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#ファンタジー
芙月みひろ
94
設楽理沙
1,542
時は過ぎて六月。梅雨の雨が降り続いていた。その日、僕は傘を忘れた。校門の前で立ち尽くしていると、隣から声がした。
「朝倉くん、どうしたの?」
「……傘忘れちゃって」
「じゃあ、一緒に帰る?」
白瀬さんは、傘を見せてくれた。
僕は驚いた。
「いいのか?」
「うん。朝倉くん濡れちゃうでしょ。」
傘の下。僕たちは肩を並べて歩いた。雨の音が、二人を包んでいる。
「朝倉くん」
「なに?」
「雨って、どんな感じ?」
僕は空を見上げた。
「当たると冷たくて……小さい粒みたいな感じかな?」
「そうなんだ」
「白瀬さんは雨の音が好きなんだっけ?」
「うん。雨の日は、世界が少し静かになるから」
白瀬さんは、傘を握り直した。
「みんなが急いで歩く音とか、車の音とか。そういうのが、雨の中に混ざっていく感じが好き」
僕は、しばらく黙っていた。
やがて、ぽつりと言う。
「僕も、雨の日は好きになった」
白瀬さんが笑った。
「どうして?」
「……雨の音が良く聞こえるようになったから。白瀬さんのお陰かな。」
僕は気が付かなかったが、白瀬さんは少しだけ頬を赤くした。
コメント
1件
うわ、このエピソードめっちゃ好きだわ…!雨の日の静けさとか、傘の中だけの距離感とか、二人の会話がすごく自然で刺さった。白瀬さんの「世界が静かになる」って表現、なんか分かるなあ。最後の「僕も雨の日は好きになった」と「頬を赤くした」で、こっちまで温かい気持ちになったよ。次も気になる!