についてくのは大変だね」
その辺りで今日はお開きにし、阿部を一人にするのは危険だと判断して深澤の家に泊まる事になった。
急なお泊りで用意はなかったけれど、服のサイズはあまり変わらないので寝る時のTシャツとハーフパンツだけ借りることにした。
💚「おじゃましまーす」
💜「適当に座ってて」
思いの外、整頓されている室内。広いリビングに置かれたソファに腰かけると、阿部の前に来たふーちゃんの体が紫色のオーラに包まれ、オーラが消えると猫の姿になっていた。
耳の先から飛び出ている飾り毛、ふさふさとした長いしっぽ、スマートな逆三角形の顔立ちから、恐らくノルウェージャンフォレストキャットいう種類だろう。大型の猫で、阿部の膝で収まりきるだろうかと思うほどの大きさだ。
触ると、ふわっと軽く滑らかな肌触りで、とても心地いい。
💚「はあ……癒される……」
普段の鳥の姿のふーちゃんも撫でると気持ちよかったけれど、これはまた別の感触だ。一生撫でていられるかもしれない。
💜「阿部ちゃん、お風呂先に入っちゃってー……って、寝そう?」
💚「んー。まだ大丈夫ー」
💜「あー。ふーちゃん、その猫ダメだって。起き上がれなくなっちゃう」
💚「たまになるの?」
💜「そ。テレビ見ててさ、どんな触り心地なんだろって思ったらふーちゃんが変化しちゃって。けっこう、気に入っちゃったらしい」
💚「そうなんだー」
💜「阿部ちゃん、マジで寝ちゃうから今の内にお風呂入っちゃって! シャワーだけだから!」
うとうととし始めている阿部の手を引っ張ってなんとかお風呂に連れて行き、着替えとバスタオルを置いておく。
交代で風呂に入り、ドライヤーをかけあいっこし、寝る準備が整ったところでふーちゃんがまたその姿を変えた。
広いリビングいっぱいの大きさをしたオオカミがそこにいて。
💚「え……オオカミ……? ってか、むしろフェンリル?」
💜「お。よく分かったね」
💚「ふっか、ふーちゃんにゲーム見せたでしょ」
💜「そう。こういうのもなれるのかなってね」
💚「佐久間とか康二とか見たら興奮しそうだ」
💜「これで、空想上の生き物でもなれるって証明されたね」
💚「見たものに姿を変えられるのって凄いよね。大きさを変えられる事にもビックリだったけど」
💜「まー、俺が天才だから?」
💚「凄いのはふーちゃんであってふっかじゃない」
💜「うおっ、バッサリいくなぁ」
💚「で、なんでフェンリル?」
💜「ふーちゃん、ベッド」
💚「へ?」
リビングのカーペットに置かれた細長いビーズクッションを囲むように体を丸めて寝転がるふーちゃん。
巨大なしっぽがぱたぱたと揺れている。
💜「阿部ちゃんは、あの真ん中で寝てね」
💚「ベッドって……ふーちゃんが?」
💜「そ。阿部ちゃんのこと、物理的に守ってくれるから」
💚「いやいやいやいや。はあ?」
💜「大丈夫だよ。その為のクッションだから。あれめっちゃ気持ちいいよ」
💚「誰も硬さの心配とかしてないから。え、ホントに?」
💜「たまに照とか佐久間もそこで寝てるよ」
💚「いや、うん。二人とも好きそうだけど。ふーちゃんは寝れるの?」
💜「しっぽパタパタしてるじゃん。ほら、タオルケット持ってって。早くしないと、ふーちゃんも寝れないし」
💚「え、そうなの? じゃあ……」
促されるままに、持たされたタオルケットを引きずっていき、ビーズクッションに横になる。
すると、回したしっぽで器用に阿部の乗ったビーズクッションを自分の方に引き寄せ、ふさふさの毛が頬に触れた。
💚「あ、ヤバい、寝れそう……」
💜「でしょ。温かいし気持ちいいし、めっちゃいいんだよ」
💚「……ありがと……ふーちゃん……おやすみ……」
声が聞こえなくなってすぐに、規則正しい寝息が聞こえてくる。
それからすぐに、電気を消して深澤も眠りについた。
気が付くと阿部は、暗い空間に立っていた。
💚「あー……すっごい嫌な予感しかしない」
スゥっと暗闇から現れたのは夕星。
💚「やっぱりぃ……もー、なんでー」
「そなた……何かとてつもなく失礼なことを考えてないか?」
💚「考えるよ! 考えるに決まってるじゃん! ってか、何で? ここプラネタリウムじゃないんだけど!」
「そのように声を荒げてどうしたのだ?」
💚「なんかもう、腹立つ方が勝ったの。それにこんな理不尽なことされて、普通に接する義理もないし」
「ほう……なかなか面白い姫だな」
💚「その姫ってやめて。俺、男だし」
ツンとそっぽを向く。
「ふむ。では、こちらを振り向かせてやろう。楽しみが増えたな」
💚「俺は楽しくないっ」
「その時が待ち遠しいな」
💚「他人の話を聞かない系なの?」
「ではな。我が姫」
💚「だーかーらーっ!」
もう一度、抗議しようと思った時、瞬きしただけで景色が切り替わった。
遮光カーテンから微かにもれている光。
ふわふわの感触と見慣れない天井に、阿部はむくりと体を起こした。未だ気持ちよさそうに眠っているふーちゃんを横目に、はぁーっと深くため息をつく。
💚「最悪……」
その言葉は、誰に届くことなく消えていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!