人は、思いの外簡単に死ぬ。
運命は、決まっている。
それなら、教えてくれればよかったのに。
暗闇に光が差し込んだ。
重いまぶたを無理やり開く。
この光の加減は…
「「やっべ遅刻じゃん!?」」
叫んだまでは良かったが、俺が今寝ている所はいつも寝坊するあの自室では無かった。
は?ここどこだよ。
ベットから飛び降りようとした。
「った!」
手首がチクリと痛んだ。感覚のした方へ目を向けると、針が刺さっていて、そこから管が伸びている。
なんで腕に点滴が…?
思考を巡らせていると、横から声が聞こえた。
「…涼…?」
この声は…親友の雷羨だ。
「起きた…!
良かった…。元気?…じゃないか…」
いつもと違い、なんだかオドオドしている。
「あのさ、これ、何?」
「…覚えて、ない…?」
いや、全く。何も。
「お前、倒れたんだよ、急に。」
「…は?」
全く記憶にない。思い当たる節もない。記憶喪失ってやつか…?いやでも昨日までの記憶はあるし…..
「…大丈夫?」
「あ、うん。」
「…でも、良かった。死ななくて。」
…え、俺死にそうだったの?
驚いていると、雷羨が急に立ち上がった。
「俺、医者呼んでくる」
声をかける暇もなく、雷羨は病室から出ていってしまった。
…暇だな。何が起きてるかも分からないし。
ふと、窓を見た。
紫色の何かが浮いている。
人だ。
…人?
…ヒト!?
3、4度見しても、やっぱり人だ。多分女子。
深い紫色のセーラー服に、髪もこれまた紫色。当たり前とでも言うように美しく宙に浮く姿は、見た目とは裏腹に天使を連想させた。
しかも、こちらを見ている。
え、幻覚?やっぱ俺死ぬの?
いや、流石にないだろ。
というか信じたくない。
俺は5度見目をした。
顔を上げると、窓のガラスを超えて
“人”が目と鼻の先にいた。
「ぅわぇ!?」
思わずすっごい変な声が出た。
人-多分女子-は俺の変な声に動じることなく、少し身を引いた。
無言だ。
….気まずい。何か喋ろう。
「…誰?」
無言。
最悪の一言だったかもしれない。
次回へ続く
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