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ー〇〇を励ます会ー
SixTONESとtimelesz が集まる。廉と付き合う前に〇〇が相談したメンバー達と。
個室居酒屋の丸テーブル。
〇〇は少し緊張しているけど、みんなの声を聞いて少しずつ落ち着いてくる。
風磨「じゃあ、今日は乾杯!〇〇のための会だから、思いっきり楽しもう」
〇〇「…うん」
涙をぬぐいながら、小さく笑う。
北斗「〇〇、大丈夫?」
〇〇「うん…ありがとう」
菊池「泣き顔見せるなよ」
佐藤「でも、泣いてもいいよ。今日は〇〇のための会だし」
松島「〇〇、最近忙しかったよね。仕事のこととか、話したいことある?」
〇〇「…うん、ちょっとだけ」
橋本「吐き出したいことがあれば、全部聞くよ」
樹「泣いても笑ってもいいし、無理しなくていいから」
〇〇は深呼吸して、少し話し始める。
〇〇「最近は仕事の方が優先になって、恋愛のことが後回しになってしまって…」
慎太郎「そっか、そりゃ気持ちが揺れるのも仕方ないよね」
髙地「でも、こうやって話してくれるだけで、僕らも安心する」
京本「辛いことは全部吐き出していいんだよ」
ジェシー「ここでは誰も否定しない」
風磨「そうだよ。今日は〇〇のための日だからね」
〇〇は少し笑う。
〇〇「ありがとう…みんな」
北斗「肩の力は抜いていいよ。少しでも楽になってほしい」
菊池がふと笑いながら言う。
菊池「そういえば、〇〇、もしかしたらすぐ次の恋、見つかるかもね」
〇〇「えっ…?」
一瞬驚いたけど、みんなの軽い笑い声に、少し顔が赤くなる。
佐藤「冗談だよ。でも、笑えるくらい元気になってほしいってこと」
松島「今日は〇〇のための時間だよ。思いっきり笑おう」
原「食べて、笑って、全部忘れちゃおう」
〇〇は深呼吸して、涙をぬぐい、少しずつ笑顔が増えていく。
胸の奥にまだ痛みはあるけど、仲間の温かさが心に染みる。
風磨「ほら、これが〇〇の居場所だよ」
北斗「〇〇が笑ってくれるの、みんな見たいんだ」
樹「だから今日は泣いても笑ってもいい」
慎太郎「全部受け止めるから」
髙地「肩の力は抜いて」
ジェシー「笑顔見せてよ、〇〇」
京本「泣いてもいいけど、最後は笑おう」
〇〇(心の中)
「まだ胸は痛いけど…一人じゃない」
夜は長く、食べて笑って話す。
仕事の話、思い出話、くだらない話も交えながら、和やかな時間が続く。
涙はまだ少し残るけど、孤独ではない。
〇〇は初めて、前に進む力を少しずつ感じる夜だった。
―――
オフの日のご飯会の翌朝。
〇〇はベッドで目を覚ます。
まだ胸の奥に少し痛みは残っているけど、昨夜の仲間の声や笑顔がふっと思い出される。
〇〇(心の中)
「昨日、みんなと話してよかった…一人じゃなかったんだ」
朝食を軽く済ませ、メールや連絡をチェックする。
廉の名前はまだ胸を締め付けるけど、焦りや不安は少し和らいでいる。
午前中は仕事の準備。
新しい撮影の台本に目を通しながら、集中する。
頭は仕事のことでいっぱいになるが、心は少し落ち着いている。
〇〇(心の中)
「仕事なら、気持ちを整理しながら前に進める」
昼休憩。
カフェでミルクティーを飲みながら、スマホを手に取る。
昨夜の写真やLINEを見返す。
みんなが笑顔で、自分を励ましてくれている写真。
〇〇(心の中)
「こうやって支えてくれる人がいる。私、一人じゃないんだ」
午後。
撮影スタジオへ。
現場ではいつもの笑顔を見せる〇〇。
自然体で、でも内側では少しずつ心を整えている。
スタッフ「〇〇さん、今日もよろしくお願いします」
〇〇「はい!頑張ります」
笑顔で返すと、スタッフの表情も和らぐ。
胸の奥の痛みは消えないけど、少しずつ前向きな力に変わっていく。
―――
数日後。
〇〇は同じグループのtimeleszメンバーとSixTONESにメッセージを送る。
〇〇「この前はありがとう。みんなのおかげで少し元気出た」
〇〇は返信を読みながら、自然に笑みがこぼれる。
胸の奥の痛みはまだあるけど、孤独じゃない。
―――
その夜、〇〇はベッドで日記をつける。
「まだ胸は痛いけど、少しずつ前に進めそう。仕事も頑張れる。私を支えてくれる仲間がいる。ありがとう。」
涙は出るけど、悲しみだけじゃない。
心の奥に少しずつ光が差し込む。
こうして〇〇は、励まし会の仲間たちの存在を胸に、別れの痛みを抱えながらも、少しずつ自分のペースで前向きに日常を取り戻していく。
そして、新しい恋にも、、、、
ーーーーーーーーーーー
北斗side
夜。北斗は一人、自宅のソファに沈む。
部屋は静かで、街の灯りがカーテン越しに差し込む。
目を閉じると、〇〇と廉の姿が頭に浮かぶ。
北斗(心の中)
「…やっぱり、別れたか」
「…やっとかもしれない。やっと、俺にチャンスが来るかもしれない」
胸の奥は痛い。悔しい気持ちと、やっと未来に可能性ができたという小さな嬉しさ。
〇〇と廉が付き合っていた時も、北斗はずっと傍で見守るだけだった。
その時は、羨ましさと切なさで胸が締め付けられた。
北斗(心の中)
「俺…ずっと、〇〇のこと好きだった」
「でも、俺は黙って待つしかできなかった」
「いつも、〇〇の笑顔をそばで見るだけで…それでいいと思っていた」
だけど、今は違う。
〇〇はもう独りだ。
未来はまだ白紙で、まだ間に合う。
心の奥で、わずかに胸が高鳴る。
北斗(心の中)
「もう一度、チャンスが来る」
「その時は…絶対に逃さない」
深呼吸をしながら、北斗は少し笑う。
悔しさ、切なさ、でもほんのわずかの嬉しさ。
胸の奥の複雑な感情が、逆に自分を前に進ませる力になる。
―――
数日後、北斗は風磨に連絡する。
北斗「風磨…〇〇のこと、やっぱり諦められない」
風磨「分かってる。でも、焦るな。タイミングは必ず来る」
北斗「…タイミングか」
北斗(心の中)
「その時が来たら、絶対に後悔しないように向き合う」
風磨「うん。今は無理に吹っ切る必要ない。ゆっくり準備しろ」
北斗はスマホを置き、天井を見上げる。
胸の痛みは消えないけど、ほんの少し、希望が見える。
北斗(心の中)
「〇〇が幸せならそれでいい…でも、俺もその未来にまた関われる」
小さく微笑む。
別れは辛くて最低だった。
でも、付き合う前からずっと好きだった〇〇に、もう一度向き合えるかもしれない。
そのことを思うと、胸が少しだけ熱くなる。
北斗(心の中)
「待つ。焦らずに。チャンスが来るその時まで」
静かな夜。
北斗はソファに沈みながらも、未来の小さな光を胸に抱く。
切なさの中に、ほんの少しの期待を感じながら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
別れてから、1ヶ月。
仕事は相変わらず忙しい。
撮影、取材、番組収録、移動。
笑うことも多いし、周りにはいつも仲間がいる。
でも、ふとした瞬間に胸の奥が重くなる。
〇〇side
楽屋のソファに座りながらスマホを見る。
通知は仕事の連絡ばかり。
前はこの時間、よく電話していた。
〇〇「今日さ、収録でね…」
電話越しに聞こえる笑い声。
廉「また天然出たんやろ?」
〇〇「出てない!」
廉「絶対出てる」
〇〇「出てないって!」
そんな会話が、普通にあった。
今は、ない。
〇〇はスマホを伏せる。
〇〇「…私が決めたんだよね」
忙しくて会えない。
すれ違う時間。
仕事が楽しくなっている自分。
〇〇「このまま続けたら…冷めるかもしれないって思った」
好きなのに、気持ちが変わるのが怖かった。
それなら、好きなまま終わった方がいい。
そう思って出した答えだった。
でも。
夜、ベッドに入ると必ず思う。
〇〇「…もう少し一緒にいたかった」
好きなのに別れる。
こんなに苦しいなんて思わなかった。
風磨やメンバーはたくさん笑わせてくれた。
ご飯にも連れていってくれた。
話もたくさん聞いてくれた。
元気にはなった。
でも。
〇〇「…まだ、残ってる」
胸の奥にある小さな痛み。
廉と見た映画。
一緒に歩いた夜の街。
帰り道の会話。
思い出すたびに胸が締め付けられる。
〇〇「未練…あるんだろうな」
小さく呟く。
好きだった。
今も、きっと。
〇〇「…会いたいな」
でも、その言葉は誰にも言えない。
静かな部屋で目を閉じる。
浮かぶのは、廉の笑顔だった。
廉side
仕事終わりの夜。
自宅のソファに座りながらテレビをつける。
でも内容は全然入ってこない。
廉「…はぁ」
小さくため息が漏れる。
別れてから1ヶ月。
時間はあっという間に過ぎた。
仕事は忙しい。
現場ではいつも通り。
冗談も言うし、笑う。
周りから見れば何も変わっていない。
でも。
帰ってくると急に静かになる。
前はよく電話していた。
廉「まだ起きてる?」
〇〇「起きてるよー!」
廉「今日な、撮影めっちゃ長かってん」
〇〇「お疲れ様!」
廉「そっちは?」
〇〇「今日ね、ちょっと天然出ちゃって…」
廉「やっぱりやん」
〇〇「ひどい!」
そんな時間が当たり前だった。
今はもう、ない。
廉はスマホを手に取る。
連絡先は消していない。
消せるわけがない。
廉「…俺、止めへんかったな」
別れるとき。
本当は引き止めたかった。
〇〇「冷めるのが怖い」
そう言った時の顔。
泣きそうだった。
だから。
廉「わかった」
そう言うしかなかった。
好きだからこそ、尊重した。
でも。
廉「…めっちゃ好きやったのにな」
いや、違う。
廉「今も好きやわ」
テレビの音だけが部屋に流れる。
スマホを見つめる。
連絡したい。
声が聞きたい。
会いたい。
でも、もう出来ない。
廉「悔しいな…」
好きなのに別れた。
お互い想ってるかもしれないのに。
それでも終わった。
廉は静かに目を閉じる。
浮かぶのは、やっぱり〇〇の笑顔だった。
ーーーーーーーーーーーー
それから数日が経った。
〇〇side
夜。
長かった1日の仕事が終わる。
収録、取材、移動、撮影。
朝からほとんど休む時間もなかった。
スタッフの声も少しずつ遠ざかっていく。
廊下の音も静かになっていく。
楽屋には、〇〇ひとり。
〇〇はソファに座り、ゆっくり息を吐く。
テーブルの上には台本、ペットボトル、スマホ。
今日も一日終わった。
〇〇「……疲れた」
小さく呟く。
でも嫌な疲れじゃない。
仕事は好きだ。
むしろ楽しい。
カメラの前に立つ時間も、
現場でみんなと作る空気も。
〇〇「仕事…好きなんだよね」
ぽつりと言う。
それは嘘じゃない。
忙しい毎日も、嫌じゃない。
むしろ充実している。
でも。
胸の奥に、何かが残っている。
〇〇はスマホを手に取る。
画面は真っ暗。
指が自然にある名前を探してしまう。
廉。
すぐに画面を閉じる。
〇〇「……ダメだって」
小さく笑う。
自分で別れを選んだのに。
〇〇「未練あるじゃん…」
目を伏せる。
あの日。
好きなのに別れた。
冷めていくのが怖かった。
忙しくて会えなくて。
このまま続けたら、きっと距離ができると思った。
〇〇「好きなまま終わりたかったんだよね…」
でも。
終わったあとで気づく。
〇〇「もっと…一緒にいたかった」
ぽろっ、と涙が落ちる。
気づいたときには、もう止まらなかった。
〇〇「会いたい…」
声が震える。
〇〇「廉…」
名前を口にした瞬間、涙が溢れる。
手で顔を覆う。
〇〇「好きなのに…」
肩が小さく震える。
〇〇「なんで別れたんだろ…」
楽屋は静かだ。
誰もいない。
だから、涙を隠す必要もない。
〇〇「……バカだな私」
涙を拭く。
でもまた流れる。
忙しい毎日。
笑っている時間。
仲間といる時間。
全部ちゃんと楽しい。
それでも。
夜、ひとりになると。
胸の奥にあるのは、やっぱり廉。
〇〇「…声聞きたいな」
スマホを見る。
連絡先はまだ消していない。
消せない。
指が少し動く。
でも、止まる。
〇〇「…ダメだよね」
別れたのは自分。
だから連絡する資格なんてない。
〇〇「…会いたい」
小さく呟く。
その言葉は、誰にも届かない。
静かな楽屋。
外ではスタッフの片付けの音が少しだけ聞こえる。
〇〇はソファに座ったまま、涙を拭く。
でも胸の奥の痛みは消えない。
好きなのに別れた。
だから、余計に苦しい。
〇〇は目を閉じる。
浮かぶのは、やっぱり。
廉の笑顔だった。
ーーーーー
北斗side
楽屋の廊下。
仕事がすべて終わり、人もほとんどいない静かな夜。
北斗は自分の楽屋へ戻ろうとしていた。
すると――
小さく、泣いている声が聞こえた。
北斗「……?」
声のする方を見る。
〇〇の楽屋。
北斗「……」
(まさか)
北斗は少しだけ迷って、ドアをノックする。
コンコン
返事はない。
でも中から、すすり泣く声だけが聞こえる。
北斗「……〇〇?」
ドアを少し開ける。
中を見ると――
ソファに座って顔を手で覆って泣いている〇〇がいた。
北斗「……おい。」
〇〇「……っ」
〇〇が驚いて顔を上げる。
目は真っ赤で、涙でぐしゃぐしゃだった。
〇〇「……北斗……?」
北斗「何してんの。」
〇〇「……」
北斗「そんな顔して。」
〇〇「……見ないで。」
北斗「無理。」
〇〇「……」
北斗はドアを閉めて、ゆっくり近くに来る。
北斗「……どうした。」
〇〇「……」
〇〇「……なんでもない。」
北斗「嘘つくなよ。」
〇〇「……」
北斗「なんでもない顔じゃない。」
〇〇「……」
また涙がこぼれる。
〇〇「……っ」
北斗「……」
北斗は少しだけ困った顔をする。
北斗「……廉?」
その名前を聞いた瞬間、〇〇の肩が震える。
北斗「……図星か。」
〇〇「……っ」
〇〇「……やっぱり……」
〇〇「……寂しい……」
北斗「……」
〇〇「……仕事忙しくて……」
〇〇「……会えなくて……」
〇〇「……このまま冷めていくのが怖くて……」
〇〇「……私から別れた……」
北斗「……」
〇〇「……でも」
〇〇「……好きなのに……」
〇〇「……っ」
〇〇「……好きなのに……」
〇〇「……なんで別れたんだろ……」
涙が止まらない。
〇〇「……会いたい……」
〇〇「……廉に……」
〇〇「……会いたい……」
北斗「……」
北斗は黙ってその姿を見ている。
胸が痛かった。
(俺の方が先に好きだったのに)
(ずっと好きなのに)
でも――
北斗は小さく息を吐く。
北斗「……おい。」
〇〇「……」
北斗「こっち来い。」
〇〇「……え?」
北斗「いいから。」
〇〇「……」
〇〇が少し近づく。
その瞬間――
北斗は腕を伸ばして、〇〇を抱きしめた。
〇〇「…え」
〇〇「……北斗?」
北斗「……」
〇〇の体が少し震えている。
北斗「……泣きすぎ。」
〇〇「……」
北斗「目、真っ赤。」
〇〇「……」
北斗「……そんな泣くなよ。」
〇〇「……っ」
北斗の胸に顔を押し付ける〇〇。
〇〇「……ごめん……」
北斗「何が。」
〇〇「……こんな……」
〇〇「……みっともないところ……」
北斗「別に。」
北斗「慣れてる。」
〇〇「……え?」
北斗「お前、昔から泣き虫だろ。」
〇〇「……そんなことない。」
北斗「ある。」
〇〇「ない……」
北斗「ある。」
少しだけ空気がやわらぐ。
でも〇〇はまた小さく泣く。
〇〇「……好きなのに……」
〇〇「……別れちゃった……」
北斗「……」
〇〇「……廉……」
その名前を聞いて、北斗は一瞬だけ目を閉じる。
胸が少し痛む。
でも腕は離さない。
北斗「……会えば。」
〇〇「……え」
北斗「会いたいんだろ。」
〇〇「……でも」
〇〇「……私から別れたし……」
北斗「だから?」
〇〇「……」
北斗「会いたいなら会えばいい。」
〇〇「……怖い。」
北斗「何が。」
〇〇「……廉が」
〇〇「…もう私のこと好きじゃなかったら……」
北斗「……」
北斗は少しだけ苦笑する。
北斗「それはない。」
〇〇「……なんで。」
北斗「分かるから。」
〇〇「……」
北斗「多分」
北斗「お前と同じこと考えてる。」
〇〇「……」
〇〇「……会いたい……」
北斗「うん。」
〇〇「……でも……」
北斗「……」
〇〇「……もう戻れなかったらどうしよう……」
北斗「……」
北斗は少しだけ〇〇の頭に手を置く。
北斗「その時は」
北斗「俺がいる。」
〇〇「……え?」
北斗「冗談笑笑」
〇〇「……」
北斗「……ほら。」
北斗「泣き止め。」
〇〇「……」
北斗「そんな顔してると」
北斗「廉に会った時びっくりされるぞ。」
〇〇「……」
〇〇は少しだけ笑う。
でも涙はまだ止まらない。
北斗はそれを見て、少しだけ優しく抱きしめ直した。
北斗「……ほんと」
北斗「放っておけないな笑」
(心の中)
北斗(俺の方が)
北斗(ずっと好きなんだけどな。)
北斗(……言わないけど。)
――――――
別れてから約2ヶ月。
お互い仕事はさらに忙しくなっていた。
ドラマ、映画、番組収録、撮影。
休みはほとんどない。
それでも――
どこか胸の奥には、ずっと残っているものがあった。
忘れようとしても、ふとした瞬間に思い出す。
同じ景色。
同じ店。
同じ映画。
そして、同じ人。
そんなある日。
大型特番の収録。
芸能人が何十人も集まる、大きなスタジオ。
収録前の控室エリア。
〇〇は台本を見ながら廊下を歩いていた。
〇〇「……」
スタッフの声。
出演者の笑い声。
忙しく動く現場。
その時。
向こうから歩いてくる人影。
〇〇「……」
一瞬で分かった。
廉だった。
廉も、同じタイミングで気づく。
2人の足が止まる。
数秒の沈黙。
別れてから初めて会う。
〇〇「……」
胸が少し苦しくなる。
でも逃げるわけにもいかない。
〇〇「…久しぶり」
廉「…久しぶりやな」
声は落ち着いていた。
でも、どこかぎこちない。
〇〇「…元気?」
廉「まあ…ぼちぼち」
〇〇「そっか」
また少し沈黙。
でも――
嫌な空気じゃない。
気まずいけど、懐かしい感じ。
廉が少し笑う。
廉「忙しそうやな」
〇〇「廉もでしょ」
廉「まあな」
〇〇「映画の宣伝とかもまだある?」
廉「ちょこちょこ」
〇〇「そっか」
ふと2人の目が合う。
その瞬間、2人とも少し笑う。
何かが少しだけ戻った気がした。
視聴者なら、きっと気づく。
まだ好きだなって。
でも――
それは口には出さない。
スタッフ「〇〇さんスタンバイお願いします!」
〇〇「はい!」
〇〇「じゃあ…また」
廉「おう」
〇〇は少し頭を下げて歩き出す。
廉はその背中を見る。
廉「……」
胸が少し痛む。
廉(やっぱり…)
廉(好きやな…)
でも、まだ言わない。
収録が始まり、数時間。
番組はまだ続いていた。
次の出番まで少し時間が空く。
出演者の待機スペース。
〇〇はソファに座り、スマホを見ていた。
その時。
隣に誰かが座る。
廉だった。
〇〇「……」
廉「空いてる?」
〇〇「うん」
少し距離を空けて座る。
でも、前より自然だった。
廉「元気そうやな」
〇〇「うん…そっちは?」
廉「まあな」
〇〇「忙しい?」
廉「忙しいな」
〇〇「だよね」
廉「そっちもやろ」
〇〇「うん」
少し笑う。
〇〇「最近休みある?」
廉「ほぼない」
〇〇「同じ」
廉「やっぱりな」
少し沈黙。
でも、別れた時の重たい空気はない。
むしろ――
落ち着いている。
廉「…ちゃんと寝てる?」
〇〇「寝てるよ」
廉「ほんま?」
〇〇「ほんと」
廉「怪しいな」
〇〇「失礼」
2人とも少し笑う。
その笑い方が、前と同じだった。
〇〇「…廉は?」
廉「ん?」
〇〇「ちゃんと寝てる?」
廉「まあ」
〇〇「絶対寝てないでしょ」
廉「なんでやねん」
〇〇「顔」
廉「ひど」
また笑う。
でも、その笑顔の奥に
少しだけ切なさがある。
廉「……」
廉「仕事、楽しい?」
〇〇「うん」
〇〇「楽しい」
廉「そっか」
〇〇「廉は?」
廉「まあ…楽しいな」
〇〇「そっか」
2人とも分かっている。
まだ何かが残っていること。
でも――
今は触れない。
スタッフ「次の収録5分後です!」
〇〇「はーい」
廉「ほな」
〇〇「うん」
立ち上がる2人。
〇〇「またね」
廉「また」
2人は別の方向へ歩いていく。
でも、少しだけ振り返る。
同じタイミングで。
目が合う。
そして、少しだけ笑う。
まだ復縁の空気はない。
でも――
確実に、何かは残っている。
ーーーーー
仕事終わりの夜。
事務所の廊下はもう静かだった。
〇〇は会議室で荷物をまとめている。
でも、手は止まりがち。
頭の中にはずっと廉のことが残っている。
好きなのに別れたこと。
正しかったのか。
まだ分からない。
その時。
コンコン。
ドアがノックされる。
〇〇「どうぞ」
ドアが開く。
北斗が顔を出す。
北斗「まだ帰ってないんだ」
〇〇「うん、今帰るところ」
北斗は部屋の中を少し見て、ドアにもたれる。
北斗「今日長かったな」
〇〇「長かった」
少し沈黙。
北斗は〇〇の顔を見て、少しだけ眉を動かす。
北斗「…疲れてる?」
〇〇「普通」
北斗「嘘」
〇〇「なんで」
北斗「顔」
〇〇は小さく笑う。
〇〇「そんな顔してる?」
北斗「してる」
少しの沈黙。
北斗はポケットに手を入れたまま言う。
北斗「メシ行く?」
〇〇「え?」
北斗「今から」
〇〇「急だね」
北斗「暇だから」
〇〇「絶対違う」
北斗「違わない」
〇〇「嘘つくの下手」
北斗「うるさい」
〇〇は少し笑う。
でもその笑顔はどこか寂しい。
北斗はそれに気づいている。
北斗「…行く?」
〇〇は少し迷う。
でも家に帰ったら、きっとまた考える。
廉のことを。
〇〇「行く」
北斗「じゃあ行こう」
〇〇「待って、荷物」
北斗「急がなくていい」
〇〇「珍しい」
北斗「何が」
〇〇「北斗が優しい」
北斗「優しくない」
〇〇「優しいよ」
北斗は答えない。
ただドアの外で待つ。
〇〇が準備を終えて出てくる。
2人で廊下を歩く。
夜の空気は少し冷たい。
近くの店に入る。
個室。
料理が運ばれる。
最初は普通の話。
撮影の話。
スタッフの話。
共演者の話。
でも途中で、〇〇の手が止まる。
北斗はそれに気づく。
北斗「…まだ考えてる?」
〇〇「え?」
北斗「廉」
〇〇は少し驚く。
でも否定はしない。
〇〇「…うん」
北斗「そっか」
〇〇「好きだったから」
北斗は静かに聞く。
〇〇「今も…嫌いじゃない」
北斗「うん」
〇〇「でも戻れない気がする」
北斗「うん」
〇〇「なのに」
〇〇「胸の奥がずっとモヤモヤしてる」
〇〇の目が少し潤む。
〇〇「なんでだろ」
北斗は少しだけ視線を落とす。
本当は分かっている。
それは未練。
でも言わない。
北斗「…時間じゃない」
〇〇「時間?」
北斗「すぐ消えるものじゃない」
〇〇「そっか」
北斗「でも」
〇〇「?」
北斗「無理に忘れなくていいと思う」
〇〇は北斗を見る。
北斗「ちゃんと好きだったんだから」
静かな声。
でもまっすぐ。
〇〇の目に涙が溜まる。
〇〇「…北斗」
北斗「なに」
〇〇「優しい」
北斗「違う」
〇〇「違わない」
〇〇は少し笑う。
涙を拭く。
〇〇「ありがとう」
北斗「別に」
少し沈黙。
〇〇「ちょっと楽になった」
北斗「ならよかった」
〇〇「…ちゃんと話したほうがいいのかな」
北斗「誰と」
〇〇「廉」
北斗は一瞬だけ目を伏せる。
でもすぐに答える。
北斗「思ってることあるなら」
北斗「言ったほうがいい」
〇〇「うん」
北斗「そのほうが前に進める」
〇〇は静かに頷く。
〇〇「ありがとう」
北斗「礼いらない」
〇〇「なんで」
北斗「…友達だから」
〇〇は少し笑う。
〇〇「いい友達だね」
北斗「そう?」
〇〇「うん」
その言葉に北斗は何も言わない。
ただグラスの水を飲む。
本当は友達じゃ足りない。
でも今はそれでいい。
〇〇が前に進めるなら。
その夜。
店を出て、別れる前。
〇〇「廉と話してみる」
北斗「うん」
〇〇「ちゃんと」
北斗「うん」
〇〇「前に進むために」
北斗は静かに頷く。
北斗「行ってこい」
〇〇は小さく笑う。
〇〇「うん」
こうして、
〇〇は廉に連絡をする。
そして次の日。
番組の収録現場で再会し、
2人は本音を話すことになる。
ーーーー
収録が終わった夜。
スタジオの外はもう暗い。
出演者たちもそれぞれ帰り始めている。
〇〇は控室で荷物をまとめていた。
鞄のチャックを閉めて、深く息を吐く。
その時、扉がノックされる。
コンコン。
〇〇「どうぞ」
扉が開く。
そこに立っていたのは、廉だった。
一瞬、2人とも言葉が出ない。
廉「…ちょっとええ?」
〇〇「うん」
廉が部屋に入る。
扉が静かに閉まる。
久しぶりに2人きりの空間。
付き合っていた頃は当たり前だった距離。
でも今は、どこか少し遠い。
廉「さっきさ」
〇〇「うん」
廉「ちゃんと話してへんなって思って」
〇〇は黙って頷く。
確かにそうだった。
別れた時も、お互い忙しくて、長く話す時間なんてなかった。
廉「俺さ」
〇〇「うん」
廉「正直、別れた時…めっちゃ悔しかった」
〇〇の心が少し揺れる。
廉は笑う。
でも、その笑い方はどこか寂しい。
廉「まだ好きやのに、終わる恋ってあるんやなって思った」
〇〇は俯く。
胸の奥がじんわり痛む。
〇〇「…私も」
廉「え?」
〇〇「好きだったよ」
静かな声。
〇〇「今も…たぶん、嫌いじゃない」
廉は少しだけ目を見開く。
でも、すぐに理解する。
その言葉の意味を。
〇〇「でもね」
廉「うん」
〇〇「一緒にいると…楽しいのに」
〇〇「仕事のこと考えちゃうの」
廉は黙って聞いている。
〇〇「会えない日が続くと」
〇〇「寂しいより先に」
〇〇「…やっぱり一番は冷めていくのが怖くて」
声が少し震える。
〇〇「好きなのに、好きじゃなくなるのがすごく怖かった」
廉は静かに頷く。
その気持ち、痛いほど分かるから。
廉「俺もやで」
〇〇「え?」
廉「会われへん日が増えるたびに」
廉「このまま離れていくんかなって思ってた」
〇〇は顔を上げる。
廉「だから正直」
廉「まだちょっと未練ある」
まっすぐな言葉。
でも、その表情は穏やかだった。
廉「でもな」
廉は少し笑う。
廉「今日久しぶりに会って思った」
〇〇「…なに?」
廉「俺ら、ちゃんと好きやったんやなって」
〇〇の目が少し潤む。
廉「だから後悔はない」
〇〇「…うん」
廉「〇〇は?」
少しの沈黙。
〇〇は考える。
廉と過ごした時間。
デート。
笑った夜。
忙しい合間に会った時間。
全部、本物だった。
〇〇「…後悔してない」
廉「そっか」
〇〇「でも」
廉「うん」
〇〇「好きだけどもう戻らない気がする」
廉は少しだけ笑う。
廉「俺も」
〇〇「え?」
廉「なんかさ」
廉「今日会って思った」
廉「〇〇、ちゃんと前向いてるなって」
〇〇「そうかな?」
廉「うん」
廉は一歩下がる。
廉「だから俺も前に進む」
〇〇はゆっくり頷く。
〇〇「うん」
廉「でもな」
〇〇「?」
廉「〇〇が幸せならそれでええ」
〇〇は小さく笑う。
〇〇「廉もね」
廉「当たり前やろ」
少し笑い合う2人。
付き合っていた頃みたいな笑顔。
でもそれは、
恋人の笑顔じゃなくて
大切な人を送り出す笑顔だった。
廉「じゃあな」
〇〇「うん」
廉が扉を開ける。
出ていく前に一度だけ振り返る。
廉「またな」
〇〇「また」
扉が閉まる。
静かな楽屋。
〇〇はゆっくり椅子に座る。
胸の奥が少しだけ軽い。
寂しさはある。
でも
ちゃんと終わった。
〇〇「…前、進もう」
小さく呟く。
その頃、廊下を歩きながら廉も呟いていた。
廉「ほんま、好きやったな」
でももう振り返らない。
2人はそれぞれ、
新しい未来に向かって歩き始めたはず。