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スマートフォンから漏れる「人気モデル・アイカ、転落死」のニュース速報
私はそれを、何度も、何度もリピート再生する。
地面に叩きつけられたあいつの人生を想像して
枯れ果てたはずの涙の代わりに、喉の奥からヒタヒタと黒い悦びが溢れ出してきた。
(…一人目)
翌日。私は真っ黒な喪服に身を包み、愛華の葬儀会場へと向かった。
もちろん、声を失った「可哀想な被害者」の顔をして。
会場の入り口には、マスコミが群がっている。
その中心にいたのは、美波だった。
彼女はカメラの前でハンカチをあて、震える声でインタビューに答えている。
「愛華は、私にとって本当の妹のような存在でした…まだ、信じられなくて……」
実に完璧な演技だ。
でも、私は見た。
カメラが別の方向を向いた一瞬、彼女が自分の指先を見て、ネイルの剥げを忌々しそうにチェックしたのを。
「あら、栞さん……? 来てくれたのね」
私に気づいた美波が、わざとらしく大きな声を出す。
周囲の視線が集まる。
「声を失った同級生」を気遣う
「心優しい私」を演出するための道具。それが今の私の役割だ。
「大変だったわね、筆談の準備は大丈夫? 喉、まだ治らないの?」
美波の言葉は、一見優しい。
けれど、その目は笑っていた。
『あんたは一生、私に這いつくばって生きていくのよ』
言葉の裏に隠された明確なマウント。
その時、横からエリカと沙織が割り込んできた。
エリカはシャネルの最新作のバッグをこれ見よがしに腕にかけ
沙織はエリート秘書らしい隙のない仕草で眼鏡を上げる。
「ちょっと美波、泣きすぎてメイク崩れてるわよ。愛華の葬儀なんだから、もっと綺麗にしてあげないと失礼じゃない」
「そうね。愛華も、安っぽい顔で見送られたくないでしょうし。…あ、栞さん、その喪服、どこの? 生地が少し……薄くない?」
葬儀の場ですら、彼女たちはマウントを取らずにはいられない。
誰の悲しみが一番深いか。
誰の持ち物が一番高級か。
死んだ愛華すら、自分たちを飾るためのアクセサリーに過ぎない。
私は俯き、震える手でスマホを取り出した。
彼女たちには、私が悲しみに耐えかねて震えているように見えただろう。
だが、私はアプリ『パンドラ』を開いていた。
新しい通知が届いている。
【次の指令】
ターゲット:エリカ(医者の妻)
弱点:夫の家庭内暴力と、彼女が隠している「学歴詐称」の証拠。
実行方法:彼女が最も誇りにしている「完璧な家庭」を、彼女自身の手で壊させなさい。
私は顔を上げ、エリカに視線を送った。
何も知らないエリカは
「可哀想な栞さん」に向かって、勝ち誇ったような慈悲の微笑みを浮かべている。
(……笑ってられるのも、今のうちよ)
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深冬芽以