コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
屋上の扉に手をかける。
夏の蒸し暑い風が体を弾く
屋上のフェンスの前に立つ
靴を脱ぎかけた時
ぴちゃっ
水たまりを踏んでいた
歪んだ汚い水に自分の姿が映る
三つ編みをした女の子が先客だった
「ねぇ、やめなよ」
口をついて出ただけだった
ホントはどうでも良かった
ただ、なんだろ
先を越されるのが
なんとなく癪だった
話を聞いてみた
三つ編みの子はこう語った
「運命の人だった。どうしても……愛されたかった」
ふざけんな
「ふざけるな!」
「そんなことで?私の先を越そうっていうの!?」
「欲しいものが手に入らない?」
「奪われたこともないくせに!!」
「……話したら、楽になった」
三つ編みの子はそう言って消えていった
今日も屋上のフェンスの前に立つ
今日こそはと靴を脱ぎかけた
ぴちゃっ
水たまりを踏んでいた
歪んだ汚い水に自分の姿が映る
背の低い女の子がいた
「……ねぇ」
また、声をかけてしまった
背の低い子は語った
「クラスの孤独が、無視されて、奪われて……居場所がない…」
ふざけんな
「ふざけるな!」
「そんなことで?私の先を越そうっていうの!?」
「それでもさ、家じゃ愛されて愛されて!!」
「暖かくて美味しいご飯があるんでしょ!?」
「……お腹が空いたな」
背の低い子はそう言って消えていった
そうやって何人かに声を掛けて、追い払って
わた自身の痛みは
誰にも
言えないままだけど
ぴちゃっ
水たまりを踏んでいた
歪んだ汚い水に自分の姿が映る
「……!」
初めて見つけた
わたしと似た子
何人めかに出会った
黄色いカーディガンの子
「家に帰るたびに増え続ける痣を、消し去ってしまうためにここに来たの」
口をついて出ただけだった
ホントはどうでも良かった
思ってもいないことをすらすらと
でも、なんでかな
また声を掛けてしまった
「ねぇ……やめてよ…!!」
あぁ、どうしよう
わたしは止められない
わたしには止める資格なんて……
「………それでもさ、ここ……ここからは消えてよ」
「君を見ていると」
苦しいんだ
最後の言葉は無かったことにして飲み込んだ
「今日はやめておくよ」
黄色いカーディガンの子はそう言って
目を伏せながら消えた
水たまりの水面が揺れていたけど
知らないふりをした
屋上の扉に手をかける
夏だというのに涼しくて快い風が
体を包み込んでくれる
屋上のフェンスの前に立つ
ぴちゃっ
今日は水たまりの音がせずに
誰もいなかった
誰にも邪魔されない
「……邪魔してもくれないしな」
フェンスを乗り越える
黄色いカーディガンは脱いで
三つ編みは解いて
背の低いわたしは
今から
飛びます。
バン
「………!?」
白くて無機質な部屋で目が覚める
わたし、なにしてたっけ……?
「あ、そうだ。飛び降りたんだ」
あぁ、残念だ
「邪魔……しちゃったな」
ベットから降りて病室を出る
人気の少ない階段を登る
屋上の扉が見えた
その扉の前に立ち
わたしは………