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ある日突然俺に妹が出来てしまった。といっても、よくある親の再婚で、とかいうパターンじゃない。父親も母親も俺と同じの、本物の血を分けた実の妹だ。だけど、俺はその時まで自分に妹がいるという事実そのものを全然知らなかったんだから、話がややこしいんだよな。
順を追って話そう。それは六月に入ったばかりの空気がジメっとした日の朝だった。そろそろ梅雨入りかな、ああ、やだ、やだと思いながら俺は何気なくテレビの朝のニュースを見ていた。
テレビの画面ではアナウンサーが沈痛な表情で昨夜の東京都内での殺人事件を報じていた。被害者は中学三年生。場所はまた俺が小学校まで住んでいた地域だ。また、と言うのはこの四月からもう三人目だからだ。
中学三年生の男の子ばかりが殺された、いわゆる連続殺人事件というやつだ。もっともそれだけなら東京じゃ珍しくはない。この大都会では毎日のように事件や事故で誰かが死んでいるし、一カ月弱に一人の割合で中三が死んだってだけなら、そりゃそういう事もあるだろう。
問題はその死に方というか、殺され方だ。四月の一人目は胴体の中央がまるで絞った雑巾みたいにねじられた状態で見つかった。上半身と下半身が正反対の方向を向いていたというひどい有様で、死因は内蔵破裂。最初はダンプカーにでも轢かれたんじゃないかと思われたが、車の痕跡は何もなかったそうだ。
二人目は先月の半ば、ビルから転落死した。それだけなら事故死の可能性もあったが、落ちていた地面の場所がそのビルから三百メートルも離れていたから普通の転落じゃない。その被害者の片方の靴が脱げてビルの屋上で見つかったそうだから、そこから転落したのは間違いないんだが、どうやったら三百メートルも離れた場所に落ちるなんて事ができる?
仮に本人が自殺するつもりで思いっきり助走をつけて飛び降りたとしても、空を飛んだとしか思えない距離だ。誰かに投げ落とされたとしか考えられないという結論になったが、それにしたってどんな怪力の持ち主なんだ? その犯人は。
そしてニュースで三人目の被害者の話が流れていたわけだ。この三人目は家の近くの公園の木の枝に串刺しになった状態で見つかった。そしてその枝というのが地上から八メートルの高さ!ニュースのアナウンサーが言うには、串刺しにされてからしばらくは生きてもがいていた形跡があったそうだ。
殺人事件なんて珍しくはないこの大都会でも、さすがにこれは異常過ぎる。身の毛もよだつとはまさにこの事だ。だが、それ以上に俺にとって妙に引っかかったのは三件とも東京西部の、俺が小学校まで住んでいた地域の近くで起きている点だった。
今俺は東京二十三区の東の端に近い所で母親と二人で暮らしている。この母ちゃん、一応大学の准教授。専門は宗教民俗学とか言ったっけ?なんかマニアックで俺には理解不能なムズイ学問らしい。
親父はいない。父親も民俗学者だったが、俺が五歳の時に調査に行った先で崖から転落して死んでしまったんだそうだ。だからうちは世間で言う母子家庭ってやつ。まあ、母ちゃんの給料はそこそこいいから生活に不自由はしてないけどな。