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『天界成立◯周年 大還元セール。期間限定商品置いてます』
そんなのぼりが特徴の店舗が、ある日突然現れた。
「何を置いてるの?」
「幸福です」
要領の得ない答えだった。
並べられた小瓶。
値段はまちまちで、十円するものもあれば、一億するものもあった。
女性は一万の小瓶を試しに買ってみた。
小瓶を開ける。
空っぽだった。
「ちょっとこれ……」
文句をつけようとした時、違和感を覚えた。
気のせいだろうか?
お肌の張りが良くなった。
これは……。
店員は笑みを浮かべたままだった。
たまらず十万のものにも手を出す。
もしかして若返りの効果なんてことも。
十万の小瓶は、劇的な効果だった。
目尻のシワが一本消えたのである。
女性は十万の小瓶を買い漁り、目元のシワはすっかり消えた。
鏡を見て満足し、顔を確かめてみた。
「あ……」
他のシワは消えていなかった。
どこか不自然で、下手すると整形を疑われてしまう。
私、小瓶に、いくらつぎ込んだ?
熱気が引き、体の芯から熱が失われていく。
……なんでこんなものに使ってしまったのだろう。
女性は後悔した。
なんとか、なんとか慰めは得られないの?
そこで目についたのが、十円の小瓶だった。
これなら今の私でも試せる。
でもそもそもの失敗は、ここでの買い物なのに、良いの?
そう自分に問うてる間に、買ってしまっていた。
10円の小瓶を開ける。
しばらく待つが、何も起きない。
いや、起きているかも知れないが、なにせ10円だ。
知覚出来ないレベルなのかも知れない。
乾いた笑いが出た。
スマホが鳴った。
見ると、何十年と会わなかった友人だった。
彼女とは昔、親友だった。
「ちょっと、聞いてよ」
女性はその日、幸せなひと時を過ごしたという。
<了>
コメント
2件

感想ありがとうございます。小瓶を買わずして、作者の幸せを得られました。
うわ、これすごいっす……! 最初は「幸福売ります」って軽いノリかと思ったら、十万円の小瓶でシワが消えていく快感と、その後で襲ってくる虚しさの描き方が生々しくて、読んでてゾクっとしました。最高額じゃなくて、10円の小瓶が「昔の親友からの連絡」っていうオチも秀逸。本当の幸福ってお金じゃ測れないんだなって、じんわり沁みました。短いのに考察が深くて、もう一回読み返したくなりました🔥