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次の日は、冒険者ギルドの依頼で魔物討伐に来ていた。
今回は、森の奥に棲みついたラージスネイクを2体討伐する……という内容だ。
ミラエルツ近辺の魔物はあまり種類は多くなく、そのためラージスネイクとは既に何回も戦っているのだが――
「……そういえば、今回は森なんだね?」
「はい。ラージスネイクが棲んでいるのは、基本的には岩場や砂地ですからね。
森というのは、確かに珍しいかもしれません」
「でも、岩場とかよりは涼しくて気持ち良いですね。
……ちょっと、虫がアレですけど」
エミリアさんは、しきりに手をはたはたとさせている。
虫でも追い払っているのかな?
「いつもと勝手が違う点は、注意しなくてはいけませんね。
樹が生えていると、剣で攻撃するときの邪魔にもなりますし」
「わたしの魔法も、樹が邪魔になるかも……」
「私は……いつも通りなので、二人とも頑張ってください!」
ずっと魔物討伐に参加している割に、戦闘においては未だに役立たずな私である。
そういえばお金も結構あるし、魔法をぱぱっと覚えられる魔法道具を買う……っていうのも良いのかな?
ダンジョンの宝箱に入っている場合もあるらしいけど、一番近いダンジョンでも王都の北……って話だから――
「……あ、そういえばエミリアさん。
私たちと一緒に旅をするのは、王都まででしたよね?」
「え? はい、そうですね」
「王都に着いたらすぐお別れですか? 王都ではまだ一緒にいられますか?」
「特に具体的には決めていませんでしたね……。
どうしてですか?」
「ミラエルツを出たら、一気に王都まで行くのも良いかな……って思ってまして。
でも、王都に着いてすぐお別れになるなら、次の街に少し滞在しても良いかなーって」
「なるほど……。でも、わたしのために道中を遅らせるのも申し訳ないです。
……では、アイナさんたちが王都を出るときまではご一緒させて頂きましょう!」
「え? 大丈夫ですか?」
「大丈夫です! まぁ、きっとなんとかなります!」
……それじゃお言葉に甘えて、基本的には王都まで一気に行っちゃおうかな?
途中の街には、少しくらいは滞在するだろうけど。
「良かったですね、アイナ様」
「うん、良かった良かった!
エミリアさんとはお別れしたくないもんね!」
「あはは。ありがとうございます!」
気兼ねなく一緒に旅をできる仲間がいるのは、とても素晴らしいことだからね。
今はそんな時間を一緒に過ごしているけど、やっぱりいつかはお別れがきてしまうわけで――
……そう考えると寂しいものだけど、可能な限りは一緒にいさせてもらおう。
「ところで……。
ラージスネイク先生はまだですかね?」
「依頼書によれば、もう少し先のようですね。
そろそろ慎重に行くとしましょう」
「はーい。集中、集中!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いました」
「はい、いました」
「いましたねー」
森を奥に入っていくと、樹の生えていない場所が開けていて……そこに、ラージスネイクが2匹寄り添っていた。
「……あれ、2匹いるね? これは予想外……」
「確かに珍しいですね。
……ふむ、どうやって倒しましょう」
「いつもなら、この距離まで来れば気付かれそうなものですけど……」
しばらく様子を見ても、ラージスネイクはぴくりとも動かない。
やっぱり何か、いつもとは違う感じだ。
「アイナ様。ここは遠距離から攻撃して、不意打ちをするのが良いかと」
「そうだね……。
それじゃエミリアさん、魔法で攻撃をお願いします。
他に遠距離攻撃っていっても、私の爆弾くらいしかないですし」
「……それなら折角ですし、アイナさんが爆弾を使ってみてはどうですか?」
「いやいや、さすがに森では使えないですってば」
「それは残念……。
わたしの準備は大丈夫です! いつでもどうぞ!」
「それでは始めましょう。アイナ様もよろしいですか?」
「うん、大丈夫!」
私はいつも通り、エミリアさんの後ろにスタンバイした。
あとはもう、自分の身を守るだけだ。……実に嘆かわしい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――シルバー・ブレッド!!」
エミリアさんの声と共に、聖なる力の塊がラージスネイクに撃ち込まれる。
バシュッ!
攻撃は見事にラージスネイクの後頭部に直撃して、結構なダメージを与えたかのように見えた。
しかしエミリアさんの存在に気付いた敵は、一直線に彼女との間を詰め始める。
しかし――
「ハァアアッ!!」
ザン……ッ!!!
横から、木陰に隠れていたルークの一閃であっけなく頭を斬り飛ばされた。
頭の無くなった巨体はエミリアさんの側まで滑っていったが、彼女はあっさりとそれを避けた。
ちなみに私も、しっかり避けられた。ちょっとだけ、当たりそうになったけど。
「まずは1匹――
……って、あれ?」
1匹目を倒したものの、もう1匹が動く気配はまるで無かった。
ルークも想定外だったようで、そのまま遠巻きに様子を見ている。
「……アイナ様。
様子がおかしいので、ラージスネイクに鑑定をお願いしてもよろしいですか?」
「うん、そうだね。ちょっと待ってね」
変に近寄って、また疫病なんかをもらうのも嫌だからね。
それじゃ、かんてーっ。
──────────────────
【ラージスネイク】
巨大な体躯で素早く地面を這う蛇
──────────────────
……普通の結果だ。
それなら状態異常とかかな? かんてーっ!
──────────────────
【状態異常】
魔石中毒
──────────────────
……うん?
ませきちゅうどく……? これは初めてみるかな?
「状態異常で……魔石中毒、だって」
「魔石中毒、ですか?
ずいぶんとまた、珍しいものに出くわしましたね」
「知ってるの?」
「ええ。魔物の体内で魔石が合成されるのはご存知かと思いますが……。
その力が飽和すると、ああいった感じで動きが止まるらしいんです。私も初めて見ましたが」
「へぇ……?
ってことは、魔石を持ってるのかな?」
「はい、そのはずです。倒してから、探すとしましょう」
「そうだね。でも気を付けて倒しましょ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――とはいったものの、動かないラージスネイクなんて、ルークの一撃で瞬殺のわけで。
「終わりました」
「スムーズ過ぎて、言うことがあまりない……けど、お疲れ様!
それじゃ、魔石を探してみよう!」
「一般的には、頭か胸か腹にあることが多いそうですね」
「なるほど。それじゃ鑑定で、その辺りから探してみるね」
「……というわけで、ココにあるようです」
私が指差したのは、頭のあったところから少し下がった、胴体のとある場所。
「わたしたちから見ると、外からそんなことが分かるアイナさんも大概なんですよね」
「私から見れば、聖魔法やら剣術が凄い、エミリアさんとルークも大概なんですけどね」
「あはは、お互い様ですね♪」
「まったくですね♪」
そんなバカ話をしている間に、ルークがラージスネイクから魔石を取り出してくれた。
「アイナ様、どうぞ」
「うん、ありがと。
……さてさて、どんな効果かな?」
魔石を陽にかざしながら、じっくりと覗き込んでみる。
澄んだ石の中には微かな色が混ざり合い、なかなかに綺麗な石だった。
「そういえばずっと討伐していたのに、魔石は初ゲットですね!」
「探そうとしなければ分かりませんからね、体内にあるわけだし……。
さて、それじゃかんてーっ」
──────────────────
【安寧・迷踏の魔石(小・小)】
高負荷の術の反動を15%軽減する。
不思議な音を出す
──────────────────
……なに、コレ?
これは声に出して読むのも面倒な感じだから、ウィンドウに出すことにしようかな?
はい、もう一度かんてーっ。
「鑑定の結果は、こんな感じです」
「へー……。
こんな効果、初めて見ました……」
「2つの効果が混ざっているようですね。
これ自体はよくあることなので、問題ないかと思います」
「なるほど? ……あ、でも――
……『安寧』の方って、私が一番欲しかった効果かも!」
『高負荷の術の反動』を『軽減する』!!
もしかすると、これがあればユニークスキル『英知接続』の頭痛が和らぐかもしれない……!?
「この魔石、私が使っても良いですか?」
「はい、もちろんです」
「大丈夫ですよ、欲しかったものならどうぞー」
「ありがとうございます!」
アイテムボックスから水を出して、軽く水洗いをする。
ルークが血を拭いてくれたとはいっても、きちんと綺麗に洗わないとね。
「えへへ、それじゃ四つ目の魔石スロットに入れて……っと。
よーし、できました!」
「おめでとうございます!」
「武器が育っていくって感じがしますね!」
「そうですね、嬉しいなー。効果は後で試してみないと分かりませんが、多分いけるはず……!
……さて、それでは森の外で軽くお茶でもしましょうか!」
「はい」
「はぁい」
そして私たちはその場から立ち去ろうとした。
ぷぎゅ
「……ん?」
「アイナ様? 何ですか、今の音」
「……あ、もしかしたらもうひとつの……『迷踏』の効果でしょうか?
昔どこかでお話したことがあったかもしれませんけど――」
……エミリアさんが、複雑そうな顔で言う。
ああ、そういえばあったかもしれない……。
歩くたびに『ぷぎゅ』って鳴る魔石が……。
えー……?
よりにもよって、これに付いてくるんですかぁ……?