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黒星
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それからというもの、学校の放課後や用事で外に出るのが少しでも遅くなると
僕は必ず怜治さんのLINEへ一本連絡を入れることが義務のようになっていた。
メッセージを送信して、ほんの少し待つ。
すると、夕闇に沈みかけた校門の前に
街灯の光を鈍く弾く艶やかな黒の大型SUVが、滑り込むようにして静かに停車するのだ。
運転席の窓がウィィンと下がり
そこからいつも通りの爽やかで完璧な笑みを浮かべる怜治さんの顔が見えただけで
それまで僕の胸をじっとりと満たしていた正体不明の不安や恐怖は、嘘のようにスッと軽くなった。
最近の僕は、一日に何度も彼と頻繁に連絡を取り合うようになっていて
朝の「おはよう」から夜の「おやすみ」まで。
気づけば、怜治さんが僕の生活の中心になっていたと言っても、過言では無いだろう。
「──それで、最近はどう?前に言ってた変な視線とか、まだ感じたりする?」
怜治さんは大きなハンドルを細長い指先で器用に握りながら
正面のフロントガラスを見据えたまま、助手席に座る僕に向かって声を掛けてきた。
「はっはい、おかげさまで、視線はまったく感じなくなりました!それに、あのフードを被った男の姿も見かけなくなって……」
ここ数日間の平和な下校風景を思い出しながら、僕は言葉を選んで答えた。
「そっか、1人で帰らなくなったからだろうね」
「……それだけで、あんなに執拗だったストーカーの気配が、こんなにピタリと無くなるものなんですか?」
あまりの劇的な変化に、僕は素朴な疑問を口にした。
「ああ。今はこうして車に乗っているしね。そういうストーカーや悪質な輩っていうのは、一人で無防備に歩いている弱い相手をターゲットにするものだから。俺がこうして隣にいる限りは、さっちゃんは絶対に安全だと思うよ」
「なるほど……なんだかほんとに不思議ですね。怜治さんが一緒にいてくれるだけで全部が変わっていくみたいで……」
「ふふ、大人として当然のことをしているだけだよ。でも、油断は禁物だからね」
「しばらくの間、午後5時以降に一人で外を出歩くのは、絶対にやめた方がいいと思うな」
怜治さんは車の速度を緩め
赤信号の停止線で車を止めると、穏やかに微笑みながら僕をじっと見つめてきた。
夕日の残光が差し込む車内で、その底知れないほど優しい瞳に見つめられると
何でもないアドバイスのはずなのに、つい心臓がドクンと大きな音を立てて高鳴ってしまう。
「そ、それもそうですね!…あっでも、毎回こんな風に送迎してもらっていますし、お礼はどうしたら……?」
コメント
1件
わかるなあ…怜治さんの存在が「日常の安全」に変わっていく感覚、すごく丁寧に描かれててしんどい🥀 ストーカーが消えたのは怜治さんがいるからっていう理屈は分かるんだけど、逆に「あの人がいないと不安」って依存の入り口すぎて怖い。爽やかで完璧な笑顔の裏が読めないのも、じわじわ来る…🖤 この空気感、猫塚ルイさんの筆力でじっくり浸れるのが癖になるね🤍