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スタート
旧国注意、下手注意。完全自己満小説
――悪夢の境界線(ドイツ視点)
最近、眠りに落ちるたびに同じ場所へ引きずり込まれるようになった。
白い霧が立ち込めた廊下。天井の照明は壊れかけたように明滅し、そのたびに足元の影が伸び縮みする。
そして――遠くから、あの歌声が聞こえてくる。
幼い子どもが鼻歌のように歌う、どこか楽しげで、それでいて不気味な旋律。
その歌が近づくと、喉の奥が凍りつく。
『……ヒトラーの子守歌』
そう、かつて耳にした曲だ。だが、なぜ今になって夢に現れるのか。
イッヒは歩けない。
足が床に縫い付けられたように動かないダス。
呼吸すらも浅くなる。
歌がすぐ近くで止んだ。
――肩に、誰かの手が触れた。
その感触に、悲鳴をあげるより先に反射的に飛び起きた。
「……っは……!」
目が覚めた。ベッドの上。
暗い部屋の天井だけが静かにそこにある。
それだけのはずなのに、胸は激しく脈打っていた。
恐怖で硬直した肩がまだ痛む。
悪夢は日に日に長く、鮮明になっていく。
ついには、幻のように“ナチ”本人まで夢に現れ、イッヒに何かを囁くようになった。
――眠るのが、怖い。
寝ればまた引きずり込まれる。
だから、イッヒは寝るのを避けた。
だがそのせいで、夢と現実の境界線が曖昧になり――職場でもふと歌が聞こえるようになった。
(……聞こえるダス。あの歌が……)
「ドイツ?大丈夫なんね……?」
心配そうにイタリアが覗き込む。
イッヒは微笑んだふりをしながら、震える手を机の下で握りしめた。
「……大丈夫ダス。疲れているだけダス」
口ではそう言いながら、耳の奥では確かに誰かの声がした。
――“また会おう、ドイツ。目を逸らすな”
その瞬間、頭の内側が割れるような痛みに襲われた。
「……ぅ……ぃ……」
「ドイツ?ほんとに平気なんね……?」
「うるさいッ!!」
イタリアが驚いて目を見開く。
だがイッヒには、彼の声さえも歌の続きを邪魔する雑音にしか聞こえなかった。
「……うるさい、うるさい……うるさい……ッ!」
耳を塞ぎながら叫ぶ。
「もうやめてくれ……!うんざりなんだ……!静かに、してくれ……ッ!!」
まるで、見えない誰かに怯える子どものように。
俺は机に崩れ落ち、震え続けた。
耳の奥では、途切れることなくあの曲が流れ続けていた。
――夢は終わっていない。
――現実のほうが、侵食されている。
俺は悟った。
この悪夢は、まだ始まりにすぎないのだと。
終わり。
次も50行ったら確定で公開しようかな
行かなかったらたまに気まぐれで続き書く