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「本当にありがとう君たち。俺は、角田 清彦。スーパーの店長をしていた。42歳だ。それより、早く脱獄しようよ。こんなところにいるのは耐えられないんだ。ここから出られたら俺のスーパーに来てくれ。うん、とサービスするから。あ、毎日してるか。ははっ」
こちらはいろいろと微動だにしないようだ。
メガネをかけていて、角刈り頭で、バリバリのビズネスマンのようだ。背は高い方。中年太りはしていない。そして、肩幅が広い。
「そうね、もう危険はないと思うわ。けど、早めにこの世界から出ないと……」
呉林はさすがにこの広い刑務所を走りすぎて疲れたようだ。
「でも、どうやったら、この変な世界から出られるんだ」
私も立っているのがやっとだった。左肩の痛みに耐えながら、早くこの異常なところから、元の世界へ戻り、病院へ行って、二度とこういった体験をしたくなかった。
「それより、この怪我はもとの世界に戻って病院に行くと治るのかな」
私は奇妙な疑問を呉林に尋ねた。
「それが……解らないのよ」
呉林は残念がった顔をして、私の左肩を見る。
「あの包帯か何かを探してみては。酷い怪我だし、それにあの化け物は?」
渡部が心配してくれていた。勿論、角田も。昔から友達もいない私は何故か暖かさが心に染み込んだ。
「赤羽さんが壊したわ。安心してもう危険はないわ」
呉林は包帯を探そうと囚人房から出る。
「痛そうだな、脱獄する前に治療しないとな。ここが刑務所なら医務室ぐらいあるさ」
角田も私を気遣いながら囚人房から出た。
「そうね。あ、どこかに医務室があるわ。そう感じるの。そこへ向かいましょう」
呉林は細い足で先頭に立ち、どこともなく歩き出した。その後ろを私が気力を振り絞ってふらふらと歩いた。角田と渡部はしんがりで、この世界が本当に夢の世界なのかと話し合っていた。
私はライフルを肩に抱え、ジャンパーのポケットから煙草を取り出し火をつけた。
4人は薄暗い通路を歩き医務室を探した。
「ここは本当に夢の世界なんですか」
渡部は角田と話しているだけでは物足りず呉林に尋ねる。その顔は非日常な体験をする時の不安と混乱を抱えていた。
「多分そうよ、私の推測だけどね」
「まるで、映画や小説の世界ですね。もし出られなかったら……」