テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
昼休み
「このさーん」
教室の扉から顔を出すと、このさんが机に伏せていた
「……なっしー?」
いつもならすぐ返事、うるさいって怒ってくるのに今日は少し遅い
「なんかよう?」
「なっしーね、この前飲んで美味しかったザクロジュース持ってきたんだよぉ」
そう言って紙パックを見せる
赤いジュース
「一緒に飲も?」
「ありがと。でも今日はちょっと……」
このさんが言葉を濁した
その時
なっしーは気づいた
顔色が少し悪い
いつもより動きが少ない
スカートの裾を握っている
そして、椅子を気にしている
(あ)
昔、幼馴染が似たような状態になっていた
なっしー自身はなったことがない
でも、なんとなく分かる
たぶん
「このさん」
「ん?」
「ちょっと待ってて」
「え?」
なっしーは紙パックを持った
どうしたら自然にこのさんを教室から出せるかな
みんなに見られないように、見られても悟られないようにするには
ジュース!
「このさーん!なっしーとジュース飲も――」
「え、なっしー?」
「あ」
わざと込めた力で紙パックが潰れる
ストローから赤い液体が飛び出した
「わぁ!?」
制服に、机に、椅子に、床にまで広がる赤いイロ
教室が静まり返る
「……」
「……血?」
誰かが小さく呟いた
このさんの顔が固まる
慌てたように声を大きくあげる
「ち、違うよ!」
「これはジュース!」
「ジュース?」
「そう!ザクロジュース!」
潰れた紙パックを見せる
「ほら、酸化すると血と間違えるくらい黒くなるけど美味しいんだよ!」
「あ、そういうことか」
「びっくりした……」
少しずつ空気が戻る
なっしーはすぐにハンカチを出した
「このさん、制服水洗いしたほうがいいよ」
「……」
このさんは黙ってなっしーを見る
「なっしー」
「はい」
「これ、わざと?」
「違う、よ?」
「ほんと?」
「ほんと」
泳いでしまう目を少しだけ伏せて誤魔化そうとしたけど、なっしー隠し事向かないんだよ
「……このさん困ってたから」
「……」
「でも、どうやったら自然に教室出れるか分かんなくて」
「それでジュース?」
「うん……」
このさんは大きくため息をついた
「普通に言えばよかったのに」
「でも」
なっしーは困ったように笑う
「女の子って、そういうの恥ずかしいんでしょ?」
「……」
「そこだけ妙に察しがいいの腹立つ」
「えぇ?」
「……ありがと」
「!」
「助かった」
なっしーの顔がぱっと明るくなる
「じゃあ、なっしーの体操服貸そうか?」
「誰がなっしーの着るか!」
「えぇ!?」
「あと普通に先生とか友達頼るから!」
「でも風邪引くよ?」
「そこは心配として受け取る」
「やったぁ」
「喜ぶところじゃない」
コメント
3件
第18話、読み終わりました〜🌙 なっしー、気づいちゃったんだね。ああいうときって声かけづらいのに、ジュースこぼして注目集めるっていう大胆な優しさがすごくよかった。「女の子ってそういうの恥ずかしいんでしょ?」って台詞、グッときました。このさんの「助かった」も短いけど温かくて。ふたりの距離感がじんわり伝わってきて、すごく好きな回でした🤍
1,862
🎧
10
396
#50人クラフト
mint_3
350