テラーノベル
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放課後のマイクラサーバーは、今日もふたりだけの静かな時間になっていた。
「ひろ、そこ危ないって」
うりがそう言うより早く、ひろのキャラは崖から落ちかけていた。
「うわっ、ほんとだ!また助けられた……」
「ほんと、ひろって油断しすぎ」
そう言いながらも、うりの声はどこか優しい。助けるのが当たり前みたいに、すぐにブロックを積んで道を作ってくれる。
ひろは少しだけ画面の向こうで笑った。
「うりがいなかったら、俺もう何回ロストしてるんだろ」
「大げさ」
即答なのに、ほんの少しだけ間があった。
その沈黙が、なぜか心地いい。
拠点に戻ると、うりがふと立ち止まる。
「ねえ」
「ん?」
「ここ、なんか……ふたりっぽくない?」
画面の中には、いつの間にか並んで置かれたベッドと、拙いけど温かい小さな家。
ひろは少し黙ってから、
「うん。そう思う」
とだけ答えた。
うりはそれ以上何も言わない。でも、少しだけキャラがベッドのそばに近づいた。
まるでそこが「帰る場所」みたいに。
「明日もさ」
ひろがぽつりと言う。
「また一緒にやる?」
うりは一瞬だけ間を置いて、
「当たり前でしょ」
と、いつもより少しだけ柔らかい声で返した。
画面の中の夕焼けが、ふたりの建物をゆっくりオレンジに染めていく。
その景色は、なぜか少しだけ特別に見えた。
れもん
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