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はい調子乗りましたごめんなさい見てる人なんていませんよね…すみません続き公開します…
――悪夢の境界線:崩壊(ドイツ視点)
眠っているのか、起きているのか。
その境目が、もうわからない。
薄暗い部屋。
机の上に積まれた書類は手付かずのまま、視界の端でゆらりと揺れて見える。
疲れのせいかと思ったが――
(違う……揺れてるんじゃない。……俺の頭が、揺れてる)
耳の鼓膜に触れる、微かな旋律。
あれは、本来なら幼子が眠りに落ちるための優しい曲だったはずだ。
……だが今は、違う。
甘く、湿った声が歌に重なる。
――“見ているぞ、ドイツ。眠れ、眠れ……もう逃げるな”
俺は肩を震わせた。
「……また、聞こえる……」
震え声が漏れる。
視界の端で、影が動いた気がした。
夢の方から、ナチが歩いてくる――そんな錯覚。
いや、錯覚で済ませられたらどれだけ救われただろう。
近づくほどに、影は形を持ち始める。
あの軍服。あの黒い靴音。
背後から伸びてくる白く細い手。
俺は机に突っ伏し、頭を抱えた。
(……嫌だ……来るな……近づくな……)
胃の奥がひっくり返るような悪寒が全身に広がる。
息が吸えない。胸が圧迫される。
◆
「ドイツ?どうしたんね……?」
イタリアの声がした。
だがその声でさえ、水の中から聞こえるように遠い。
イタリアの顔が心配そうに覗き込む。
それだけのことが、俺には耐えられなかった。
「……大丈夫……だ……」
声が掠れていた。
「ドイツ、目の下すごいクマなんね……ちゃんと寝てな……?」
「寝られるわけ……ないだろ……!」
思わず語気が強くなる。
イタリアが一瞬怯えた顔をしたのが、胸に刺さった。
ごめん、と言おうとしたが、その瞬間だった。
――耳元で、はっきりと囁いた声があった。
“また逃げるのか、ドイツ”
反射的に頭を押さえ、俺は叫んでいた。
「やめろ……!黙れ……黙れッ……!!」
イタリアが驚いて身を引くのが見えた。
それでも止まらない。歌が、言葉が、耳鳴りのように張り付いて離れない。
「うるさい……うるさい……うるさい……ッ!!」
耳を塞いでも意味がない。
頭の中から響いてくる。
「頼む……静かにしてくれ……もうやめてくれ……!」
床に崩れ落ち、必死に耳を押さえた。
イタリアが震える声で俺の名前を呼んでいる。
だがそれさえ、ナチの歌声にかき消されていく。
――“まだだ。もっと深くへ落ちろ、ドイツ”
喉がひゅうっと締まるような息苦しさ。
視界が暗くなっていく。
俺は、壊れていく自分を止められなかった。
◆
(……これは夢か?現実か……?)
床に落ちた俺の影が、ゆっくりと笑ったように見えた。
俺は、もう立てない。
ナチの声はもう、幻聴ではないかもしれない。
夢が侵食しているのか。
俺が夢に飲み込まれているのか。
どちらでもいい。
ただ一つだけわかることがある。
――俺は、もう限界だ。
すいませんでした