テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
271
M.S
114
藍
20
車掌『ノックは3回、と言ったはずですよ』
車掌さんは鎌を持ったままにこやかにそう言った。その笑顔は微笑んだような暖かいものではなく、仮面を取ってつけたようなどこか人間味のない冷たい笑みだった。
車掌『まぁ、今回は怪我もないようですし、不問ということにさせていただきます。
さ、そんなところに突っ立っていないで戻りまよ。仕事が始まってしまいますから』
僕「………ぁ…はい…」
車掌さんは足早に前の車両に戻り始めた。その後を僕も追う。
僕よりも小柄で華奢なのに、大きな鎌を軽々と振っていたなんて考えるとこの人が何者なのか本当に分からなくなってくる。僕よりも明らかに強くて人間離れどころか本当に人間じゃないような気がしてくる。
車掌『さて。では改めて業務を始めたいのですが、新人として2人も入ってきたので、業務の開始が遅れるのはあまり好ましくないのですが、改めて自己紹介をしましょう。
私はこの列車の車掌です。特に名前はありませんので、お好きに呼んでいただいて結構です。次、透骨さんお願いしますね』
透骨「…俺…は、透骨です。一応警備員です。あんまり仕事はしてないですが…よろしくお願いします。次…は…」
透骨さんが口ごもって迷っていると玄が口を開いた
玄「はいはいはいはいっ!僕!僕!名前は玄で神様ッ!よろしく!」
自信満々で自己紹介?をして満足そうに可愛らしく口元を歪める玄を見ていると、なんだかさっきの緊張が一気に取れて心がふっと緩んだ。僕がボケっと玄の事を見てると車掌さんが声をかけてきた
車掌『最後は君ですよ?私はまだしもこのふたりは君の名前を知らないんですから』
僕「えっ…あ、僕…僕は…わた…る?渡だと…思い…ます、はい多分…。」
なんだか記憶が曖昧でろくに自己紹介が出来ない。なんでだろう
玄「ワタルか!いい名前だ!」
玄が僕の事を慰めて?くれたから少し気が楽になった
車掌『それでは、自己紹介も終わりましたので。業務を開始しましょう』
車掌さんの一言で一気にスイッチが入った。自分の名前なんてどうでも良くなるくらいには。
車掌『渡くんと玄様は定期的な後方車両の見回りをおねがしいます。最後尾の車両ですが、大切な資料が沢山入っていますので相当なことがなければ入らないように。透骨さんはいつも通り警備をお願いします。私は前方の車両に居ますので、何かあればこちらまで来てください。』
そう言って車掌さんは前方の車両に向かって歩いていった
コメント
1件
はい、読み終わりました! 第8話、ゾクッとするところがいいですね。車掌さんの「ノックは3回」の冷たい笑顔、あれがもう不気味で。透骨さんと玄くんの自己紹介もキャラ立ちしてて、特に「玄は神様」宣言で緊張がふっと緩んだ感じ、すごく好きです。肝心の主人公・渡さんの記憶が曖昧なのも気になりますね…。業務開始の合図で一気にスイッチが入る、そのメリハリが効いてて引き込まれました。続き、気になりますよ!