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2話と3話はないのですか?
無機質な声が響きわたると同時に、 目の前に浮かんでいた映像が消えた。
だが、その瞬間に生じたわずかな隙を突いて、 新たな情報が頭の中に流れ込んでくる。
それは、とても断片的で、曖昧なものだったが、 それでも私は、なんとか理解することができた。
どうやらここは、大きな屋敷の中のようだった。
窓の外に広がる景色を見ると、広大な敷地を持つ豪邸であることがわかる。
室内の様子から見て、かなり裕福な家庭に生まれたようだ。
そして、おそらく私の生まれ変わりであろう人物の名前は『高嶺和真』といい、現在は十六歳らしい。
家族構成は両親と姉が一人ずついるようで、父は国会議員であり、母は元女優ということだから、かなりの金持ちであることは間違いないだろう。
また、姉のほうは私と同じ高校に通う二年生らしく、容姿端麗・成績優秀という才色兼備の持ち主だという話だったが、残念ながら名前を確認することはできなかった。
次にわかったことは、私が転生したと思われる世界の基本的な情報についてだった。
まず最初に目に入ってきたものは、【M.S.T】という名前のロゴらしきもので、その下に表示されている文字を読むことができたのだが、『Magical Slave Training School』というのが正式名称らしい。そしてその下では様々な女の子の顔写真が表示されていて、どうやらこれが『奴隷養成学校』の生徒達であるようだった。
「うわぁ……」
あまりの内容に、僕は思わず声を上げてしまった。それはそうだ。こんな学校に通っている生徒達は皆、将来を約束されているようなものなのだから。僕なんかとは全然違う人種に違いないのだ。しかし次の瞬間、僕の頭の中にはある疑問が生まれていた。
(あれ? ちょっと待ってよ。なんでこんなところにいるわけ?)
(ここはどこ? 僕はだれ?)
(えーっと、まずは何があったかを思い出さなくちゃ)
―――(以下省略)―――
「うわっ!?」
「きゃあ!」突然響いた悲鳴に驚いて、僕は我に帰る。どうやら考え事をしていたせいで、いつの間にか、ぼんやりしてしまっていたらしい。慌てて辺りを見回すと、僕の目の前にいたはずのあの子は姿を消していた。僕が声を上げたことで驚いた彼女が、逃げ出してしまったのだ。
しまった! と思ったときには遅かった。彼女の姿はすでに見えない。逃げ足が速い子だったようだ。このままではまた明日も会うことになってしまうかもしれない。僕は慌てて教室に戻り、自分の机の中に手を入れた。あった。『お昼休みに校舎裏に来てください』と書かれた手紙が入っていたのだ。きっとこれが例の手紙に違いない。しかしこんな手紙を入れておくなんて、あの子はなかなか大胆じゃないか。僕がラブレターなどもらったことがないことを知っていたのかな。とにかく行ってみるしかない。僕は授業中だというのに立ち上がって駆け出した。「どこへ行く?」と先生の声が聞こえたが、「トイレです!」とだけ答えてそのまま走り去った。さすがにトイレに行くとは思わないだろう。案の定、先生は何も言わなかった。よし。これで誰にも邪魔されずに行けるぞ。
校舎の裏に着いたとき、彼女はすでにそこにいた。そしていきなりこう言った。
「好きです」