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ある日のリハ。キーボードの前に座る涼ちゃんの手が、わずかに震えていた。
若井は最初、疲れだと思った。
でもその日は何度も同じ音を間違えた。
しかも、涼ちゃんの目はどこか焦点が合っていない。
休憩中、元貴が声をかけた。
「涼ちゃん、大丈夫?」
返ってきた声は、かすれて小さかった。
「……うん、大丈夫」
それ以上、誰も何も言えなかった。
けれどその「うん」が、どうしても不自然だった。
若井は帰り道、何度もその声を思い出していた。
“あんな涼ちゃん、初めて見た”
何かが壊れかけている気がして、胸がざわついた。