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次の日、スタジオに入る涼ちゃんの顔は、昨日の夜の影響もあってか、いつもより疲れていた。髪は少し乱れ、肩の力も抜けきれていない。
若井が機材を片付けながら声をかける。
「……昨日、よく眠れた?」
涼ちゃんは一瞬、視線をそらす。
胸の奥がぎゅっと締めつけられ、涙がこぼれそうになる。
男の人に恋をしてしまった自分の感情が、どうしても“罪悪感”に変わるのだ。
「……うん」
かすれた声で答えるけれど、笑顔は作れなかった。
若井はその表情に気づき、少し眉を寄せる。
「……無理しなくていいんだよ」
その声は優しいけれど、どこか心配で揺れていた。
涼ちゃんは小さく息を吐く。
「……ごめん、なんか……変な感じで」
胸の中の複雑な想い――恋心、罪悪感、そして昨日の温もり――が絡み合い、
言葉にすることすら難しかった。
若井はそっと頷き、無理に言葉を続けなかった。
ただ、隣にいてくれるだけで、涼ちゃんの心は少しずつ落ち着いていく。
静かなスタジオの中で、二人の距離は言葉以上に物語っていた。
どんなに複雑な気持ちでも、互いの存在が、少しだけ心を軽くしてくれる――そんな時間だった。