テラーノベル
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かいら
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夜の色が、少しずつ薄れていく。
ネオンが消えかけて、
現実が輪郭を取り戻してくる時間。
「もうすぐ朝だね」
君がぽつりと呟く。
その言い方が、終わりを知ってるみたいで、
少しだけ怖くなる。
「行くの?」
気づけば、そんなことを聞いていた。
君は少しだけ黙って、
それから、いつもの笑い方をした。
でも今度は、少しだけ違った。
「どう思う?」
試す声。
だけど、その奥にある迷いが、はっきり見えた。
だから、手を伸ばす。
逃げてもいい。
消えてもいい。
それでも、今は——
「行かせない」
強く掴むわけじゃない。
でも、離すつもりもない距離。
その一瞬、君の目が揺れた。
「……ずるいな」
小さくそう言って、
君は初めて、逃げなかった。
朝の光が差し込む。
魔法が解ける時間。
それでも——
君は、そこにいた。
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