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二話 初めての放課後
あれから二週間がたった今。俺は彼とお昼ご飯を食べている。それはある理由があった。
あれから夏目光輝は暇さえあれば俺を追い回してくるようになった。休憩時間になると必ず俺のところへ来て話しかけてくるし、部活終わりも俺を探しに走ってくるし。帰る時は必ず追ってきて一緒に帰ろうとするし、毎日遊びに行こうと誘ってくるし、断っても断ってもお昼ご飯を一緒に食べようと俺の隣に座ろうとするもんだから、俺はもう諦めたのだ。
諦められることにホッとする自分もいたことは誰にも言えないが。
「――俺は〜スシとか辛いもんが好きなんだけど冬夜くんはなにが好き〜?」
彼から投げられた急な問いにすぐに答えを出せずにいた。世界や人類とかしょうもないことは常に考えているが、自分のことについて考えることは滅多にないため、自分がなにが好きでなにが苦手か、俺は俺自身を一番理解していなかったのだ。
「………ハンバーグとうどんとか……甘いもんとか?」
「めっちゃわんぱく少年やんwwwバリカワイイ〜!」
なによりも僕が困っているのは彼自身ではなく、彼の取り巻きだ。彼が来れば周りの女子やら男子やらがわらわら来るのが本当に困る。でも光輝といるうちに、少し仲良くなった人が二人いる。
一人は光輝の親友の内山 穂高。サッカー部だからか身体が筋肉質でガタイが良く、さらに顔が怖い。けど実はめちゃくちゃ優しくて仲間想い。
レディーファーストな性格で女子にめちゃくちゃ優しいしギャップがあると言われていてかなりモテるらしい。が、妹が二人いるらしく、かなりシスコンらしい……
もう一人は光輝と仲のいい女子の村瀬 加奈。ピンクの髪に大きな赤いリボン。彼女の関西弁は人懐っこさを感じさせる。光輝と二人のやりとりを見ていると姉弟みたいに見えてくる。彼女は親切で僕にも優しくしてくれてみんなのお姉ちゃんみたいだ。だがギャルっぽいので少し怖い。
穂高は加奈さんが好きらしいけど加奈さんは穂高のことをデカイ幼なじみぐらいにしか思ってないらしい。
「あ!冬夜くん今日こそゲーセン行かない!?」
「……いきなり?」
「いきなりじゃないもん!ずっと行こうって言ってんじゃん!遊びに行こうよ〜!!」
「うち冬夜くんとプリ撮りたいな〜」
「あ、俺百均行きたい。妹がノートなくなったって喚いてたから。」
「…………別に行ってもいいけど。一時間とかで帰すのはやめろよ?」
「……え!?!?マジで!?やった〜!!!絶対だよ!校門で待っててよ!絶対ね!」
「……はいはい。」
友達と遊びに行くことなんて中学生以来だなんておもいにふけっていると、突然顔を掴まれて光輝と目が合う。彼の瞳は相変わらず真っ黒で光一つない。
だが、表情から彼が相当喜んでいることがわかる。頷いただけでこんなに喜ぶとは。実は、放課後は夜の七時ぐらいまでは家に帰られないから、彼らと遊びに行く方が俺的には良いのだ。
授業中、俺は変な考え事をしなくなり、代わりにノートの余白やメモ帳に落書きばかりするようになった。どれも線が歪んでいたり、納得のいくものは書けなかったが、アイデアを残していける点ではいいと思った。
放課後、校門で待っていると遅れてやってきた光輝は満面の笑みでこちらに走ってきた。そのまま抱きついてきた光輝を引き剥がそうとしていると、彼の後ろに歩いてくる加奈さんと穂高がいることが見えた。
(まるで俺がめちゃくちゃ楽しみに校門で待ってたみたいじゃないか……!!)
自転車を漕いで近くのショッピングモールへ着くと、穂高と加奈さんが買いたいものがあるらしく百均へ向かった。俺もついて行こうとしたとき、光輝に襟を掴まれ隣の楽器屋さんに連れていかれた。
聞いた限りだと光輝はギターが弾けるらしい。楽器を見ると気分が上がるからたまに来るらしく、俺は特に音楽には興味がなかったが、光輝の後ろについてギターやピアノを眺めていた。
「冬夜くんはさ〜ギターやったことある?」
「いや、ネットとかで見たことはあるけど、触ったことはない。でも、ギターやってるやつってなんかカッコイイよな。」
「へ」
硬直した光輝を置いて俺は奥にある金楽器ブースへ来ていた。輝く楽器に目が離せなくなりぼーっと見つめていると、穂高と加奈さんが戻ってきていて、みんなでゲームセンターの方へ向かうことにした。三人はよくここに来るらしく、俺は後ろについて案内に従うのみだった。
光輝は小さいUFOキャッチャーが得意らしく、モフモフな猫のキーホルダーを取ってくれた。俺とおそろいにしたいらしくもう一個白いのを取っていた。
椅子に座って、画面の車を運転するゲームがあり、穂高は気分が上がっていたが、結果は加奈さんが一位だった。光輝は最下位で、
「こういう系は苦手なの!!大事なのは楽しさだから!」と言い訳していたが、穂高は慣れたように光輝の頭をポンポンと叩くと、妹のために大きなぬいぐるみでもとりたいと、ぬいぐるみブースへ向かった。
穂高の一番下の妹は小学二年生で、妹の好みがわからないと加奈さんに相談していた。
「え〜……シスコンのくせに好みもわからへんの?」
「知りすぎてわからないんだ!あいつが好きって言うものが多すぎてどれにすればいいのかがわからないんだ……いや、好きなものがいっぱいあることはいい事なんだが……」
「それ好みはわかってるやん……ほなその好みの中から取りやすいもんにしたら?」
「うーん……あのもふもふは?」
俺の声で横を見た三人は各々の個性のある賛成の声を上げた。モフモフで頭に花冠をつけた大きなヒヨコのぬいぐるみだった。穂高が五回ほどやったが向きが変わるだけで穂高の顔は少しづつ曇っていった。そこで光輝が一度やってみたが、ギリギリのところまで近づかせることが出来た。
「あともう少しだよ!!」
「これはいけるんやない!?」
「がんばれ!」
ボトンッ
「キャーー!!!やった穂高〜〜!!」
「「おお〜〜!!!やった〜!!」」
「よっしゃ!ありがとうな光輝!」
取れた瞬間にみんなで歓声を上げて喜び穂高に抱きついた。思っていたよりも楽しい放課後で内心びっくりしていた俺は思い出を噛み締めていた。ここまで楽しい思いなんて本当に久しぶりでこんな気持ちになったのは二年ぶりぐらいだ。光輝に感謝しつつも、言葉についトゲが入ってしまう。それはまだ自分を信じられないからだろうか。それとも、何かを恐れているからだろうか。
その後穂高と加奈さんは家が別の方向だからと途中で別れた。帰り道が同じ方向な俺と光輝は一緒に帰っていた。光輝が歩いて帰りたいと言い出した。遊びに誘ってくれたお礼に、家の近くまで一緒に歩いて帰っていた。
信号が赤になり、止まった拍子に上を見ると、夜はすっかりふけていた。暗くなるのも早くなったなと考えていると、ふいに横から声をかけられた。その言葉の内容を聞いて目を見開いた俺は即座に横を見た。
「ねぇ、今からオレん家来ない?」
「は?」
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