テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
りるら
196
耀聖(ようせい)
758
1,088
ジェニは二人で出かけたりするといつも人目を引く様な容姿の子だった、白いデイジーの花のように色白な彼女の髪は子猫の毛皮さながら細く、艶々でとてもかわいらしかった
一度フードコートなどでジェニと竜馬がクレープをベンチに座って食べていると、女子高生達がチラチラジェニを見て可愛い可愛いと騒いでいた
ガチャガチャマシーンをジェニが食い入るように見つめていると一度ならず小太りの中年男性がじりじりジェニに近寄って来ていたことがあった 咄嗟に竜馬がその中年の腕を掴んで言った
「さっき撮った写真を消せよ!おっさん!でないと今すぐ警察に連れてくぞ!」
と竜馬がすごむと中年はペコペコして竜馬が見届ける中、案の定スマホのジェニの画像を慌てて消去した
レジのおばさんは「なんてかわいい子かしら」とジェニを見て微笑んだ後、必ず竜馬をうさん臭い目で見るのだ、似ても似つかない竜馬とジェニを見て兄妹とみなすのは、あまりにも歳が離れすぎていた
良く考えると自分が小学生の少女を連れ回しているのも他人から見るとおかしいことも承知だった、竜馬は彼女の父親でもない、兄でもない、ましてや恋人でもなかった
リビングの横の和室に竜馬の部屋は当てがわれ、そこで毎日寝起きをしていた、時々夜になると竜馬はすべてが嫌になり、自分も夜の闇に包まれて消えてしまいたくなる時があった
一人で布団に潜っていると、この世に独りぼっちのように思えてしまう
もうすぐ自分はアメリカに発つ、その地にいったい何が待ち受けているのか見当もつかない・・・しかし茂雄おじさんと約束したように、必ず自分の足で立ち向かって生きてみせる
そう考えようとしても、夜になると不安がゆっくり鉄の足かせのごとく重く感じた・・・一人で生きていくことが一つの選択肢だとしたら他にどんな選択があるのだろう
誰かと恋に落ちて結婚し、家庭を作るにはあまりにも幼すぎる、かといって他の家庭に入り込めるはずもない
父と母に戻ってきてほしかった・・・竜馬の今の状況を救い出し助けてほしかった・・・母にぎゅっと抱きしめてもらってその胸で泣かせてもらいたかった・・・
身体を震わせ、竜馬は声を殺していつまでも泣いた、その時、スッと竜馬の和室のふすまが開いた、そこにはイチゴのパジャマを着たジェニが立っていた
グスッ・・・「ジ・・・ジェニちゃんっ!どうしたの?おトイレ?」
慌てて、竜馬が起き上がろうとすると、なんとジェニが竜馬の布団の中に入って来た
「おトイレは、もう行った」
ジェニは竜馬の横に寝そべり、小さな手を伸ばして、竜馬の目を覗き込んだ・・・
ジェニが使っているシトラスフラワーのシャンプーの匂いがした、竜馬も同じシャンプーを使っていたが、髪が長いジェニからはより多くの香りがした、二人は同じシャンプーの匂いに包まれた
「大きいお兄ちゃん、お手てつないで寝よう」
そう言うとジェニは、竜馬の手をギュッと握って眠りについてしまった、あどけない彼女の顔を見ていると、竜馬の胸や喉や頭の緊張が解けていき・・・やがてまた両目の端から涙がとめどもなく、こぼれ始めた・・・
握り締められた手は・・・小さいながらも温かくて・・・まるでこの世界に竜馬をギュッと引き止めているようだった・・・
彼女のように自分を慰めてくれる人はこの地球上にはどこにもいない・・・もう亡くなった父も、母でさえも彼女には及ばない
それから、時々二人は、こうして誰にも内緒で寝るのが好きになった、竜馬の来客用の布団にもぐって、二人で身を寄せ合って、手をつないで眠るのが何より幸せに感じた
竜馬が何よりこの子を必要としているように、この子も竜馬を必要としているのだと・・・慰め合うことが・・・今の二人には何より必要なことだと感じた
。 .:・.。. .。
アメリカ留学にむけて残り一週間・・・
一つでも多くの英単語を覚えないといけない竜馬の部屋に、ジェニは毎日押しかけた
ジェニは自分のためならいつだって時間を割いてくれる竜馬の注意を引きたくて、単語を勉強している所を邪魔したり、壊れたおもちゃを直してもらいに来たりした、それでも竜馬は信じがたい程の忍耐力で、可愛いジェニの相手をした
「大きいお兄ちゃん「ちゅー」しよ」
ジェニが唇を突き出して竜馬に言った、思春期の竜馬は頬を染めてジェニに言う
「いけません!そんな事は好き同士がすることなんだよ」
ジェニが純粋な熱い瞳で竜馬を見つめてくる・・・そんな時、竜馬の中に親密な感情が芽生え・・・少し不安になるぐらいの絆が結ばれたような気持ちになる
「あら、ジェニは大きいお兄ちゃんが大好き、結婚する、大きいお兄ちゃんのお嫁さんのなるのだから「ちゅー」しよ」
「ダメです」
「もー!何でー?(怒)」
ジェニは竜馬の膝に馬なりにまたがって、竜馬の頬に鼻をすりつけた、竜馬の体がビクッと引きつり、呼吸が止まった
竜馬はそのまま石にでもなったかのようにじっとしていた、ジェニは竜馬のおでこや顎に鼻をこすりつけ、彼の肌の感覚を味わった
二人はキスこそしていないが、数分間そのままで顔を近づけたままでいた
「約束よ!大きくなったらジェニをお嫁さんにしてね」
「わかった・・・」
「じぁ「ちゅー」して」
「それはダメ・・・」
本当にダメなんだろうか・・・このとんでもなく可愛い子にこれほどグイグイこられて何をダメだと自分は言っているのだろうか・・・
無意識に竜馬はジェニの頬に手を当て・・・親指で眉をそっと撫でた・・・産毛のような眉はとても柔らかだった
クラスの女子などといる時は、こんな気持ちにさえなったことがなかった、ジェニを求める気持ちは、他の誰かを求める気持ちとはまったく違っていた
じっとお互いの顔を見つめ合い・・・見とれて、二人とも我を忘れていたので、バタンッとリビングのドアが開いたのが聞こえても二人の反応は鈍かった
豊が帰って来たのだ、竜馬はさっとジェニから体を離し、テーブルに突っ伏して勉強しているフリをした
しかし、二人がいた空間の空気は、感情が濃く、よどんでいる気がした、豊は習い事のそろばんが入ったカバンをブラブラさせてリビングに入って来た
「おう!お前ら!ゲームするぞ!」
まるで無関心の豊に、正直竜馬は、ホッと胸をなでおろした
コメント
1件
星キラリさん、第134話読みました。 夜中に一人で泣いている竜馬のところへ、イチゴのパジャマを着たジェニが「お手てつないで寝よう」って入ってくるシーン、すごく良かったです。あの小さな手が「この世界に竜馬をギュッと引き止めている」っていう描写に胸がぎゅっとなりました。同じシャンプーの匂いに包まれて、慰め合うように眠る二人の関係性が、とても優しくて切なくて……。 それにしても、ジェニの「ちゅー」攻撃、竜馬が耐えるのが大変そうで微笑ましかったです(笑)続きが気になります!